サンズ・トーク

命運転変する九段会館

九段会館は、靖国通りの九段坂下にある。
私がまだ現役時代だったころには、ここでホールや会議室を借りて、よくイベントをやったものだ。
でも、思えば、日本の昭和史のなかで、随分、時流に翻弄された建物だったのだ。

2年前の3月11日、東北大震災があり、観光専門学校が卒業式をやっているところに天井が崩落して、死者2名、重軽傷26名を出した。
被害者とのあいだで訴訟が続いている。

今、ここを通りがかって見ると、閉鎖されている。
日本遺族会が国から借りて九段会館をやっていたそうで、営業を断念、廃業してしまったのだ。



躯体は、見た目ちゃんとしているみたいだ。



クローズされた入口。

思えばこの会館、誕生して以来、有為転変、数奇な運命を辿ってきたものだ。

昭和9年、国の軍人会館として建てられた。
昭和11年、226事件。
高橋是清大蔵大臣ほか高官が青年将校らに殺害された事件では、ここに戒厳司令部が置かれて、暴徒が鎮圧された。
昭和20年、太平洋戦争敗戦により、GHQに米軍宿舎として接収されていた。
昭和28年、日本遺族会が国から賃借して、ホテル、会館営業を始めたのだ。

そしていま、クローズされている。
開館以来の、時々の人の心の奥にある感情やわだかまりを見つめ続けてきた会館には違いない。
坂の上にある靖国神社も、日本人が崇敬している心に中国、韓国が反発している。

私は、しばし、扉の前に立ち尽くすばかりであった。

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