36．ＵＫ盤とＵＳ盤 "REVOLVER"

【ALBUM "REVOLVER"】

　ビートルズの「編集盤」について、前回はＵＫ盤とＵＳ盤との収録曲
の異なる例として、"RUBBER SOUL "をご紹介した。今回は、"REVOLVER"
を紹介しよう。

　以下に示すのは、同アルバムのＵＫ盤とＵＳ盤の収録曲である。

【ＵＫ盤 "RUBBER SOUL" Parlophone:PCS-7009(1966.08.05)】
01.Taxman
02.Eleanor Rigby
03.I'm Only Sleeping
04.Love You To
05.Here,There And Everywhere
06.Yellow Submarine
07.She Said She Said
08.Good Day Sunshine
09.And Your Bird Can Sing
10.For No One
11.Doctor Robert
12.I Want To Tell You
13.Got To Get You Into My Life
14.Tomorrow Never Knows

【ＵＳ盤 "RUBBER SOUL" Capitol:ST-2576(1966.08.08)】
01.Taxman
02.Eleanor Rigby
03.Love You To
04.Here,There And Everywhere
05.Yellow Submarine
06.She Said She Said
07.Good Day Sunshine
08.For No One
09.I Want To Tell You
10.Got To Get You Into My Life
11.Tomorrow Never Knows

　"RUBBER SOUL "では、ＵＫ盤と異なる楽曲がＵＳ盤に収録されたと
いう点で特色があった。しかし、"REVOLVER"におけるＵＳ盤は、その
収録構成という観点だけを見れば、平凡である。なぜならば、ＵＳ盤
は、ＵＫ盤から単純に'I'm Only Sleeping''And Your Bird Can Sing'
'Doctor Robert 'の３曲をカットし、１１曲の構成としているからで
ある。カットされた３曲は、ＵＳ盤"REVOLVER"が発売される（1966年
8 月）２ヶ月前に発売された編集盤"YESTERDAY AND TODAY "にいずれ
も収録された。

ビートルズ排斥運動

　1966年 3月 4日、ロンドンの『イブニング・スタンダード』誌に、
「ぼくたちは、キリストよりも人気がある。」というジョン・レノン
の発言を含むインタビュー記事が掲載された。この件はイギリスでは
それほど問題にならなかった。また、アメリカでもしばらくは誰も、
この発言を知らなかった。
　しかし、1966年 7月31日アメリカの『デイトブック』誌にこの発言
が掲載されるやいなや、ビートルズへの嫌悪感とともにアメリカ中に
「ビートルズ排斥運動」が巻き起こったのである。これが世に言う、
「キリスト教舌禍事件」である。

　ＵＳ盤"REVOLVER"がアメリカで発売されたのが、1966年 8月 8日。
また、ＵＫ盤からカットされた３曲はすべてジョン・レノンの作品で
あること。以上の点から、私は最初、ＵＳ盤"REVOLVER"の縮小構成は
この事件が原因であると思っていた。それは、あまりにも排斥運動の
勃発と、"REVOLVER"の発売とのタイミングが「良過ぎた」からである。
1966年 3月 4日からの経緯は、後に知ったことであるが、その経緯を
たどれば、この判断が誤りであることは、明白である。

　それにしても、１１曲構成のＵＳ盤"REVOLVER"を見るにつけ、当時
のアメリカのビートルズファン、特にジョン・レノンファンは、どの
ような心境でこの"REVOLVER"を聴いたのであろうか。３曲もカットさ
れた結果、ジョンの作品はわずか２曲となり、ジョージ・ハリソンの
作品の３曲よりも、少ない構成となったのだから。（もちろん、ジョ
ージの才能を否定しているわけではない。）

　とはいえ、ＵＳ盤のミックス内容はＵＫ盤と異なる点が随所にある
との情報がある。実際、私はまだＵＳ盤"REVOLVER"を耳にしていない。
従って、昨年のＵＳ復刻盤の第２弾あるいは第３弾で、なんとしても
音源を入手し、自分の耳で違いを確認したいものである。