にわか日ハムファンのブログ記念館

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盗塁記録基準が抱える本当の問題

2008-01-12 16:36:52 | 言わせてもらいます・球界に苦言提言
■ 無用な盗塁数えません プロアマ合同規則委員会(トーチュウ・2008年1月11日)

 昨日はトレードの話が入ってきたために書きそびれましたが、これはこれで大事な問題なので。
 このエントリを書くまでに、ブログ・mixi日記を巡回してみたのですが、概して批判的な論調が多いようです。
 で、私自身も最初この話を読んだ時は、正直なところ「アホか」と思いました。
 ただ、上で挙げたトーチュウの記事中にある一文を見てから、だんだん考え方が変わってきたのです。その一文とは、

 野球規則の10・08(g)には同様の条文があるが、日本球界ではどの状況で盗塁しても記録としてカウントしてきた。


というもの。で、実際に野球規則10・08を見てみると、こうあります。

 走者が盗塁を企てた場合、これに対して守備側チームがなんらの守備行為を示さず、無関心であるときは、その走者には盗塁を記録しないで、野手選択による進塁と記録する。
【注】 たとえば、走者一・三塁のとき、一塁走者が二塁を奪おうとした場合、捕手が三塁走者の本塁への突入をおそれて、送球しなかったときなどには、たとえ守備行為がなくても、本項を適用しないで、盗塁を記録する。
(『絶対ドラゴンズ主義』より「公認野球規則2007年度版」)


 この条文を前提にすると、話は全く変わることになります。
 つまり、盗塁記録のつけ方を変えるのは、今まで存在しなかったルールを新たに作るのではなく、今まで存在したにもかかわらず、適用されなかったルールを適用する、ということになるのです。
 だとすれば、少なくとも建前上は、この措置に問題があるとは言えません。むしろ、ルール上は今までのほうが不自然だったわけで、その不自然さを解消することは、なんらおかしな話ではないのです。
 とはいうものの、ことはそう単純ではありません。単に規則10・08を適用するだけでは、実際上の問題が新たに出てくる恐れがあるためです。
 この条文では、守備側が関心を示さない限り、盗塁はすべて記録されないことになります。とすると、例えばスポーツ報知の記事が危惧しているように、シーズン終盤で盗塁王争いをしている場面で、あえて守備側が無関心を装うという事態も起きかねません。
 では、どうすればそのような悪用を抑えられるか。1つの方法としては、「本来なら守備行為が行われるべき場面では、実際のいかんにかかわらず、盗塁を記録する」ことにするというのが考えられます。
 例えば、僅差ないし同点で迎えた9回2死1塁の場面。ここで走者が盗塁を企てたとすれば、本来なら守備側は阻止すべきところでしょう。もしこの場面で、何らかの理由で守備行為が行われなかったとしても、1盗塁を記録することにするのです。
 同様に、本来守備行為を行うべき場面では、実際の守備行為の有無は抜きにして、盗塁を記録する。こうすれば、ルールの悪用はかなりの程度防げるはずです。
 ただし、これにも課題がないわけではありません。というのも、「本来なら守備行為が行われるべき場面」を、誰が、どうやって決めるのか?
 通説では、7点差以上の場面では盗塁はカウントしない、とあります。別の見方をすれば、7点差未満であれば「本来なら守備行為が行われるべき場面」ということにもなります。
 ですが、7点差がセーフティーリードであると考える人が、果たしてどれだけいるでしょうか?
 ラピッドボール全盛の時代と比べれば、確かにこの2, 3年は大量点の入る試合が減っているかも知れません。とは言え、8点差、9点差をひっくり返る試合が現実にないとは、誰も言い切れないのです。
 この課題への対処法は、2つ考えられます。1つは、過去に大量点差を逆転した試合を全て調べ、統計的に逆転がほぼ不可能な(確率として1%、厳しくするなら0.1%)水準を計算します。
 その上で、その水準の小数点以下の値を切り上げ、その点差以上なら盗塁を記録しない、というものです。
 これは厳密なデータに基づくだけに、科学的に正しいものとはいえます。反面、さまざまな試合に対して、基準を杓子定規に当てはめることに抵抗を感じる人も出てくることでしょう。
 もう1つは、盗塁を記録するかどうかの判断を、全て公式記録員に任せてしまう、というものです。もちろんある程度のガイドラインは必要ですが、そこで定められた以外は、すべて記録員が判断することになります。
 これなら、先ほど書いた杓子定規な基準の適用は避けられます。ですが、あくまでも記録員の恣意によって記録が決まる以上、記録員によって判断が分かれる場面も出てくる可能性があります。
 2つの方法は一長一短があります。どちらの方法がいいのかは、人によって考えが分かれるところでしょうし、むしろ皆さんのご意見を聞いてみたいのが、今の私の気持ちです。
 そして、今回問題となった規則改正には、ここまで書いてきた中では触れなかった、それでも非常に重要な問題がもう1つあります。
 それは、結局のところメジャー追随じゃないの?というもの。
 日本野球が国際化を図る以上、国際ルールを取り入れることは必要です。
 ですが、ただ単にアメリカや他国のルールを取り入れるだけでいいのか?
 もし国際(アメリカ)基準より日本の基準の方が理に叶っているというのであれば、日本のルールにこだわる、いやそれだけでは良くない、日本のルールを発信し、諸外国に取り入れられるようにするぐらいの態度こそが、大事なのではないか?
 「国際ルールだから」「メジャーのやり方だから」何も考えずに取り入れるのでは、いつまでたっても日本野球は他に追随するだけの存在でしかあり得ません。
 一方で、「日本は日本のやり方でいい」というので扉を閉じてしまうのも、これまた日本野球の発展にとって不毛なことです。
 アメリカや世界から学ぶべきは謙虚に学ぶ。それと同時に、自分たちの国の野球の歴史の中で蓄積された利点はどんどん発信し、日本発の野球の基準を少しずつ作っていく
 そういう発想を日本野球界が身に付けなければ、いつまでたっても今回のような「ルール改正」を続けるか、世界に通用しない「野球」という競技に閉じこもってしまうかのどちらかに陥るのではないか。
 私は、むしろその方が不安です。


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10 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (wata)
2008-01-13 01:58:29
数字のためだけに、みっともないマネをする(敬遠とか)は論外です
ですが、この変更は「死者に鞭を打たない」的なものを感じるので私は全部記録すべきだと思います

点差が開いているところと開いていないところで記録に差をつけるということは、そこに「本気度」の差があるということを認めることだと思うのです
事実、盗塁できるところでしないということは、間違いなく手を抜いているということです
勝負をしているんだから、死者にも徹底的に鞭を打ち、跡形も無くなるまで打ちのめしてぶっ殺す。
それがプロのやるべき事。そうしなければ、画像のような反撃を喰らい得るんです。アマチュア野球じゃないのですよ私が見ているのは
それなのにこういう制度を導入することは、手抜きを公に認めること以外の何ものでもないでしょ
メジャー流(笑)=世界らしいですから、もう勝手にしろって感じですけど。
でも私は点差が何点開こうが、盗塁した選手には拍手を送りたいと思います。手抜き反対!

・・・もし今回の変更が許されるなら、点差が開いたときのヒットもホームランも全部認めちゃダメなんじゃないの?
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Unknown (M・K)
2008-01-13 03:50:56
荒削りな内容になりましたが、トラックバックを送らせて頂きました。

全体を通して改めて考えてみると、明文規定が存在するとはいえ、
問題点が無い訳ではないですね。

何でもかんでもメジャーに追随すれば良いとは言えませんが、
国際大会に絞って目を向けると、そこは「異文化」の交流の場でもあるだけに、
こうした盗塁に関する話のようなことを知っておくことは大事だと思います。
(もちろん、どちらが正しいかは別にして。)
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wataさん (ルパート・ジョーンズ)
2008-01-13 06:42:15
この問題は結局のところ、
「死者に鞭打たない」という価値観と、
「最後まで気を抜かないのが礼儀」という価値観と、
2つのぶつかり合いではないか、と私は考えてます。
でもって、本来この2つに優劣のつけようがあるはずはないんですね。
ただ、実際にはどちらかの価値観に基づくルールを優先しないといけませんし、
その際、たまたまアメリカなり国際ルールが立場上優位にあるため、
日本がそちらに追随する形になった、ということだと、私は考えています。
wataさん(実は私もですが)を含め、日本の野球ファンが、このルール改正に割り切れなさを感じるのは、
自らの価値観に相容れないルールを強いられている、という感情が、
意識的ないし無意識のうちにあるからではないでしょうか。
それだけに、単に国際ルールに従います、というだけの野球規則委員会には、私も少なからず疑問を感じてます。
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M・Kさん (ルパート・ジョーンズ)
2008-01-13 06:49:54
トラックバック拝見しました。
どんなスポーツでもそうだと思うんですが、ルールが全ての場面をカバーするのは無理でしょうし、
その場でしかるべき立場の人の判断に委ねられることは、どうしても出てくるのは避けられません。
問題は、その際どういう思想に基づいて判断がなされるべきか、ということでしょう。

また、エントリでは国際(アメリカ)基準追随への批判が主になりましたが、
M・Kさんがおっしゃるように、国際(アメリカ)基準と、その元となる思想なり価値観を知ることは、
非常に大事なことだと私は思います。
野球というスポーツ自体、アメリカの価値観の下で生まれ育ったものですからね。
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世界の盗塁王 (りさ・ふぇるなんです)
2008-01-13 08:55:27
何かのコラムで福本さんが「点差が開いたときに走るのは心苦しかったけど、お客さんは俺の盗塁を観に来てるんだからその期待に応えないといけない」と言うような事を書いてらっしゃいました。
阪急みたいな人気の無いチームにとっては福本さんの盗塁は最大の売りだったでしょうし、この場合、気持ち的にはどっちがプロらしい行為でしょうね(^^;

ただ、観ている方は負けてるほうも勝っているほうも点差が開いているのに(7点差と言う微妙な規則はおいといて)「ええ~もう止めようよ~」ってな雰囲気にはなりますよね。
野球の規則上は正しいかもしれませんが、観客の事もも考えないようなプレーについてはどうかと思います。
(例えば9回に細かく投手交代して遅延行為を行うとか・・・あ、これは采配か・・^^;)
ただ、こういう事は「大人なんだからいちいちルールを決めなくても空気読みましょうよ」と思いますけどね(^^;
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りさ・ふぇるなんですさん (ルパート・ジョーンズ)
2008-01-13 10:09:21
>福本さん
試合を優先するか、個人のプレーを優先するか、確かに難しいところですよね。
個人的には、試合の重み(レギュラーシーズンのうちの1つとか、日本シリーズで王手をかけた試合とか)や、
個人記録のバランスで決まってくるとは思うんですが、絶対的な正解がないだけに、本当に難しいです。

>大人なんだからいちいちルールを決めなくても空気読みましょうよ
話が逸れて済みませんが、それならそれで、明日は試しに走ってほしいなぁと(笑)
あ、どうせなら亀ちゃんも希望(^^;;)
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点差 (トゥザフネ)
2008-01-13 14:44:57
僕もこの記事を読んだ時、まず思ったことが「得点差が離れた際」の具体的な点差が決まっていないことに不安を感じていました。
しかし読んでて思ったのですが、セーフティリードの基準が曖昧ならば、エラーやフィルダースチョイスの基準もたいがい曖昧ではないのか?ということです。
普通に野球を見ていても、エラーなのか内野安打なのか微妙なプレーは多々ありますが、それらは全て記録員のさじ加減で決まっているわけです。ならば盗塁に関しても、記録員の判断に全てゆだねてしまっても良いのではないでしょうか?

僕はこのルールを適用するならば、将来的にコールドゲームの導入も考えて欲しいと思いました。
この前、秋の高校野球を見ていて、確かアレって7点差でコールドなんですよね。それである程度点差が付いてしまった試合では、試合の注目点が「コールドになるかならないか」というところに注目されてくるんです。負けてるチームはどうせ勝てなくても、何とかしてコールド負だけは逃れてやる!と思ってプレーしていますし、そんなゲームもある意味ハラハラして面白かったので、エンターテイメントであるプロ野球こそ、それくらいしなきゃならんと思ったのですが。
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トゥザフネさん (ルパート・ジョーンズ)
2008-01-13 15:27:22
エラーであれ野選であれ、公式記録員の恣意に委ねられる部分は結構あると思います。
とすれば、盗塁に関しても、その場の判断で記録するかどうかを決めるという考えもあると思います。
とはいえ、あまりに判断が分かれても問題になりますよね。
なので、判断の参考となるガイドラインを事前に作ることがまず1つ。
また、記録員同士が頻繁に情報交換し、盗塁を記録するかどうかの経験を蓄積していって、
以後の判断に生かしていくということも必要になるでしょう。

コールドゲームは、個人的にはすぐに導入すべきとまでは思わないのですが、
一度導入した方がいいか、議論してみたら面白そうですね。
試合時間短縮という側面もありますし、一方で記録がかかる選手の反発も予想されそうですが、
ではファンはどうなのか? ぜひ一度聞いてみたい気がします
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全く別件になりますが (あさぎや)
2008-01-13 17:35:59
ストライクゾーンを、国際ルールというか北米・メジャーリーグ解釈に近づけてほしいです。具体的には、ボール1,2個分外角へ寄せるように。

そして危険球を厳しく適用する。「内角攻め」も投手の駆け引きの内ですけど、死球を喰らって選手生命の危機にさらされるのは打者です。かつてブルーウェーブ時代のイチローなど打撃絶好料の夏場、打率4割手前でブツけられて……というシーズンが何回かあったと記憶しています。それでも首位打者だったんですけどね。
同時に、(避けうるボール球を)打者が避けなかったら死球は適用しない。これもルールを正しく適用すればそうなるはずなのですが、日本では打者が避けなかった場合でも当たったらそのまま死球、というジャッジが時々目に付きます。
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あさぎやさん (ルパート・ジョーンズ)
2008-01-14 06:52:08
>ストライクゾーン
最近少し外に広がったような話ですが、まだ国際ルールとはズレてるんですかえね。

>危険球
退場に至る前の注意・警告制度のようなものが必要かも知れません。

>死球
よけられるのをよけずに、無駄な死球を増やしてる打者っていますもんねぇ。
「当たり損」というのがないと、当たりまくった末負傷したキンケード(元阪神)みたいなのがまた出るかも……
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