1858．ビートルズ・飛行機が嫌いだったジョージ

　世界中をまたにかけて移動していたビートルズ。当然ながらその移動
手段は飛行機だ。解散後ポール・マッカートニーは次のように述懐する。

　実をいうと、空の旅は大嫌いなんだ

　しかし、ポールはビートルズの時代には飛行機嫌いを口にしたことは
なかった。飛行機に対する嫌悪感をもっともあらわにしたのはジョージ・
ハリスンであった。ビートルズがツアー活動を停止してから約１年後、
ＴＶ映画“Magical Mystery Tour”のサントラ盤のソングリストを見つ
めながら、彼は何かをメモ書きした。その内容は・・・。インストゥル
メンタル・ナンバー‘Flying’の横にひとことこのように書き加えられ
ていたのである。

　“Not my cup of tea ”

　「好きではない」といったところだろうか。しかし、これはもちろん
‘Flying’という曲に対することではない。ジョージはインタビューで
このように応えている。

　ある国から別の国に移動するために飛行機を使うことは避け
　られない。だけど、スリルを味わうために飛行機に乗ろうな
　んて夢にも思わないね。ボクが信用できないのはパイロット
　の腕ではなくて、飛行機そのものなんだ。

　そんなジョージだが、彼らしいウィットに富むコメントも残している。
「ビートルズが命を落としかけた日」で有名な1965年 8月22日のことで
ある。この日、ミネア・ポリスからポートランドへ移動中に４人は搭乗
した飛行機のエンジン・トラブルに遭遇しあわや墜落事故となるような
危機を味わった。低空飛行にてなんとかポートランドに到着したのだが
その機材は使用できず、急遽「旧式のものすごい飛行機」で８月の暑い
オレゴンをフライトすることになってしまった。機内の荷物棚にリング
状に巻かれたロープと大きな懐中電灯が置かれているのを、ジョージは
見つけ、乗務員とのやりとりが交わされた。

　ジョージ：あのロープは何に使うの？

　乗務員　：緊急脱出時に使用します。

　ジョージ：どれくらいの長さなの？

　乗務員　：１２～１５フィートです。

　ジョージ：じゃあ、今夜は安心してポートランドからロサン
　　　　　　ジェルスまで地上２０フィート（※約６ｍ）の空
　　　　　　の旅を楽しめるってわけだね。


　一瞬の沈黙の後、その場が大爆笑となったのは言うまでもない。



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