りゅうこころのブログ

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死んでも泣くな

2020-02-19 08:39:54 | 日記
会社経営の傍ら、心理カウンセリング・コンサルタント講演・コンプライアンスに基づく講義なども行っています、りゅうこころです。ryukokoro

目次  
 
  1. 友人の他界
  2. 背中の痛み
  3. 医師と少年の会話
  4. 母との約束
  5. 解放
  6. 巣立ちの時
友人の他界
会社の友人が他界されました、45歳という若さでした。子供は男の子2人で残されたのは友人と子供2人でした、そう女性です。旦那さんとは早くに離婚しています。父親は居ませんでしたが、長男はすごく母親思いで一緒にスーパーに買い物によく行っていました。
友人から「お前、母親と買い物とか恥ずかしくねーの?」と揶揄われても「母親を息子が守って何が悪い!お前たちの方がよっぽど格好悪い!」と言う事の出来る立派な少年でした。将に父親不在の家庭で高校生の長男が父親のような役割を負っていました。

背中の痛み
ある日お母さんが「背中が痛いなぁ」と言いました。その時は『凝ってるからマッサージしてあげるよ』とマッサージしてあげていました。お母さんの背中の痛みは日に日に酷くなっていき、長男は母親を掛りつけの病院に連れて行きました。
『風邪ひいて咳過ぎですね。背中の筋肉をほぐして緊張を取るお薬を出しておきますね。』
2~3日はよかったものの、「背中が痛くて横になれない」と言われたので街で一番大きな病院に連れて行きました。

医師と少年の会話
『お父さんに連絡とれるかな?』
『はい、でも、、もう父と母は離婚してどこにいるのかもわからないのです』
『そうか、お母さんね、ステージ4のガンです。余命1ヶ月です。いつ位から背中が痛いと言っていましたか?』
『1ヶ月くらい前です。でもその時は背中の緊張を取る薬で良くなったと・・・』
『ガンは背中に痛みが走ります。君を安心させようと、3日間は我慢されたのでしょう。そんなものでガンの痛みは緩和されません。君のお母さんは肝臓・膵臓・腎臓に転移していて、もう開腹手術するのは不可能でしょう。イタズラに痛い思いをするよりは、なるべく痛みをとる方向で過ごさせてあげたいと先生は考えます。どうですか?』
『・・・はい、是非お願いします。』
『大切な注意点があります。お母さんには告知しませんので、知っているのは先生と君だけです。お母さんに悟られない様に、君は絶対にお母さんの前で泣いたりしてはいけません。約束できますか?辛いと思いますが。。』
『・・・はい、わかりました。約束します。』
『それではお母さんには肝臓が弱って顔に黄疸がでているから、肝炎ということで入院してもらいます。同時にモルヒネという痛みを取る薬を使いますので、親族である君の承諾が必要です。サインできますか?』
『わかりました。』

母との約束
男の子はサインしてお母さんの居る病室に行きました。
『肝炎で黄疸出てるから、しばらく入院だってよ』
『お母さん、ガンやろ?知ってるから隠さなくてもいいから』
『何言ってるの?早く退院して卒業式来てくれないと、お父さんいないんだからさー』
『うーん、行けないでしょ。自分の体は自分が一番わかるんだよ。いいかい、よく聞いて。あんたには弟がいるんだから、絶対に悲しい顔とか見せちゃいけないよ』
『なんでそんなマイナスな事ばかりいうの?治せるものなんだから頑張って治さなくてどうするん?気持ちで負けてるじゃん』
『もうそんなヘタクソな演技はいいから、モルヒネは麻薬だからね。使う内にだんだんあんたの顔覚えていられなくなるからさ。毎日顔は見せに来てね。今日は疲れただろうからもう帰りなさい』
彼は一度も悲しい顔を見せませんでした。お母さんが息を引き取られた時も、臨終を告げられた時も。もちろん葬儀の時も収骨の時も、お母さんとの約束を守ったのです。

解放
暫くたったある日、僕は「お線香をあげさせてほしい」とお願いして伺いました。幸いにも母親のお母さんである「祖母」が子供達を育ててくれるという生活になっていました。
彼は言います、『家に帰ってきて、お母さんが病院行く前に来ていた服を見るたびに、もうこれを着られないんだと思うと泣きそうでした。でもお母さんと約束したから。。。』
 
『きっとお母さんは(もう泣いていいよ)って意味で僕を来させたんだろうね。もう我慢しなくていいよ、よく頑張ったね。君は立派な漢だよ』

彼の中で抑えていた感情が溢れました、心の解放です。僕は彼が落ち着くまで側にいて、そして帰り際に言いました。

巣立ちの時
『君はもう立派な漢になった。これからしっかりと弟を守ってやれ。』
『はい、もう大丈夫です。ありがとうございました!!』

彼の子供らしい、それでいて清々しい漢の笑顔を見たのはこの時初めてでした。
彼も高校生。今でもひな祭りが来ると思い出します。
りゅうこころでした。ryukokoro