日本経済新聞 WEB刊
中国防空圏問題で試される日米の結束 2013/12/4付
中国が尖閣諸島を含めた東シナ海の上空に防空識別圏を設けた問題は、アジアにとどまらず、世界の懸念を招いている。
こうしたなか、米国のバイデン副大統領が来日し、安倍晋三首相らと会談した。両首脳は会談後の共同記者会見で、防空圏の設定をそろって批判し、東シナ海の現状を力ずくで変えようとする中国の動きに対し、共同で対処する姿勢を鮮明にした。
バイデン副大統領は、このままでは不測の事態が起きかねないとも批判し、日中に危機管理の枠組みが必要だと訴えた。今週、訪中した際に直接、中国首脳にこうした懸念を伝えるという。
日米韓をはじめとする関係国が結束し、中国に繰り返し、懸念を伝えていくことが肝心だ。中国は防空圏設定の正当性を主張しているが、各国からの圧力が強まれば、その運用には慎重にならざるを得ないだろう。
ただ、オバマ政権の対応には、不安もつきまとう。
中国の防空圏は認めないが、そこを通過する米民間航空各社が中国側の求めに応じ、飛行計画を出すことは認める――。米国務省は先週、こんな趣旨の声明を出した。安全を心配する各社に配慮したとみられる。
こうした対応は日本側とは真っ向から食い違う。日本政府は中国の防空圏を既成事実にしないため、飛行計画を出さないよう国内各社に指示している。日本の問い合わせに対し、米政府は飛行計画の提出を「指示した事実はない」と説明したという。
先月下旬にはライス大統領補佐官(国家安全保障担当)が、米中の「新たな大国関係」の構築に意欲を表明。米中で世界を仕切るG2路線を、容認するかのような発言をした。
バイデン副大統領は安倍氏との共同記者会見で、日本への防衛義務を揺るぎなく履行すると約束したが、中国に防空圏の撤回を迫るとは言明しなかった。腰が引けている印象を与えれば、中国は強気になり、かえってアジアの安全が損なわれる危険は増しかねない。バイデン氏は訪中時に、決然とした態度を示してもらいたい。
もっとも、言葉より大事なのは目に見える日米同盟の強化だ。安倍首相は会談で、米軍普天間基地問題の解決に向け、強い決意を伝えた。日本側が取り組むべき宿題も少なくない。