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大前研一・富裕層の増税 “金持ちの心理”をもっと分析すべき!

2013-01-28 | 報道・ニュース
 
 富裕層の増税 “金持ちの心理”をもっと分析すべき!

2013.01.27

連載:大前研一のニュース時評

 

税制改正に向けた3党協議の初会合に臨む自公民の税制実務者=16日【拡大】

 自民、公明両党は24日、2013年度の与党税制改正大綱を決定した。所得税の新たな最高税率は45%、適用対象は課税所得4000万円超(現在は40%、1800万円超)、相続税も最高税率を遺産6億円超に55%(現在は遺産3億円超に50%)とした。

 金持ちに重税を課すというのは、気持ちのいいものだ。しかし、効果は薄い。というのも、金持ちは重税からの逃れ方を熟知しているからだ。

 巨万の富を築き、昨年の米国大統領選の共和党候補者にもなったミット・ロムニー氏は、夫婦で慈善事業に多額の寄付をして税法上の特典を受け、所得税率を14%に抑えた。こういった話はどこにでもある。

 今回、所得税の最高税率の対象を課税所得4000万円以上としているが、そのとき何が起こるかは容易に想像できる。給料は4000万円を超えないようにして、その代わり、ゴルフの会員権や送り迎えの車などに充てるわけだ。また、時間をずらして退職金の中に含ませることもできるし、企業年金に繰り入れることもできる。だから、富裕層の増税だけではあまり意味がない。

 現在、スイス、イタリア、スウェーデン、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、香港、マレーシア、タイ、ベトナム、インドネシアなど主要18カ国は相続税がゼロだ。私もゼロにするのがいいと思っている。

 相続税を高くするのなら、消費を促進する政策と組み合わせるべきだろう。日本では生前贈与ができるが、親が亡くなったときに精算しなくてはならない。そこで高額の相続税がかかることを恐れて、もらったはいいがほとんど使わないのが現状だ。ならば、生前に相続した場合、使った分の領収書をそろえて精算すれば、その分を親が亡くなったときに相続から引くようにしたらどうだろうか。

 生前に5億円を贈与したとすると、ポルシェを買って、家を建てて…と、とにかく親の生前に使うだけ使う。それで遺産が控除後1億円だったら、その1億円に対して55%適用する。こうなると、消費はバカみたいに伸びるはずだ。

 税制調査会のメンバーは、政府税調も自民税調も庶民の目線から金持ちいじめをするが、金持ちの心理を知らなさすぎる。

 インドネシアのスリ・ムルヤニというヨドヨノ政権の1期目の財務相が「今後きちんと納税すれば過去の脱税は罪に問わない」という政策を打ち出したら、地下や海外に隠していた財産が表に出て、国庫にお金が押し寄せた。また、ロシアのプーチン大統領が一律13%のフラット税制を導入した結果、脱税が減り、地下経済も把握されて税収が大幅に増えた。プーチンににらまれるよりは13%払うほうがいいという金持ちの心理をうまく突いたのだ。レーガンもサッチャーも税率を下げて税収を増やしている。金持ち心理というのはそういうものなのだ。

 日本はいつも制度をちょっとだけいじって金持ちから奪い取ることばかり考えているが、そんなやり方では経済的効果は薄い。財務省も少しは高齢者や金持ちの深層心理を分析すべきだろう。

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