【ALBUM "YESTERDAY AND TODAY"】
「パーロフォン盤こそビートルズの原典である」という考え方は、
4人がビートルズとして活躍していた1960年代にはまだ存在していな
かったといえる。世界の各国でビートルズに対する考え方や受入時期
の相違等によって、シングル盤のカップリングやアルバムの構成曲を
改変するといったことが、アーティストの意向をほとんど無視した形
で行われていた。
この事例を提供するのにいちばん分かりやすい例は、1966年 6月に
アメリカでリリースされた"YESTERDAY AND TODAY "であろう。UK盤
のアルバム2作をおおよそ3作に「切り売り」して販売するキャピト
ルに対してビートルズは「肉の解体作業」を演じてみせた。世に言う
『ブッチャー・カヴァー』である。はたして彼らはキャピトルの商業
主義に対して本当に抵抗したのであろうか。
アメリカでのビートルズのデビューは"WITH THE BEATLES"のはずで
あった。しかし「諸般の事情」により、彼らは"MEET THE BEATLES"と
してアメリカで知られることになった。"MEAT"と"MEET"。この中に、
「シンプルでウィットに富んだ発想が存在していた」とみるのは考え
すぎであろうか。
【"YESTERDAY AND TODAY" (1966.06.15)】
( )=UK
01.DRIVE MY CAR ("RUBBER SOUL")
02.I'M ONLY SLEEPING ("REVOLVER")
03.NOWHERE MAN ("RUBBER SOUL")
04.DOCTOR ROBERT ("REVOLVER")
05.YESTERDAY ("HELP!")
06.ACT NATURALLY ("HELP!")
07.AND YOUR BIRD CAN SING ("REVOLVER")
08.IF I NEEDED SOMEONE ("RUBBER SOUL")
09.WE CAN WORK IT OUT (Single Record)
10.WHAT GOES ON ("RUBBER SOUL")
11.DAY TRIPPER (Single Record)
・・・とここまで来て、自分が書いた文章(通説)を読み返してみ
るとおかしい。ビートルズがキャピトルの商業主義に対して抵抗した
というのは、どう考えてみても、現実的ではないからである。もしも
「仕返し」として、「例の」写真をキャピトルに送って発売させたと
いうことであれば、それは「クレーム・回収」を予期していたと考え
られないこともない。いくら何でも、アメリカのファンの自分達への
イメージが悪くなるようなことを、自ら選択するとは思えないのだ。
ビートルズは「例の」写真を「キャピトルを困らせてやろう」と考え
たのではなく、「これはイケている」と判断したのではないだろうか。
『ブッチャー・カヴァー』の素材は1966年 3月25日、カメラマンの
ROBERT WHITAKER により撮影された。ちなみに、その2日前に25日の
フォト・セションの内容が打合せされていた。その時の方針としては
「これまでのアイドル風な写真ではなく、斬新なものにしよう」との
ことであった。もっとも、その日に『トランク・カヴァー』の素材が
撮影されていたという。
フォト・セションの直後、キャピトルから「新しいポートレイト」
の督促が来るのだが、その時、マネージャーのブライアン・エプスタ
インは『トランク・カヴァー』の素材を送付した。キャピトルはその
素材をもとに「次のアルバム」のデザインに取り掛かった。そして、
『トランク・カヴァー』のサンプルがエプスタインのもとに届いた。
1966年 5月20日といえば、'PAPERBACK WRITER'と'RAIN'のヴィデオ・
クリップを撮影した日であるが、彼は4人に「サンプル」を見せた。
ところが「運悪く」、前日にウィティカー氏が彼らに『ブッチャー
カヴァー』の素材を見せていたのである。彼らはよほど気に入ったの
であろう。翌日に見せられた『トランク・カヴァー』を拒否し『ブッ
チャー・カヴァー』へ変更するように要求したのである。
そして・・・。あの『ブッチャー・カヴァー』が世に生まれ、短い
一生を終えたのである。
つづく
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ところでCD「Capitol~」の次作についてはオフィシャルな宣伝未だ見かけずですが、やはりリアルなブッチャーカバーは難しいですかね…。
B4の逆鱗に触れたことを憂慮したキャピトルは
翌年の"SGT.~"からUKと同期を図るように
なりましたね。
逆に"MAGICAL MYSTERY TOUR"のような「ヒット」も
出ました。
US復刻版シリーズでのブッチャー・カヴァー
期待しています!