【1965年06月の「ヨーロッパ・ツアー」より】
1965年 4月13日、トゥイッケナム・フィルム・スタジオでの撮影を
終えた4人は、19時にEMI・第2スタジオに集合し、‘Help! ’の
レコーディングを着手した。彼らはこの頃採用した「リズム・トラッ
ク先行録音方式」をTAKE 8まで行い、TAKE 9からヴォーカルを収録し
た。そして、23時過ぎにTAKE12を収録し‘Help! ’のレコーディング
を完了させたのである。
“Help!!!! ・・・Take One・・・”。コントロール・ルームから
ノーマン・スミスの声が響く。さあ‘Help! ’のレコーディング開始
だ。ジョンの“Come on!”の声。そしてポールのカウントでだろうか。
イントロが始まった。コード「Bm」を12弦のアコースティック・
ギターをかきならすジョン。ハイ・ポジションだ。いつものヘフナー
をボンボンならすポール、ジョージのダブル・ノートのテネシアン、
そしてリンゴのハイハットによる刻み。相変わらず正確だ。TAKE1 で
ありながらも、4人の演奏はリリースされたヴァージョンとそれほど
大差はなかった。4人は、既に相当リハーサルを重ねたのであろう。
「音」は固まっていた。そして、聴かせどころ。ジョージのアルペジ
オのソロだ。2分の2拍子、8分音符×16音(実際は16分音符の
スピード感である)の2小節分の「流れるような」リフである。流れ
るようになるはず・・・だった・・・。
しかし、モタつくジョージ。TAKE1 はAメロ冒頭のコード「A」、
ジョンの「やめやめ」のかけ声で‘When I was younger So much’の
箇所で中断する。さあTAKE2 だ。ノーマン・スミスの野太い声が響く。
ポールはやはり熱心だ。テイクの合間もベースのリフを念入りに弾い
ている。
TAKE2 。ジョージのソロはTAKE1 よりも状態が悪いようだ。リフの
頭の2つの音が明らかに突っ込みがちだ。4音の最後の2弦から次の
4音の最初の5弦へのシフトが遅いのである。緊張のため余計な力が
入っているのだろうか。それでもTAKE1 よりも若干長く演奏は続けら
れた。しかしAメロの5小節目、コード「F#m」‘I never needed’
の箇所でまたも中断する。
時は経過し、TAKE5 。ついにジョージのソロはいったんはずされる。
「問題」の箇所は、ジョンによる12弦のボディ・スラップの音のみ
が聴こえてくる。Aメロは、しばらく3人の演奏だ。ボールの「とび
跳ね」ベースが鳴り響く。譜面に表記すると1小節を「付点4分音符
+8分音符+2分音符」となり、このセットで進行していくのだが、
最初の付点4分音符は「複付点」に近いニュアンスだ。この感覚は、
ミミで体感するしかないだろう。Bメロに移行すると、裏拍・低弦の
ジョージのテネシアンが、ようやく聴こえてくる。そして、「アルペ
ジオ・ソロ」・・・。ここでもやはり、ジョンのボディ・スラップ音
のみが響き、その後に、リンゴのタム・ロールで空白を脱出する。
3コーラスめのAメロでは、「リズム隊」が演奏を抑え、ジョンの
12弦とヴォーカルを際立たせている。そしてそれをジョージのテネ
シアンが白玉コード弾きでサポートしている。1弦からのアップスト
ロークで、「ジャラ~ン」という感じで響かせている。
さて。‘Help! ’は、様々なミックス違いを生み出した曲である。
それについては、別の機会でまた・・・。
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