【第29回】 2012年8月31日ザイ・オンライン編集部
理事長の報酬額トップは産業技術総合研究所の2296万円 ――― 。
理事長の報酬はすべての法人で1000万円を上回る高額であることがわかった。
2000万円以上の超高給取りがゴロゴロの独立行政法人
2011年度の独立行政法人の役員報酬額が明らかになった。
まず、下図をみてほしい。
これは独立行政法人の理事長の報酬が高額な上位20法人を示したものだ。
独立行政法人とは、かつて中央省庁傘下の特殊法人などが一連の行政改革で看板を掛けかえた、一定の行政サービスを行う法人組織のこと。
わかりやすく言えば、官僚の天下り組織の代表格だ。
2011年の独立行政法人の理事長の報酬トップは、経済産業省所管の産業技術総合研究所で、報酬額は2296万円。
以下、国立病院機構の2277万円、日本貿易保険の2229万円、年金・健康保険福祉施設整理機構の2221万円と続き、上位16位までが2000万円を超える高給取りだ。
理事長の報酬はすべて独立行政法人で1000万円超
すべての独立行政法人の理事長の年収額は4ページに掲載してあるので、参照してほしいが、国立大学などを除く97法人すべてで、理事長の年収は1000万円を超えた。
また、各理事長の前職をみてみると、産業技術総合研究所が民間銀行職員、国立病院機構は国立病院の理事長、日本貿易保険は経済産業省の官僚、年金・健康保険福祉施設整理機構は大学病院の教授が務めている。
国民からの批判をかわすための策略なのか、このように理事長には所管官庁のOBではなく、外部から人材を招聘している例が多い。
その分、一般の理事は官僚OBががっちり固めている。
では、その理事たちの報酬額をみてみよう。
産業技術総合研究所は理事もトップで2冠達成
上図は、独立行政法人の理事長以外の一般の理事の報酬が高額な上位20法人だ。
理事長が1位だった産業技術総合研究所は、理事も1859万円で2冠を達成。
以下、総務省所管で “IT社会の健全な発展に貢献する活動” なるものを行っている情報処理推進機構が1822万円。
原子力関連の独立行政法人も超高給取りだった
さらに、3位は原子力の安全確保に関する基盤的業務を行うとされる経済産業所所管の原子力安全基盤機構。
4位は、原子力に関する基礎的研究や燃料サイクルの確立などの技術開発を行う、こちら文部科学省所管の日本原子力研究開発機構。 原子力発電関連が3位、4位を占めた。
この2つの独立行政法人の理事の構成をみると、理事長はどちらも前職は国立大学の教授が務めている。
しかし、一般の理事は原子力安全基盤機構が、3人いる理事のうち2人が経済産業省OB。残る1人も外郭団体のOB。
日本原子力研究開発機構は、副理事長が関西電力のOB。7人いる理事のうち6人は文部科学省および省庁の外郭団体のOBがしめている。
典型的な原子力ムラと言えるだろう。
では、すべての独立行政法人のすべての理事に対して、毎年支払われている報酬額の総額はどの程度になるのだろうか。
垂れ流した人件費の総額は63億円!
大きい図になってしまったが、下図はすべての独立行政法人で、2011年に理事長を含むすべての理事に支払われた報酬額だ。
トップはやはり産業技術総合研究所で、報酬の総額は1億9658万円。
1位から、16位の農林漁業信用基金までが、理事の報酬が1億円を超えた。
そして、全97法人全体の総額は61億4313万円。月額換算で5億1193万円を費消している計算だ。
最後に、すべての独立行政法人の理事長と理事の年収を次ページにしめした。
上図は、すべての独立行政法人の理事長と理事の年間報酬額を、理事長の報酬額が多い順に、一覧にしたものだ。
国際協力機構(JICA)や、宇宙航空研究開発機構(JAXA)や、フラット35の住宅金融支援機構など、よく耳にするものもある。
一方で、駐留軍等労働者労務管理機構や、酒類総合研究所(所管:財務省)、日本万国博覧会記念機構(所管:財務省)など、どのような業務をしているのかもわからない独立行政法人も多い。何をしているかわからなくても、報酬はいずれも高額だ。
消費増税が決まったいま、独立行政法人を含めた行政改革と、無駄の削減に強い関心をいだくべきだろう。