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集会報告、読書記録、観劇記録などの「ときどき日記」のショート版

暖かさを感じさせる築地のやまだや

2022年02月23日 | 銭湯・居酒屋

築地駅の南東600mほどにある、やまだやを訪れた。8階建てマンションの1階にあり、外観はやや高級な喫茶店のような感じだ。
この店を知ったのはずいぶん前のことで浜田信郎さんのブログだったが、太田和彦さんも「ひとりで、居酒屋の旅へ」で推薦しているそうだ。店に問い合わせると、5000円のコースのみだが追加注文はできる、しかも予約が多いようで1か月前から受け付けているとのことで、敷居が高そうに感じ、それでなかなか足を向けられなかった。

たまたま行けそうなチャンスがあり、1か月ほど前、再度問い合わせると、いまは6000円(税別)とのことだったが、今後もなかなか伺えそうにないので、思い切って予約し行ってみた。カウンターが6席ほどと4人掛けテーブル4つの店で、間隔を広く取りゆったりしていた。わたしは1人なので、カウンターのはずれに通された。
まず飲み物のオーダーからで、やはり日本酒にした。メニューの銘柄は、陸奥八仙田酒、風の森、「本日の日本酒」だった。風の森は知らない酒だったので頼もうかと思うと「シュワシュワと発泡系なので、料理の初めからはよくないだろう」とのこと。すっきりした感じなら宮城の日高見がお勧め、とのことだったのでアドバイスに従った。普通は冷だが燗もできるとのことだったが、どんな料理かわからないので、まず冷にした。あとでHPで見ると石巻の酒、店の方のお言葉どおりすっきりした味だった。
コースは前菜に始まり、デザートまで6種類、以下料理の説明である。
まず前菜は蓮根餅と車海老、胡麻豆腐の桜味風、白魚と天豆合えものの3種、いずれも薄味だった。寒い日だったので、蓮根餅が温かく、救われた気がした。桜味風の桜の葉は、早く春が来てくれるとよいのだが、と思わせる香りがした。

刺身は宮城の活〆星カレイ、福岡のわら炙りブリ、茨城のヒゲソリ鯛漬けの3種。ヒゲソリ鯛はスズキの仲間で漁獲量が少ない。もちろんわさび醤油も付いているが、店の方の説明でわら炙りブリは塩で食べるとよく、ヒゲソリ鯛は辛子が合うといわれた。たしかにその通りだった。刺身に辛子は変な気もしたが、漬けなので味が濃いので、いい組み合わせで、わたしにはひとつの発見だった。

旬と定番は、タカマッシュ、ギバサ、ホタテ貝のクリームコロッケ、野菜の炊き合わせ、酒のつまみ、大きなカキフライ、ブリ大根、鮟鱇の彦三、濃厚イワシのつみれの9種から2種を選ぶ。何なのかわからないものもあった。たとえば「ギバサとは何か」と問うと、藻の料理だそうだ。わたしはホタテ貝と野菜の炊き合わせにした。野菜の炊き合わせは何か、と思ったが、サツマイモ、小松菜、かぼちゃ、シメジ、にんじんなど素朴な野菜で、赤く丸いのは何かと思い聞くと、プチトマトとのことだった。かぼちゃは一見、ブリか鮭にみえた。普通の野菜ばかりだが、出汁が特殊なようでうまかった。もしかすると、産地が特別な所という可能性もあるが。基本的に薄味だが、関西の薄味とはちょっと違う気がした。

主菜は、目鯛のうに焼きか石焼・和牛モモ肉で、わたしは牛モモにした。いい色に焼けていた。付け合わせの野菜はパプリカだった。ソースはタマネギベースの醤油のようだったが、うまいソースだった。好みで、ゆずコショウをともいわれた。ここで酒を焼酎お湯割りに切り換えた。銘柄は千亀女の芋、これもわたしは知らない銘柄だった。ネット検索すると鹿児島・志布志の若潮酒造の商品で、クセのないすっきりした飲み口だった。
焼酎は千亀女以外に黒ぢょかがメニューに書かれていたが、そのほかに「本日の本格焼酎」があり、いろいろセレクトして出しているようだ。

最後に、わら炙りサバごはんが出てくる(メニューには「カキごはんもあります」と書かれていた)これがうまかった。サバだけでなくごぼう、にんじん、などが入っている。おそらくこれも炊き込みに使った出汁がうまいのだろうと思う。サバごはんは器の底のほうに、少し入っているだけだったので「エッ、これだけ」と思ったら、写真右奥に少し写っている黒い土鍋があり、一杯目の2.5倍くらいの量が入っていて、わたくしは完食した。たしかに何品もおかずが出たのでそれで十分とか、酒をたくさん飲みごはんは入らないという客もいるのだろう。
そしてあら汁が付いているが、わたしは今日のコースのなかでいちばん満足した逸品だった。島根の干したノリを入れてあるとの解説があった。薄く切った大根とにんじんの浅漬けが香の物として付いている。これも上品な味だった。
デザートはガトーショコラ、黒糖ラムレーズンアイス、クリームチーズのみそ漬けから1品選ぶ。まだ焼酎が少し残っていたので、わたしはクリームチーズにした。濃厚な味なので、酒のつまみによかった。ここで温かいお茶を出してくれる。これも落ち着けてよかった。
飲み物はビール、ワイン、日本酒、焼酎、ウィスキー、ソフトドリンクのほか、梅酒とハイボールまであった。

価格からすると接待用かとも思ったが、この日の客はわたし以外に、アベック1組、3-4人連れのグループ3組だった。女性客が半分くらいでアルコール付きの店としては比率が高かったが、これは料理がうまい証拠だと思う。
また、上記の飲み物の選び方や香辛料に見られるよう、客への心遣いがすばらしい。文字だけ読むと押し付けがましいと解釈されるかもしれないが、実際の印象はまったく違う。気遣い、心配りが肌で伝わる。「親切」なのだ。そういえば酒を頼んだとき、出したあとしばらくして「お水も置いておきます」とコップを出しててくれた。チェイサーという意味だろう。水が1/3くらいに減ると、何も言わないのにつぎ足してくれた。
じつはこの店は6品の品が出てくる間隔が平均25分とかなり長い。その間にときどき水を含むと酔いが冷めるが、その繰り返しが結構心地よい。店によっては待たされるとイライラすることもあるが、この店はいろいろ見るところがあって飽きなかった。座った場所がカウンター席で、2人の料理人の立ち居がよく見える。けして悠々とした動きでなく、キビキビ働いておられる。それでいてぶつかったりすることはない。分担がしっかりしているからだろう。客席はカウンター内部より20cmほど低いようで、手元までは見えないのでどんな作業をされているのかはわからない。
正面の壁に料理道具の棚がある。フライパン各種、鍋各種の右に竹筒のようなものがたくさん置かれている。いったいどんな調理道具なのか、しばらく考えてもわからないので、思いきって聞いてみた。これは10月末から2月ころまで鮟鱇の包み揚げのメニューがあることもあり、そのときこの竹筒を2つ割りにしたものではさむための道具とのことだった。これは聞いてみないとわからないし、じつのところ食べてみないとどんな料理なのかわからない。四季折々出てくるメニューも変わるのだろう。

客への応対に加え、器やインテリアも素朴で暖かい 。焼き物の知識などまったくないので産地の見当がつかないが、備前焼や美濃焼のようにざらざらした質感で、彩度低めというのかくすんだ温かみがある色だ。また屋内の壁や机、カウンターも白黒が基調なのだが、同じように白でも真っ白でなく少しベージュがかり、黒も真っ黒でなくくすんだ黒でやはり温かさを感じさせる。店主の人柄が出ているのかとも思われる。
料理にも、客にも、心遣いが細やかで暖かいのがこの店の一番の特色なのかもしれない。
最後にこの店の創業をお聞きすると、今年で23年、ずっとこの場所で続いているそうだ。調べると、マンションの新築当時というわけではなく15-16年たったころからのようだった。かつて故・山岡久乃さんがこのマンションの上のほうの階に住んでおられたそうだ。
なかなか来られない店と思ったが、「いまはアラカルトも出しているので、ちょっと飲みにいらっしゃって」と言われた。酒と料理一品とあのサバごはんもいいかもしれない、と思った。珍しいものをいろいろ食し、心が温まった夜だった。

やまだや
電話:03-3544-4789
住所:東京都中央区築地7-16-3 クラウン築地
営業:18:00~23:00(コロナ禍の間は17時から21時ころと、時間が変わる)
   日曜・祝日休み

●アンダーラインの語句にはリンクを貼ってあります。


東京銭湯フェスティバルで見た二つの銭湯アート

2021年08月07日 | 銭湯・居酒屋

「コロナ禍の銭湯巡り・十思湯」の記事(6月1日)末尾に東京銭湯フェスティバル2020銭湯アートプロジェクトのことを書いた。都内4つの銭湯で実施しているこのイベントには各銭湯に1日だけ観覧開放日がある。銭湯には週1日休業日があるが、その日を利用しているようだ。
8月1日(日)午後、銀座の金春湯に行った。コロナ禍かつ日曜ということもあり、銭湯の周りを歩く人はきわめて少なく、このイベントをみにきた人だけの様子だった。

プロジェクションマッピングの作品そのものについては6/1の記事に書いた。ただ、今回作品解説をみて「日光や風、雲、さざ波、空気などが動いている」と書いたのは勘違いだったことがわかった。作者のグラフィックデザイナー大原大次郎さんは「言葉や文字の知覚を探る」プロジェクトを展開している方で、線や光は、「海、山、風呂、線、わ、ぬ」の「文字」を象形文字のように崩したイメージだったのだそうだ。
プロジェクションマッピングを投影し、それに合わせて銭湯ペンキ絵師・田中みずきさんがこの5月に壁に絵を描きあげたそうだ。女湯は普通の富士だが、男湯は海外の山で、聞くとエベレスト、回りの湖などは作者のイメージで描いたとのこと。
余談だが、NHKの朝ドラ「おかえりモネ」のヒロインは、勤務先に近い築地の銭湯に下宿していることになっている。しかし築地に銭湯はない。2016年5月までは存在したが残念ながら廃業した。いまロケで使われているのは大田区南雪谷の銭湯らしい。

金春湯の観覧開放日の前に、じつは7月9日(金)午後、代々木八幡の八幡湯でヤマザキマリさんの古代バラネイオンの湯を見た。解説によれば、バラネイオンとは運動施設とリラクゼーション施設が一体となった古代ギリシアの風呂施設のことで、この絵柄はオリュンポスの山からギリシアの女神たちが、地上でレスリングや円盤投げの運動をする男たちを眺めている光景だそうだ、ヤマザキさんのカラー原画をもとに、田中さんがモノクロで銭湯画を描き、目だけはヤマザキさんが来場して脚立に上がり、自分で入れたそうだ。男湯の右下隅にサインがある。

左端の男性は田中さんが書き足したもの。右端にヤマザキさんのサインがある
ヤマザキマリさんの「テルマエ・ロマエ」は映画でみたことがあるが、それ以上にラジオ深夜便のゲストで出演したことがあり、「この母にしてこの娘あり」と波乱万丈の人生を送っておられることを知り、興味をもった。本当は観覧開放日にヤマザキさんのライブ・イベントが企画されていたが、コロナのため中止になったそうだ。残念!

じつはこの八幡湯には1999年9月ごろから15年くらい月1で入らせていただいていた。ここに来るときは代々木公園の外周ジョギングとセットだった。
なつかしい店だが、普段見られないものをいろいろみることができた。まず一番は「女湯」である。ピンクのタイル貼りなので暖かく、かつ気のせいだとは思うが、小ぎれいに感じた。金春湯では、女性脱衣場にお釜型ドライヤーが置いてあることを知った。現役で稼働しているが、すでに製造はストップしているそうだ。それはそうだろう。
また牛乳石鹸のポスターはいろんな銭湯でみかけるが、通常、銭湯の室内は撮影禁止なので、はじめて撮ることができた。

金春湯のお釜型ドライヤ(左)と牛乳石鹸のポスター
ちょうどMXテレビの取材が入っていた。そのときは番組名もわからなかったが、「東京インフォメーション」という東京都提供の番組で「東京の大衆文化「銭湯」を世界へ発信」というテーマで7月17日ごろ放映されたようだ。
撮影中、すこしフロントで待つ必要があり、その間浴場組合のスタッフの方と短時間だがお話できた。
銭湯絵は湿気の多い過酷な環境での展示なので、数年に一度描き替える必要があるそうだ。そのせいかペンキ絵でなくタイル絵や陶板画にしているところや、そもそも絵がない銭湯も増えつつある。
銭湯絵は富士山ばかりではない。たしか八幡湯も、富山の県人会に頼まれたとかで、わたくしが通っていたころはトロッコ列車が手前を走る立山の絵だった。軍艦島の絵の銭湯もあるそうだ。いまはタイル絵も結構あり、たとえば銀座湯は和光や不二家など銀座の絵、入船湯は永代橋の浮世絵だと思う。
なお「東京銭湯三国志」の著者、落合の銭湯「松の湯」のご主人・笠原五男さんはもう亡くなられたことを知った。

八幡湯の近辺
☆八幡湯は休業日だったので、店の方にはお目にかかれなかったが、前日お母さんと息子さんに電話だけだがお話することができた。元気な声が聞けてよかった。またこの日の帰りに昔走ったコースを見に、少し歩いた。途中、覚えている店もあればすでに建て替わった建物もありで、時の流れを肌で感じた。

絵師・田中みずきさんは、日本に3人しかいない銭湯ペンキ絵師のうちの1人だそうだ。たまたま7月31日東京新聞夕刊「土曜訪問」で著書「わたしは銭湯ペンキ絵師」のインタビュー記事が出ていた。インタビューの場は神田の稲荷湯、そう皇居1周ジョギングのベース基地として有名な銭湯だ。記事によると父は新聞社の美術担当記者、本人は明治学院大学で美術史を学び「アートには展覧会で見る絵だけでなく、生活の場で楽しまれてきた絵がある」と考え、「近代の富士山のモチーフの銭湯ペンキ絵」という卒論を書いた。「自分も描いてみたい」と中島盛夫さんに弟子入り、修行しつつ大学院を修了、出版社社員やライターを経て8年前に独立とある。現在38歳。会社員時代に仕事帰りの銭湯で「大きな富士山に、怒られたり慰められたりしている気持ちになった」とあった。

☆アンダーラインの語句にはリンクを貼ってあります。


コロナ禍の銭湯巡り・十思湯

2021年06月01日 | 銭湯・居酒屋

東京では、新型コロナウィルス対策の緊急事態宣言が長引いている。免疫力を強化するため週3回の運動を続けているが、ジムもプールも閉鎖されていて(6月1日から再開)、仕方なく川沿いのジョギングを続けている。ジョギング後はたいてい銭湯に立ち寄り汗を流す。本当は銭湯上がりに立飲み居酒屋に立ち寄りたいところだが、そちらも閉鎖中だ。
同じ店ばかりではあきるので、今回久々に区内全銭湯巡りをした。2巡目だ。といっても小さい区なのと、土地代が高いのでたった8店しか営業していない。この5年くらいで残念なことに2店廃業した。
8店でも、なかには昔ながらの熱くて浴槽が深い銭湯、青山の清水湯の小型のような現代的な風呂もある。銭湯絵(タイルも含む)も絵柄は富士山とは限らず、永代橋や日本橋、銀座4丁目と多彩だ。
そのなかで、今回は小伝馬町駅西側にある十思湯を紹介する。前に来たのは3年くらい前のような気がしたが、調べてみると1年半ほど前のことだった。持続するコロナの異常事態で時間感覚までおかしくなったようだ(そのときにも記事を書いていた)。
この場所は1990年まで区立十思小学校があった場所だ。1878(明治11)年開校なので創立112年の歴史と伝統を誇りながら廃校したことになる。校舎を再利用し保育園、デイルーム、訪問看護ステーション、おとしより相談センターなどが入居する十思スクエアがあり、新築の別館2階に、銭湯と小ホール、3階から上には特別養護老人ホームなどがある。

それで、2階銭湯入口の右手にトイレ、左手にエレベータというちょっと変わったつくりになっている。またロッカー36と普通のサイズなのだが、カランが12しかない。手すり付きの浴槽への通路が確保されていたり、カランも完全セパレートで隣の人とのあいだに黒い石貼りの仕切りがあるからだ。それもレストランのアクリル板仕切りのようなものでなく、高さ90㎝、厚さ3㎝もあり、黒の御影石に似せた黒のパネル貼りのしっかりしたものだ。めいめいにシャンプーとボディソープのボトルが置かれ温泉風だ。
浴槽は熱い風呂、ジャグジー付きのふつうの風呂、水風呂の3つだが定員12にしてはずいぶんゆったり大き目だ。照明も大きな球の黄色の光で落ち着いている。全体的にぜいたくな作りだ。

コロナ禍なので、銭湯にもこんなポスターが
わたくしが行ったときは、ずいぶん混んでいて、帰りに受付の方に伺うと、たまたまこの日は近隣の銭湯2軒が休日とのことで、特異日だったようだ。なおこういう公共の場所にあるので、公設民営かと思ったら、やっている方は家族で浅草橋から通いで来られているそうだ。おそらく近隣に銭湯がないため、地域からの要望で2014年7月こういう銭湯が生まれたのだろう。

この光景も、銭湯というより学校に近い気がする
なおこの場所は、江戸時代は伝馬町牢屋敷、案内板によると江戸初期の慶長年間に設置され、1875(明治8)年に市ヶ谷に移るまで270年間存続し、入牢者は数十万人とある。広さも小学校跡地と公園だけでなく、通りを隔てた大安楽寺、身延別院の土地も含め2618坪(約8600平方メートル)もあり、旗本用の揚座敷、士分僧侶用の揚屋、平民用の大牢、百姓用の百姓牢、婦人のみの女牢の牢舎があった。身分別だったわけだ。死刑は代々山田浅右ヱ門家と同心たち、刑場の場所は大安楽寺(真言宗 1875年創建)で供養のための延命地蔵が祀られている。
その他、公園には江戸で一番古い時の鐘(江戸時代は日本橋本石町にあったが1930年にこの場所に移設)や吉田松陰辞世の碑、顕彰碑などもある。「十思」という珍しい名は、北宋の歴史書「資治通鑑」(1084)の天子がわきまえるべき十か条の戒め「十思の疎」からきているそうだ。歴史的に興味深い地である。

隣は花屋の金春湯
☆5月26日から東京銭湯フェスティバル2020が始まった。5月26日というのは「ゴー、ふろ」の語呂合わせとのこと。東京の4つの銭湯で、ヤマザキマリさんの古代バラネイオン、大塚いちおさんの「みいつけた!」などのアートプロジェクトを展示している。わたくしは銀座8丁目の金春湯でグラフィックデザイナー大原大次郎さんと映像デザイナー井口皓太さんのプロジェクションマッピング「湯覧線」をみた。
金春湯は、中央通りから1筋西・その名も金春通りの銀座8丁目、銀座金春ビルにある。同じビル内の隣は花屋さん、通りの向かいは伊勢由という呉服屋さんだ。
女湯は富士(上のほうだけ見えるようになっている)だが、男湯は峰がちょっと違うので、アルプスとスイスの湖(たとえばレマン湖)かと思った。あとで聞いてみるとエベレストとのこと。たしかにイムジャ湖ゴーキョ湖などがあるようだ。かつて赤富士が描かれていたが、最近書き換えたそうだ。
プロジェクションマッピングは日光や風、雲、さざ波、空気などが動いているような不思議な作品だった。3分間のルーティンの作品で常時流れている。ただし撮影は場所柄できず、1日だけ特別な日にできるようだ。
機会があれば、他の3つの銭湯にも行ってみたい。2020東京オリ・パラ用のイベントのようだが、本家のオリパラの行方は怪しい。しかしこのイベントは9月まで続けるようだ。

☆アンダーラインの語句にはリンクを貼ってあります。
  2022.7.8多面体Fに転載ずみ


コロナ禍の銭湯巡り・十思湯

2021年06月01日 | 銭湯・居酒屋

東京では、新型コロナウィルス対策の緊急事態宣言が長引いている。免疫力を強化するため週3回の運動を続けているが、ジムもプールも閉鎖されていて(6月1日から再開)、仕方なく川沿いのジョギングを続けている。ジョギング後はたいてい銭湯に立ち寄り汗を流す。本当は銭湯上がりに立飲み居酒屋に立ち寄りたいところだが、そちらも閉鎖中だ。
同じ店ばかりではあきるので、今回久々に区内全銭湯巡りをした。2巡目だ。といっても小さい区なのと、土地代が高いのでたった8店しか営業していない。この5年くらいで残念なことに2店廃業した。
8店でも、なかには昔ながらの熱くて浴槽が深い銭湯、青山の清水湯の小型のような現代的な風呂もある。銭湯絵(タイルも含む)も絵柄は富士山とは限らず、永代橋や日本橋、銀座4丁目と多彩だ。
そのなかで、今回は小伝馬町駅西側にある十思湯を紹介する。前に来たのは3年くらい前のような気がしたが、調べてみると1年半ほど前のことだった。持続するコロナの異常事態で時間感覚までおかしくなったようだ(そのときにも記事を書いていた)。
この場所は1990年まで区立十思小学校があった場所だ。1878(明治11)年開校なので創立112年の歴史と伝統を誇りながら廃校したことになる。校舎を再利用し保育園、デイルーム、訪問看護ステーション、おとしより相談センターなどが入居する十思スクエアがあり、新築の別館2階に、銭湯と小ホール、3階から上には特別養護老人ホームなどがある。

それで、2階銭湯入口の右手にトイレ、左手にエレベータというちょっと変わったつくりになっている。またロッカー36と普通のサイズなのだが、カランが12しかない。手すり付きの浴槽への通路が確保されていたり、カランも完全セパレートで隣の人とのあいだに黒い石貼りの仕切りがあるからだ。それもレストランのアクリル板仕切りのようなものでなく、高さ90㎝、厚さ3㎝もあり、黒の御影石に似せた黒のパネル貼りのしっかりしたものだ。めいめいにシャンプーとボディソープのボトルが置かれ温泉風だ。
浴槽は熱い風呂、ジャグジー付きのふつうの風呂、水風呂の3つだが定員12にしてはずいぶんゆったり大き目だ。照明も大きな球の黄色の光で落ち着いている。全体的にぜいたくな作りだ。

コロナ禍なので、銭湯にもこんなポスターが
わたくしが行ったときは、ずいぶん混んでいて、帰りに受付の方に伺うと、たまたまこの日は近隣の銭湯2軒が休日とのことで、特異日だったようだ。なおこういう公共の場所にあるので、公設民営かと思ったら、やっている方は家族で浅草橋から通いで来られているそうだ。おそらく近隣に銭湯がないため、地域からの要望で2014年7月こういう銭湯が生まれたのだろう。

この光景も、銭湯というより学校に近い気がする
なおこの場所は、江戸時代は伝馬町牢屋敷、案内板によると江戸初期の慶長年間に設置され、1875(明治8)年に市ヶ谷に移るまで270年間存続し、入牢者は数十万人とある。広さも小学校跡地と公園だけでなく、通りを隔てた大安楽寺、身延別院の土地も含め2618坪(約8600平方メートル)もあり、旗本用の揚座敷、士分僧侶用の揚屋、平民用の大牢、百姓用の百姓牢、婦人のみの女牢の牢舎があった。身分別だったわけだ。死刑は代々山田浅右ヱ門家と同心たち、刑場の場所は大安楽寺(真言宗 1875年創建)で供養のための延命地蔵が祀られている。
その他、公園には江戸で一番古い時の鐘(江戸時代は日本橋本石町にあったが1930年にこの場所に移設)や吉田松陰辞世の碑、顕彰碑などもある。「十思」という珍しい名は、北宋の歴史書「資治通鑑」(1084)の天子がわきまえるべき十か条の戒め「十思の疎」からきているそうだ。歴史的に興味深い地である。

隣は花屋の金春湯
☆5月26日から東京銭湯フェスティバル2020が始まった。5月26日というのは「ゴー、ふろ」の語呂合わせとのこと。東京の4つの銭湯で、ヤマザキマリさんの古代バラネイオン、大塚いちおさんの「みいつけた!」などのアートプロジェクトを展示している。わたくしは銀座8丁目の金春湯でグラフィックデザイナー大原大次郎さんと映像デザイナー井口皓太さんのプロジェクションマッピング「湯覧線」をみた。
金春湯は、中央通りから1筋西・その名も金春通りの銀座8丁目、銀座金春ビルにある。同じビル内の隣は花屋さん、通りの向かいは伊勢由という呉服屋さんだ。
女湯は富士(上のほうだけ見えるようになっている)だが、男湯は峰がちょっと違うので、アルプスとスイスの湖(たとえばレマン湖)かと思った。あとで聞いてみるとエベレストとのこと。たしかにイムジャ湖ゴーキョ湖などがあるようだ。かつて赤富士が描かれていたが、最近書き換えたそうだ。
プロジェクションマッピングは日光や風、雲、さざ波、空気などが動いているような不思議な作品だった。3分間のルーティンの作品で常時流れている。ただし撮影は場所柄できず、1日だけ特別な日にできるようだ。
機会があれば、他の3つの銭湯にも行ってみたい。2020東京オリ・パラ用のイベントのようだが、本家のオリパラの行方は怪しい。しかしこのイベントは9月まで続けるようだ。

☆アンダーラインの語句にはリンクを貼ってあります。