「宣伝会議賞」というキーワードで、Googleやyahoo!から検索して、来てくださっている方が多いようで、ありがとうございます。
宣伝会議賞、中高生部門の課題が発表になり、「コピーってどうやって書くの〜?」という方もおられますよね。
そこで、せっかく検索してくださって、お土産なしでは申し訳ない!
現役コピーライターで、宣伝会議賞で3回受賞している経験を活かし、「コピーの発想法・私の場合」を紹介したいと思います。
コピーが好きすぎて、かなり長文になりました。
「エッセンスを知りたい!」という方は、最初の部分はだあ〜っと読み飛ばし、5の実例を参考にしてください。
「コピーの発想の仕方を順序立てて、知りたい」「スランプになってしまって…」という方は丁寧にじっくり読んでみてください。
きっと、アイデアの泉の蛇口が開くはずです!
1.まずは、課題を選びます。
選び方は色々とありますが、昨年の第55回「宣伝会議賞」の一次審査を通過した牛乳石鹸共進社の場合を例に挙げて紹介します。
2.課題で、企業が何を求めているかを確認します。
昨年の課題は、「カウブランド赤箱」をフラッグシップブランドとして持つ牛乳石鹸共進社株式会社の企業キャッチフレーズ。
募集内容には「牛乳石鹸という会社の価値を伝えるリズム感のあるキャッチフレーズを募集します」とあり、「良いキャッチフレーズを全く新しい『牛乳石鹸の歌』を作る時のメインフレーズにすることも考えています」とも書かれています。
ん! これは、ほかの課題とは書き方を変えなければいけません。
注意しないといけないのは、「歌を作る時のメインフレーズにすることも考えています」という点です。
コピーの書き方と、歌詞の書き方は違います。コピーは、俳句や短歌とも違います。
俳句は五七五、短歌は五七五七七などの形式でリズムを出しますが、コピーの場合はリズムを出すと、スルッと読み流されてしまう可能性があるので、リズムを出すよりも、引っかかりがあったほうが印象に残ります。
ですが、今回は歌詞にする可能性があるということなので、リズムを出す必要があります。ただ、そのことは頭の片隅に置いておく程度にとどめます。
協賛企業が何を求めているかを確実につかんでおくことは大切ですが、あまり事前の情報に縛られると、発想が膨らまなくなるためです。
★検索する前に大切なこと
「さぁ、コピーを書こう」というとき、私が大切にしているのは、自分の中に眠っている、潜在意識の底にある情報を見つけに行くことです。
たいていの人が、課題を見ると、すぐにパソコンやスマホで検索しに行くと思います。
現に、宣伝会議の課題の多くが、資料として自社の公式サイトを参考にしてくださいと書かれています。
牛乳石鹸の場合も、「現在の『牛乳石鹸の歌』は『牛乳石鹸ミュージアム』で検索し、当社HP内でご覧ください」とあります。
ただ、ここで慌てて見に行かないことが肝心です。
コピーを書くのは料理を作るのと同じ。
すぐに検索するのは、いきなり何も考えず、買い物かごを持って、家を飛び出すようなものです。
献立を考えずにスーパーに行って、「今晩のおかず、何作ろう…」とほおづえをついて悩んでいる主婦のようになってしまいます。
3.記憶をたどり、思い出した言葉を紙に書く。
自分にしか書けないコピーを書くために、自分の記憶をたどっていくのが私のやり方です。
幼い頃まで記憶をたどり、思い出したことは、断片的な言葉のまま、どんどん紙に書き出していきます。
このときはまだ、「コピーにしよう」と思わなくて大丈夫です。
また、ここでいきなりパソコンで書くと、アイデアが萎んでしまうか、書けた気になって、「数本書いて終わり」になりかねないので、ノートかA4の用紙に書くのがオススメです。
ノートは昨年まではダイソーのリングノートを使っていました。
例えば、私の場合、牛乳石鹸との思い出をたどっていくと……、
・父親がタオルで包んで、プクプク泡を作ってくれたなぁ。
・昔はボディシャンプーなんかなくて、石鹸だったなぁ。
・小さくなった石鹸は、新しい大きな石鹸に付けて、親子の亀みたいになってたなぁ。
・初めての子をお風呂に入れるとき、湯船に石鹸を入れてしまって、お湯が白くなっていたなぁ。
ということが思い出されます。
4.商品やサービスに関して、自分が感じていることを書き出します。
・香りが落ち着く。
・肌がしっとりする。
・子どもたちにも使ってほしい。
・A Iなどの世界になっても残ってほしい。
・一日の終わりにほっとする。
など、商品と自分との関係を紐解いていきます。
これがコピーの核となります。
直接、言葉としてコピーに現れなくても、根底にある考え方として、自分の経験に基づいた言葉を引っ張り出す行為は重要です。
「自分の言葉で書く」ことによって、オリジナリティーのあるコピーになります。
さらに、「潜在意識の底に眠った記憶をたどる」ことにより、ほかの人が見たときに、「なるほど! 」「そう言えば、そうだよね」という気づきのあるコピー、共感を得られるコピーが書けます。
5.思い出をもとに「コピーらしきもの」をドンドン書いていきます。
ここでもまだ、コピーになっていなくて構いません。
例えば、
【幼い頃の父親との思い出から】
・愛情たっぷり、泡立つ石けん。
・愛情石けん、牛乳石けん。
・いつか想い出に変わる石けん。
【昔は石鹸しかなかったという発想から】
・22世紀にも、やさしい石けんを。
・石けんのロングセラー。
【肌にやさしいという発想から】
・気持ちまで、うるおう。
・お母さんみたいな石けん。
・心もうるおう、やさしい石けん。
・やさしさと、うるおいと、やすらぎと。
・肌のお守り。
・肌の守り箱。
・やさしい箱があったとさ。お肌思いの箱だとさ。
・やすらぎの香り、牛乳石けん。
・やさしさで、洗い流します。
・すべてを洗い流す。
・失恋にも、よく効きます。
・洗われるのは、ココロです。
・ようこそ、お肌の悩み相談室へ。
【恋愛に効きそうという発想から】
・あの人は、私じゃなく、私の肌に恋してる。
【赤箱というネーミングから】
・赤白付けたい
・垢v s赤
【「牛って…」という発想から】
・うちのお風呂には、牛がいる。
【1日の終わりは、牛乳石けんの香りと潤いに癒されたいという発想から】
・おかえり、おやすみ、牛乳石けん。
・やさしい石けんで、素直な肌に。
ある程度出し切ったところで、
6.公式サイトの情報を見に行きます。
「へぇーっ、知らなかった」という情報は何よりの宝。新しく知り得た情報をもとに、コピーらしきものを書いていきます。
例えば、
【原材料はごくシンプルという情報から】
・よけいなモノはいらない。
・プラスもマイナスもしない。
【牛乳石けんのミルク成分とは、実はミルクバターのことという情報をもとに】
・バターも入ってます。
・実は、バターでもよかった。
・肌はバターで決まります。
【社名に商品名が入っているなぁという気づきから】
・お肌と一番対話している会社です。
【グリセリンや、天然油脂の中の良質な成分が含まれているので、保湿効果が高いという情報から】
・肌を夢中にさせる石けん。
・大ファンになりました、自分の肌の。
・肌にやさしくすると、肌はちゃんと恩返ししてくれる。
・肌への恩返し、牛乳石けん。
・シンプル イズ 牛乳石けん。
・なめらか、清らか、きめ細やか。
・くっつくようなしっとり肌へ。
・しっとりさん、もっちりさん、すべすべさんの肌は牛乳石けん。
・やさしい石けんで、夢肌へ。
【まるで食品を製造するように、じっくり時間をかける「釜炊き製法」で作られるという情報から】
・食べたくなっても正解です。
【原料は、ステーキを焼くときに使われるのと同じ食用原料となる牛脂と、ヤシ油、カセイソーダ、食塩という情報から】
・口にたれても、大丈夫。
・赤ちゃんの口に入っても、大丈夫。
・ママの肌は、赤ちゃんがなめても大丈夫。
【へぇ~、青い箱もあるんだ。じゃあ、赤い箱を際立たせなきゃという発想から】
・赤い箱があったとさ。中から白い牛が出てきたとさ。
・赤い箱があったとさ。中からミルクの香りがしたんだとさ。
・赤い箱があったとさ。中にはしあわせが入っていたんだとさ。
などなど、どんどん書き出していきます。
7.ボディコピーを書いてみます。
宣伝会議賞はキャッチコピーだけで勝負する賞ですが、思い浮かんだ「コピーらしきもの」をもとに、ボディコピーを書いてみます。
キャッチコピーが一行でビシッと内容を言い表す言葉なのに対し、ボディコピーは文字数決まっていませんが、私の場合はだいたい200~300文字くらいで書きます。
「どうして、そのコピーらしき言葉が浮かんできたのか」
「キャッチコピーで何が言いたかったのか」
「このキャッチからどんな世界が広がっていくのか」
「商品やサービスを買ってもらうために、どのように落とし込んでいくのか」
ストーリーを展開していきます。それによって、上記の思いつきで出てきた「コピーらしき言葉」がなぜ浮かんだのか、何が言いたいのか、ボンヤリしていたものがクッキリ見えてきます。
「ボディコピーの書き方がわからないよ~」という方は、図書館で「コピー年鑑」や「物語のある広告コピー」、「何度も読みたい広告コピー」などの本を参考にしてみてください。
8.いよいよ、コピーの形にしていきます。
例えば、赤い箱を際立たせようという発想から出てきたコピー。これをコピーの形にしていきます。
「赤い箱があったとさ。中から白い牛が出てきたとさ。」
↓
「赤い箱があったとさ。中からミルクの香りがしたんだとさ。」
↓
「赤い箱があったとさ。中にはしあわせが入っていたんだとさ。」
↓
「赤い箱があったとさ。白い幸せの箱だとさ。」
左ページの真ん中あたりに、脳の足あとが見えます。
9.形を整えて、ようやくコピーが完成!
上記のような流れで出てきた「コピーらしき言葉」の形を整えます。
私の場合は、
・ムダな言葉がないか
・漢字、ひらがな、カタカナの開き方はバランスがいいか
・絵が浮かぶか
ということに重きを置いて、推敲します。
10.完成して応募し、一次選考を通過したコピーは…。
宣伝会議賞にひとつの課題で応募できるのは、一人50本まで。
上記のコピーのほとんども応募しましたが、最終的に残ったコピーは…、
「真っ赤な箱があったとさ。
真っ白な幸せはこぶ箱だとさ。」
最初にあった、歌詞になるかもしれないということを意識して作りました。
「幸せ」という言葉には、幼い頃、父や妹とお風呂で遊んだ想い出、長女が生まれて緊張しながらお風呂に入れた想い出、社会人になって一日の終わりに石けんで体を洗ったときの想い出など、いくつもの体験がギュッとつまっています。
あ、牛乳やから、「ギュッと」とかちゃいますよ。
コピーはたくさんの人を元気に、幸せにしてくれます。
そして作り手の人生も豊かにしてくれます。
より多くの方が、コピーを書く楽しさに出会えますように。
宣伝会議賞を目指すみなさん、ラストまで一緒に頑張っていきましょう!
ここは、コピーや絵本の文章を書いている
大野さとみ(おおのさとみ)のブログです。
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