the Saber Panther (サーベル・パンサー)

トラディショナル&オリジナルの絵画芸術、化石哺乳類復元画、英語等について気ままに書いている、手書き絵師&リサーチブログ

最古のチーター発見

2008年12月31日 | ネコ科猛獣の話

Ancient Fossil Suggests Origin of Cheetahs 
Live Science (December 30, 2008)


中国の甘粛省で、220~250万年前の古いチーター、Acinonyx kurteni のほぼ完全な頭骨が発見された

http://i.livescience.com/images/081229-cheetah-skull-02.jpg
(発見された Acinonyx kurteni の頭骨。この学名は古脊椎動物学の大家であった、ビョルン・クルテンにちなんで名付けられた。)

副鼻腔が非常に大きく、額が盛り上がってドーム状になっている点(時速100kmを超す高速で獲物を追跡する際に、多量の空気を取り入れるための適応)などチーターらしい特徴を有しているが、約220万年前のAcinonyx pardinensis(ジャイアント・チーター / ヨーロッパ)や約250万年前のAcinonyx aicha(北アフリカ)、さらに北米のミラキノニクス属と比較しても、歯の形態は原始的なものだという。

"...so running fast and becoming really good at it was one of the first steps in cheetah evolution. Later, the teeth changed as well."
「まず高い走行性を獲得することがチーターの進化における最初のステップのひとつであり、歯の形態の変化はその後に起こったのです。」

Per Christiansen of the Zoological Museum in Denmark

 


(ジャイアント・チーター)

L. Hunter(Executive director of PANTHERA organization) によると、最も原始的なチーターの化石がアジアで発見されたことから、すべてのチーターおよび、チーター様の種属はユーラシア/アフリカに起源をもち、その後ミラキノニクスが分化して、北米へと進出した可能性が出てきたという。 

一方で、古生物学者のT. Rothwell(The Paris Hill Cat Hospital)はこれを一大発見としながらも、この化石のみでチーターの新種と断定するには、データが不十分だとしている。

新発見のAcinonyx kurteni を加えると、チーター属 / ミラキノニクス属には合計で6種が知られることになったが、このうち生き残ったのは、現生チーターのAcinoyx jubatus のみ。高速追跡に高度に特殊化したネコ科であるチーターは、生態環境が変化した際に、絶滅が促されやすい動物だということが言えるかもしれない。現代のチーターも、人間活動の悪影響のために深刻な絶滅危機に瀕しており、保護の一層の強化が求められている。


最新の画像もっと見る

3 Comments

コメント日が  古い順  |   新しい順
最古のチーター (yuyu)
2014-06-12 18:53:03
管理人様お久しぶりです。
私は最近知ったのですが、2012年にこの最古チーターの論文が取り下げられたそうですね。
2009年から既に言われていたようですが、この頭骨は偽物ということが判明しました。なんだか残念。
ところで、ジャイアントチーターはかなり前からいたようですが、ミラキノニクスはどれくらい前から、また、何種類ぐらいいたのでしょうか。
返信する
Unknown (サーベル・パンサー)
2014-06-26 01:51:39
yuyuさん

大変返信が遅れました。gooのメールサーヴィス停止に伴い、メールへの連動表示がなくなったこともあって、コメントの確認が遅れました。了承ください。

お知らせいただき、ありがとうございます。
件の「古チーター」の発表に関わった主任格の研究者の一人とは、幾度かメールにてやり取りし、化石ネコに関して懇切丁寧な助言等賜った経緯があります。それだけに、この様な展開に至ったことは残念ですし、遺憾にも思います。にわかには、信じ難いですが。
御本人の言葉も、聞いてみたいという思いがあります。


さて、アメリカンチーターことミラキノニクス属は、初期のMiracinonyx inexpectatusと、後期のMiracinonyx trumani(トルーマンチーター)の2種に分けられるのが定説です。

M.inexpectatusは鮮新世の末尾には出現していた模様ですが、異説もあります。その形態にはクーガー的な要素も認められ、しばしば「ヴァーサタイル型」であると評されますが、爪は伸縮可能で、クーガーのように、木登りやグラップリングにも優れていた模様です。

トルーマン・アメリカチーターの出現は、北米での 「開けた生態系」の拡大や、機動性に優れる草食獣の増大時期と合致しますが、それらを背景に、現生チーター(Acinonyx)とほぼアイデンティカルな形質に至っていました。

いずれも現生チーターより大柄であったとされますが、初期種の大きいのは、90kg超に達したようです。

私はさらに、2種をつなぐ過渡期の種類が他に分類される可能性があると考えます。

次は始新世の記事を-手こずりましたが-もうじきアップ致します。そっちのほうにもコメント、情報交換等賜われると、幸いです。
返信する
Unknown (サーベル・パンサー)
2014-06-28 23:59:10
※補足

本記事の内容は、ひとまず度外視していただきたいと思います。;

アメリカチーターとクーガーは共通祖先を持ち、両者の分岐は、一説に300万年前頃の北米で起こったと考えられています。問題は、チーター属(Acinonyx)の進化も同様に、Puma-Miracinonyx 系統から派生したものなのか否か、ということですね。

これについて肯定派の主張も根強く残っていますが、遺伝子と形態学両面からアプローチした分析(Barnett et al. 2005)がチーターとアメリカチーターとの近縁性を否定して以降、主流をなすは否定説の方であると認識して、よろしいかと思います(もちろん、今後どう変転するかもわかりませんが)。

両者一見したところソックリで、ほぼ同質の形態機能を共有しているのは、進化系統よりも収斂進化に帰して説明すべきということでしょう。

否定説に立った場合、さらに古い鮮新世後期のアフリカやユーラシアにて、古チーター属の形跡が既に認められるという、旧来の説とも矛盾しません。

チーター属の北米起源の信憑性は低くなったにせよ、実のところチーターの起源も、クーガーに似た形態の祖先(未発見)に遡ると推測されています。

ややこしいですが、チーターとアメリカチーターが直接祖先を共有してはおらずとも、Acinonyx、Puma-Miracinonyx が遺伝距離的に他のネコ科種に対するよりも近い関係にあるとは、言えそうです。その意味で、大きくシスタークレードとして括ることも、可能なのでしょう。

そういえば、近年の分類見直しを経て、ジャガランディーもPuma(ピューマ属)に含まれる運びとなっています。
返信する

post a comment