演舞の最後を飾るのは、会場のある地元・住田町世田米に伝承されている行山流山口派柿内沢鹿踊(ぎょうざんりゅうやまぐちは かきないざわししおどり)さん。
仰山流笹崎鹿踊り同様にこの踊り組も基本は9人踊りの鹿踊りで、9人での隊列と8人での隊列とが定められています。
去年の2月頃から柿内沢鹿踊に参加しているイギリス人ダンサー兼振付師の客員会員の踊り手さんに加え、彼女のダンスのパートナーの女性・練習を見守り続けてきたマネージャーの男性もこの日は踊りに参加していて、総勢9名での演舞でした。
この日の演目は…
渡り拍子→遠入羽(とおいれは)→入羽(いれは/キッザゴ)→庭廻り(+唄切り/細引き入羽)→長唄(南から)→唐金狂い(三人狂い)+追い狂い(ぼいぐるい/一人狂い)→鹿の子3(やまがら・黒雲・お花畑)→寄せ→引羽(ひきは/十五夜)→納め
唄切りの 『細引き入羽』、鹿の子の 『黒雲』『お花畑』、引羽の 『十五夜』 が今回若手のみなさんが新しく習得したパートで初披露です。
今日まで伝承されてきた柿内沢鹿踊の踊りのパートを、忘れ去られることの無いように、余すことなく、正しく、後進に伝えようと中立の角鹿氏が取り組み踊りを指南しておられます。
踊り手さんたちは、5月の世田米天照御祖神社式年祭(三年祭)の時からさらに沢山のパートを習得しなければならなかった訳ですが、まだまだ残りが待っているそうですよ!
渡り拍子で入場して。
柿内沢は通常の演舞の始まりも渡り拍子を2回繰り返します。
渡り拍子に続いて、遠入羽の場面。
隊列のまま前方に倒れ込み飛び出すように進み出る特徴的な場面。
次の入羽(キッザゴ)の場面。
この踊り、実は前後に直線的に動いているのではなく一本の線を軸にジグザグを描くように踊っています。
私の好きな入羽です。
入羽の次、庭廻りに附く唄切りの場面。
新しく習得された“細引き入羽”です。
『中立入れろや 中立入れろ 中立なけりゃ 中が繁ない(しげない) 中が繁ない 』
次の長唄の場面。
5月の式年祭の時に復活した長唄“南から”。
『南から 白き雀が八つ連れて これのお庭で羽を休める』
“片方のバチは太鼓を叩き、もう片方のバチは横にして前方に掲げる”を交互に3回繰り返す所作。
行山流によく見られるこの所作がふんだんに使われています。
唐金狂い(三人狂い)では狂い頭が始め一人で踊り始めます。
今回も左口輪(中立の左の側鹿)の踊り手、右口輪の踊り手とともに三人狂いを踊ります。
三人狂いの後には必ず追い狂い(ぼいぐるい)が続きます。
踊り手はイギリス人ダンサーのショーネッドさん。
追い狂いの最後のところで白鷺の唄が歌われます。
柿内沢鹿踊ではそのあとに、ひれ伏して白鷺を称える唄を歌います。
『さてもや見事に 立った姿よ』
『立った姿よ』 でみなが立ち上がり鹿の子に入るまでの間しばし庭を回り踊ります。
今回は鹿の子は三種類入りました。
最初の鹿の子“やまがら”の場面。
『やまがらは たすきに内に もどれ うでかせ』
“奥の御山”に似た踊りです。
目の前でバチを叩く情緒的な所作があります。
次の鹿の子“黒雲”に入りました。
中立が唄を歌い出しながら庭を廻ります。
今でこそどの鹿の子を踊るかを事前に踊り手に伝えていますが、かつては中立が自由に選びその時の思いつきで踊ったのだそうです。
こうして唄を歌い庭を廻るのは、どの鹿の子か踊り手に伝えるためでもあるとか。
『黒雲は 傘ごしかけて 来るときは 月の光 影はそろわず 影はそろわず』
“黒雲”は今回若手の踊り手さんたちが新しく習得した鹿の子のひとつ。
この鹿の子は、特に太鼓の音が聞きどころ。
最後の鹿の子“お花畑”の場面。
これも新しく習得したパートのひとつ。
中立が唄い始めます。
『お花畑の けしの花 八重に一重 此処の家に咲く 此処の家に咲く』
中立と側鹿との足捌きの違いが面白いです。
柿内沢鹿踊の特徴である緩急に富み間を取る踊りや太鼓は、調和がとても難しいと思います。
鹿の子の場面はこのしゃがむ所作で終わります。
寄せの場面。
引羽“十五夜”の場面、これも新しく習得したパート。
寄せでみなが揃い、これから引羽に入るという合図の中立太鼓のあと、しばし唄だけで太鼓が止まります。
こういった踊りは今まで見たことがなかったので、斬新な感じがしました。
踊りは異なりますが、前に進んで後退するという形は“今夜ばかりは”と似ています。
どちらも趣のある踊りです。
納めの場面。
頭を振って見得を切るような所作をします。
『太鼓の胴をきりりと締めて ササラを揃え これで納めろ これで納めろ』
最後に渡り拍子を叩き、退場しました。
柿内沢鹿踊さんを9名での踊りで観るのも舞台で観るのも今回が初めてでした。
短期間に次々と新しいパートを習い覚える踊り手さんたち。
その指導に取り組む中立の角鹿氏。
双方の力が融合し、この日の演舞が踊られました。
いつか全てのパートを伝授される日が来るのを、私も心待ちにしています!
郷土芸能に造詣が深く、郷土芸能のあるところにこの人あり!の笛吹さんの記事をご紹介します。
一瞬を切り取った素敵な画像と簡潔な文章は私たちを魅了して止みません。
2016 気仙民俗芸能祭 さわり
2016 気仙民俗芸能祭
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2016.11.06 けせんのたから 行山流山口派柿内沢鹿踊
#鹿踊り #ししおどり