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「機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島」 感想と※ネタバレあり

「機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島」観てきました。

ガンダムと共に年齢を重ねてきたオッサンとしては、もはや義務的な感じもしますが、実はこの映画化決定から期待はしていませんでした。

それはやはり冨野由悠季がいない。この点です。

冨野由悠季の手からガンダムが離れて久しいのですが、当初は宇宙世紀ではない全くのガンダムというジャンルを使ったガンダムシリーズだったのが、ユニコーンで宇宙世紀に足を踏み入れ、今回ついに1年戦争のエピソードの映画化というところまで来てしまいました。「ガンダム ORIJIN」がありますが、あれは一応1年戦争の前日譚までの映像化なので、、、。それでもコミックの方の「ORIJIN」をすんなり受け入れられているのは、安彦良和の画力があってだと思います。

その安彦良和が監督なんですが、結論から言うと全く面白くなかった。

昔からガンダムTV版の映像を新しくしてほしいというのはファンの間ではからあったのですが、それは映画3部作がとても良かったからこそであり、その意味では安彦良和はすごく天才だなとは思います。

今回映画化のエピソードは知っての通りTV版15話ですが、映画化に先だって漫画版があったようですが、そちらは観てないので今回の映画化がコミックそのままなのか違うのかは知らないです。

そもそも30分、実際には20分のTVのエピソードを映画化しようというのが、尺的にも大変難しいとは思うのですが、時間的なストーリーの間延び感はほとんど感じなかったといえます。もちろん映画化に際しての新しいキャラや設定の追加はありますが、無理なく追加できていたと思います。

ただ全体的にキャラが薄っぺらく感じます。

特にドアンは贖罪の意味もあって子供たちと共に暮らしているんですが、それは観ている方は事前情報もあって理解できるんだけで作中にその説明は少なかったと思います。

今作を観に行く直前にCS放送でTV版「ククルス・ドアンの島」を観る機会がちょうどあったのですが、そちらはドアンがちゃんと子供たちの親を殺したのは私だ~みたいなセリフがあったんですね。

全体を観れば分かることなんですけども、もう少しあっても良かったではないかと思います。そうでないとドアンの目的が実は、これも作中では明言されませんでしたが、核ミサイルの解除の方が主であったのかもしれないとも感じてしまいます。(その核ミサイルですが、同じくTV版の25話「オデッサの激戦」で水爆ミサイルをガンダムが真っ二つににするエピソードからの転用だと思います。)

もう少し脱走兵としてのドアン、戦争から逃げたいが逃げきれないドアンの悩みみたいなのが描かれば、今作の映画化の意味合いも増すのではないかと思います。それが核ミサイルの解除が裏にあったので少しぼやけるかなという気がしました。

アムロについては回想シーもあるように、兵士としてなり切れない思いと母との惜別などありましたが、TV版がそうであったようにドアンとの出会いでアムロの成長の一助となったのは間違いないですが、ドアンとアムロの交流が作業場面以外ないので、最後にアムロがザクを捨てるシーンの「戦争の臭い」がちょっと唐突に感じました。

戦争とはなんぞや、子供と暮らす理由、とかをアムロに語ることでアムロがザクを捨てる理由がわかりやすくなると思います。まあ、ちょっと説教臭くなるかもしれませんが。アムロがガンダムで生身のジオン兵士を踏みつけるシーンも、何かしらの説得力を持たせられたかもしれません。あのシーンは違和感しかなかったです。ビームライフルで「撃つぞー、撃つぞー」と言っていたアムロと同一人物とは思えない「軽い」描写でした。

子供たちの描写が多いのにはちょっと辟易しました。途中これはひょっとしたらディズニーなのか?とも思ったほどです。子供達が作中のひとつの要素であることには間違いないのですが、それがホワイトベースのクルー以上であるとは思えないんですよ。そのホワイトベースのクルーもまあまあ酷い扱いだったとは思うんですが。

いっそのこと、子供達が今回の戦闘の被害を受けるストーリーならアムロがザクを捨てる説得力も増すとは思うのですが、今作で命を落とすのは脇役かジオン側だけでしたね。

時系列の変更も結果的には良い結果を生まず違和感だけを残しただけだと思います。

TV版 オデッサ侵攻→ジャブロー→宇宙

今作 ジャブロー→オデッサ侵攻→描かれてないが宇宙

と時系列が変わっています。そのせいでスレッガーもいるしキャノンは2機あるしブライトは2階級特進なのでしょうが、今作の戦闘でキャノン2機は大破、スレッガー機も損傷、コアブースターも被弾とボロボロです。これはいかに演出とはいえね~

前述したようにアムロは惜別した母や父の夢を見ますが、どちらも恐怖の対象として描かれていました。アムロの心情としてはわからくもないですが、少なくとも母との別れはTV版3部作映画版共にきっぱり気持ちの整理をつけたうえで分かれていると思います。

ホワイトベースが地球に降りてきて以降のガルマ戦後のイセリナの死、ランバラル、ハモンとの交流、リュウの死、脱走、そしてマチルダの死。一連の流れの中に母との再会と別れもあるのですが、ジャブロー以降でアムロの戦いに対する疑問や拒否反応の描写はほとんどなく、覚悟を決めたアムロを感じさせます。

それが今作は入れ替わっているので、ジャブロー以降にマチルダの死を経験することになってしまいます。

 

安彦良和は絵は本当に天才的ですごいと思います。

「クラッシャージョー」や「アリオン」、「巨神ゴーグ」なんかは今観てもなんら遜色ない絵作りをされているとは思います。

が、ストーリーという面でイマイチかなと感じます。漫画だと面白いので演出面かもしれませんが。

冨野由悠季が今作については何も語ってないようですが、どう思ってるんでしょうか?もう関係ないとは言うとは思うのですが、心中穏やかではないと想像します。

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