つい先日大阪エムケイによる入札が不成立に終わったばかりの大阪ドーム。今度はネーミングライツ(命名権)の売却が決まったそうです。
・ 大阪ドーム:京セラ株式会社とのネーミングライツ(施設命名権)に関する合意について
・ 京セラ:「大阪ドームおよびオリックス・バファローズとの広告契約について」
「大阪なのに『京セラ』かいな」とか、「『京セラドーム』いうたらドームが瀬戸物でできてるみたいでいややな」というツッコミはさておき。
まず疑問になるのが、京セラほどの企業が、今さら命名権を買う必要があるのか?ということでしょう。この点について、京セラホームページのニュースリリースから京セラ側の説明を見てみましょう。
「オリックス・バファローズが日本を代表する人気球団である」というのに対してはイヤミのつもりかとツッコミたくなりますが(檻ファンの皆さんごめんなさい……)、それはおいといて……
京セラは電子部品関連の大手企業です。関西と関東では知名度に差はあるでしょうが、すでに広告宣伝などで世間一般に「京セラ」という名前は浸透しているはずです。
さらに、京セラの製品は先ほど書いた電子部品関連やファインセラミック関連などが主です。つまり、われわれのような一般消費者を対象とした製品ではなく、そういう製品を作る時に必要となる中間財を作るのが京セラの主な業務なわけです。
となると、京セラにとって大事なのは球場に足を運ぶような一般市民へのアピールよりも、メーカーからの信頼や名声を得ることになるはずです。
となれば、京セラが命名権をわざわざ買う必要がどれほどあるかは疑問です。むしろ、命名権の買い手としてはMKグループの方がよほど納得が行きます。一般消費者相手のビジネスをしていて、かつこれから知名度と企業グループのイメージを上げていかなければならないのですから。
もっとも、一般消費者を相手にしていないからといって命名権を買うメリットがないとは言えません。一般に分かりやすい「広告塔」があれば、企業相手のビジネスがしやすくなるのも間違いありません。この点はオリックスという企業が見事に表しています。
ですが、それでも京セラほどの企業が今さら、という感はぬぐえません。あるいは、そもそも京セラがドームの命名権を買いたいと思ってたのではなくて、ドーム側が頼み込んでのではないか、そんな気がしてきたところ、今朝の日経朝刊の記事にこんな一文がありました。
やはりそうだったか。
大阪エムケイがドームの入札に応じながら、ドームの管財人に「入札不適格」とされたのは先月22日。それから10日も経たないうちに、5年という長期の命名権契約が成立したわけです。
なにせ5年です。売却額は明らかにされていませんが、これまで命名権が売却されたうち、金額が分かっているもので最も安い年1億円(旧ヤフーBBスタジアム)と仮定しても総額は5億円、最も高い年5億円(福岡Yahoo! Japanドーム)だと総額は25億円にものぼるのです。
確かに京セラミタはすでに更正手続きを終えて普通の企業になりました(なったはず)。ですが、ここまでの長期投資に踏み切るのはやはり難しかったのでしょう。
ただ、ドーム側は何としても買ってもらわないと困る。他の企業には打診してなかったのかという疑問も沸きますが、おそらくいろいろ当たってはみたものの、5年という長さがネックになって断られたのではないでしょうか。
そこで、本体の京セラが出てきて何とか話がまとまった……そんなところではないかと私は推測しています。あくまで推測ですが。
ちなみに京セラホームページの会社概要で調べたところ、2005年度3月期決算での売上高は約4,933億円、経常利益は約664億円、当期純利益は約343億円です。乱暴な例えですが、年343万円貯金できる人が年5万円投資を増やすぐらい、大したことではないでしょう。
ただし5年間投資を続けるとなると、その間宣伝効果が安定してもらわないと困るわけです。この間に檻が神戸に完全移転してしまったら、がらんどうのドームに名前がついていることが逆効果にもなりかねません。
となると、檻には最低5年間大阪で試合をしてもらわないといけないし、京セラとして引き止め策を打っておく必要も出てくる……こう考えると、今回京セラがドームの命名権のみならず、檻と広告契約を結んだ理由も理解できそうです。
と同時に、大阪ドームが大阪エムケイによる入札をはねつけた理由も見えてきます。「市民球団」だかなんだか知らないが、いまだに実体のないものを振り回すMKにドームを売り渡すのは経営上危険極まりない、そう考えるのが管財人として真っ当なあり方だと思います。
それでなくても、管財人は地元企業が共同でドームの受け皿を作ることを望んでいるわけです(日付は忘れましたが、先月の日経紙面にそんな話がありました)。こうなっている以上、MKは「お呼びでない」のが実情でしょう。
※ ここでお断り。今話に出てきた「市民球団」についての記述は、あくまでも管財人やドーム側の意向を私が推測したものであり、私自身の意見そのものではありません。
もっとも、私もこの「市民球団」には非常に懐疑的なんですけどね。名前は美しく見えても中身が伴ってなければ意味がないわけですし、まして中身がいまだに見えないようではお話になりません。
そう考えていくと、今回の命名権売却は単なる収入増加につながらず、地元企業へのアナウンス効果も狙ったものなのでは、そんな気がしてきました。
関西の大企業である京セラが、大阪ドームにお金を出した。となれば、他の企業に対し資金的な協力を求める際に「京セラさんがやってるんですから……」という一言を、殺し文句とは言わないまでもそれなりの材料に使える、とは考えられそうです。それで他の企業がどれだけ動くかは分かりませんけどね。
ただ、先ほどドームの受け皿云々の話でご紹介した記事で、想定される企業として近鉄の名があったことには猛烈な違和感を感じました。
あと、言っても仕方ないのは百も承知なのですが、それでもあえて言わせていただきたい。
このぐらい2年前にやっとけと。
京セラが大阪ドーム命名権 4月から「京セラドーム」
京セラは2日、プロ野球パ・リーグのオリックス・バファローズ本拠地である大阪ドーム(大阪市西区)の命名権を取得する、と発表した。4月1日から「京セラドーム」の名称になる。
年間約360万人の集客があり、メディアに取り上げられる機会が多いことから、京セラグループの認知度向上に大きな効果があると判断。契約額は明らかにしていない。
大阪ドームを所有・運営する大阪市の第三セクター、大阪シティドームと2011年3月まで5年間の契約で合意した。ドーム社は会社更生手続き中で、競争入札が不調に終わったため管財人が大阪市に支援を要請している。京セラは「あくまで広告の一環で、ドームを購入する意思はない」と話している。(共同通信・2006年3月2日18時18分更新記事)
・ 大阪ドーム:京セラ株式会社とのネーミングライツ(施設命名権)に関する合意について
・ 京セラ:「大阪ドームおよびオリックス・バファローズとの広告契約について」
「大阪なのに『京セラ』かいな」とか、「『京セラドーム』いうたらドームが瀬戸物でできてるみたいでいややな」というツッコミはさておき。
まず疑問になるのが、京セラほどの企業が、今さら命名権を買う必要があるのか?ということでしょう。この点について、京セラホームページのニュースリリースから京セラ側の説明を見てみましょう。
大阪ドームのネーミングライツ・パートナーシップは、大阪ドームがプロ野球や音楽イベント等を通じ、世界に向けてスポーツ・文化の情報発信をしていること、また「ヘルメット広告」および「選手ユニフォーム広告」についてもオリックス・バファローズが日本を代表する人気球団であることから、いずれもスポーツ広告の取り組みの一環としてグローバルに京セラグループの認知の向上を図ることができると考えています。
「オリックス・バファローズが日本を代表する人気球団である」というのに対してはイヤミのつもりかとツッコミたくなりますが(檻ファンの皆さんごめんなさい……)、それはおいといて……
京セラは電子部品関連の大手企業です。関西と関東では知名度に差はあるでしょうが、すでに広告宣伝などで世間一般に「京セラ」という名前は浸透しているはずです。
さらに、京セラの製品は先ほど書いた電子部品関連やファインセラミック関連などが主です。つまり、われわれのような一般消費者を対象とした製品ではなく、そういう製品を作る時に必要となる中間財を作るのが京セラの主な業務なわけです。
となると、京セラにとって大事なのは球場に足を運ぶような一般市民へのアピールよりも、メーカーからの信頼や名声を得ることになるはずです。
となれば、京セラが命名権をわざわざ買う必要がどれほどあるかは疑問です。むしろ、命名権の買い手としてはMKグループの方がよほど納得が行きます。一般消費者相手のビジネスをしていて、かつこれから知名度と企業グループのイメージを上げていかなければならないのですから。
もっとも、一般消費者を相手にしていないからといって命名権を買うメリットがないとは言えません。一般に分かりやすい「広告塔」があれば、企業相手のビジネスがしやすくなるのも間違いありません。この点はオリックスという企業が見事に表しています。
ですが、それでも京セラほどの企業が今さら、という感はぬぐえません。あるいは、そもそも京セラがドームの命名権を買いたいと思ってたのではなくて、ドーム側が頼み込んでのではないか、そんな気がしてきたところ、今朝の日経朝刊の記事にこんな一文がありました。
一月中旬に、大阪ドームに広告を出している子会社の京セラミタに対し、大阪シティドームの管財人から命名権売却の打診があったという。(日本経済新聞2006年3月3日朝刊13面)
やはりそうだったか。
大阪エムケイがドームの入札に応じながら、ドームの管財人に「入札不適格」とされたのは先月22日。それから10日も経たないうちに、5年という長期の命名権契約が成立したわけです。
なにせ5年です。売却額は明らかにされていませんが、これまで命名権が売却されたうち、金額が分かっているもので最も安い年1億円(旧ヤフーBBスタジアム)と仮定しても総額は5億円、最も高い年5億円(福岡Yahoo! Japanドーム)だと総額は25億円にものぼるのです。
確かに京セラミタはすでに更正手続きを終えて普通の企業になりました(なったはず)。ですが、ここまでの長期投資に踏み切るのはやはり難しかったのでしょう。
ただ、ドーム側は何としても買ってもらわないと困る。他の企業には打診してなかったのかという疑問も沸きますが、おそらくいろいろ当たってはみたものの、5年という長さがネックになって断られたのではないでしょうか。
そこで、本体の京セラが出てきて何とか話がまとまった……そんなところではないかと私は推測しています。あくまで推測ですが。
ちなみに京セラホームページの会社概要で調べたところ、2005年度3月期決算での売上高は約4,933億円、経常利益は約664億円、当期純利益は約343億円です。乱暴な例えですが、年343万円貯金できる人が年5万円投資を増やすぐらい、大したことではないでしょう。
ただし5年間投資を続けるとなると、その間宣伝効果が安定してもらわないと困るわけです。この間に檻が神戸に完全移転してしまったら、がらんどうのドームに名前がついていることが逆効果にもなりかねません。
となると、檻には最低5年間大阪で試合をしてもらわないといけないし、京セラとして引き止め策を打っておく必要も出てくる……こう考えると、今回京セラがドームの命名権のみならず、檻と広告契約を結んだ理由も理解できそうです。
と同時に、大阪ドームが大阪エムケイによる入札をはねつけた理由も見えてきます。「市民球団」だかなんだか知らないが、いまだに実体のないものを振り回すMKにドームを売り渡すのは経営上危険極まりない、そう考えるのが管財人として真っ当なあり方だと思います。
それでなくても、管財人は地元企業が共同でドームの受け皿を作ることを望んでいるわけです(日付は忘れましたが、先月の日経紙面にそんな話がありました)。こうなっている以上、MKは「お呼びでない」のが実情でしょう。
※ ここでお断り。今話に出てきた「市民球団」についての記述は、あくまでも管財人やドーム側の意向を私が推測したものであり、私自身の意見そのものではありません。
もっとも、私もこの「市民球団」には非常に懐疑的なんですけどね。名前は美しく見えても中身が伴ってなければ意味がないわけですし、まして中身がいまだに見えないようではお話になりません。
そう考えていくと、今回の命名権売却は単なる収入増加につながらず、地元企業へのアナウンス効果も狙ったものなのでは、そんな気がしてきました。
関西の大企業である京セラが、大阪ドームにお金を出した。となれば、他の企業に対し資金的な協力を求める際に「京セラさんがやってるんですから……」という一言を、殺し文句とは言わないまでもそれなりの材料に使える、とは考えられそうです。それで他の企業がどれだけ動くかは分かりませんけどね。
ただ、先ほどドームの受け皿云々の話でご紹介した記事で、想定される企業として近鉄の名があったことには猛烈な違和感を感じました。
あと、言っても仕方ないのは百も承知なのですが、それでもあえて言わせていただきたい。
このぐらい2年前にやっとけと。
「MKグループが大阪ドーム買い取り」「MKグループ母体の市民球団発足へ」というのも実現性が薄く、興業的にもどうかというのが正直なところです。
5年間のネーミングライツ終了後にでもオリックスが大阪ドームを買収すれば今の第三セクター経営よりもよっぽどマシだと思います。でもその際「オリックスドーム」なんて名乗られたら、なんかイヤやなぁ。
でもね、
ここまでして、半ば押し付けまでしてネーミングライツで買って貰わないといけないものなのか?
疑問を感じます(まあ、大阪ドームが無くなれば大阪でプロ野球を開催するだけのスタジアムが無くなってしまうのでどうしようも無いんでしょう)
京セラさんにはできればこちらのほうにも出資していただきたかったりもするんですが・・・京都の企業だし、西京極球場も本格的に改修して欲しいし・・・
といってMKの構想も怪しいですし。もっとマトモな資金計画とビジョンを持って、ドーム買取なり「市民球団」設立なりに動くなら、ファンも支持する余地が生まれると思うのですが、現状では厳しいですよね。
>オリックス
ドームの名前はオリックスでいいから、球団を京セラに買ってほしいという気もするんですよね。
いつまたケチックスに戻ったり、他球団に合併話を持ちかけるか分からない今の球団経営陣よりはマシそうな……
甘い汁を吸うことのできるわずかな人間なり企業なりを除けば、誰も幸せにはしなかった。それどころか、このドームのために犠牲になったものといったら……
私も何度も通った球場ではありますが、ここまでしてドームを守るべきものなのかという思いはしてきますね。
本当に守るべきものは他にあったわけで、今と同じことを2年前にしていれば、あるいは……と思わずにはいられません。
※ただし、「(株)オリエントリースが大阪ドーム買収へ」という事は、まだ誰も言ってないし、あくまでも憶測の域を出ていないという事を但し書きしておきましょう。
>京セラ、大阪ドームにネーミングライツ
「大阪ドーム」ではなくて「東『京』ドーム」ではどうだろう?
・利益を確保すること(これは当たり前ですが)
・その証明として、具体的な数字に裏打ちされた利益計画が存在すること
が絶対条件になるわけです。
ですが、MKの入札にはそのような数値の裏付けはなかったようですから、この結果が出てくるのは必然だったのかもしれません。
>京セラミタ
おっしゃる通り、'02年に債務を一括弁済して更生を終了してます。
しかし、270億円を一括弁済したってんですから、スケールの大きな話です。
まぁ、名前にこだわらないオリックスらしくていいんじゃない?という感想かなあ。
正直、大阪ドームでの試合に想い出はあります。目の前でカブレラの超特大ホーマーとか見ましたし・・・。
それも球団あってのことなので、今はもう何をしてもあまり何にも感じなくなってます。想定内だからでしょうか(苦笑)
とりあえず京セラさんが球界に興味を持っていただければ・・・・・。
支援してくれるということですから、いいこと
なんじゃないかと思ったりします。
で、最後の近鉄側を弁護すると、2年前と今では
近鉄本社の財務状況がかなり違ったりするんですよね。
http://profile.yahoo.co.jp/biz/consolidate/9041.html
2年前は、近鉄創業以来の当期赤字を出して
リストラ断行中であり、いわば本業からすると
道楽興行でかつ赤字出まくりんぐの近鉄を保有してると
社員の士気や株主の怒りを買う状況だった、、と。
いろいろ大リストラやった成果で黒字転換したわけですが、
また大幅に回復したので余裕が出てきて、
罪滅ぼし的な意味合いもあるんじゃなかろうかと。
2年前は財布がきゅうきゅうしてて、1年経ってみたら
元に戻ってた……と。
これは結果論ですから無意味な話ですが、
近鉄に関しては2年前がタイミング悪すぎた話だったので
球団命名権が認められてたら、バファローズって
(今のブルーウェーブじゃんという形でなくて)
存続してたんじゃなかろうか、と。
ただ、先日の入札にもオリックスは応じなかったわけですし、あるいは世間一般が考えているほどには、少なくとも管財人が期待しているほどには、オリックスはドームに興味がないのかも知れません。
>「東『京』ドーム」
「東」の根拠をどうするかが問題な気が(^^;)
MKは最初話を打ち出したまではよかったのですが、具体的な構想となると非常にいい加減で、しかもこの1年話がまるで進んでいないわけですから、管財人にすればマトモに取り合えないのでしょう。
それにしても京セラミタの一括弁済額って∑( ̄□ ̄;)更正済みだというのまでは知っていましたが……