NPO法人 三千里鐵道 

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セウォル号惨事から二年・・・ 三千里鐵道として横断幕を掲げました

2016年04月27日 | NPO三千里鐵道ニュース
2014年4月16日、決して忘れることのできないあのセウォル号惨事。

最初は誰もが単なる海難事故だと思いました。

それがあのような大惨事になるとは、誰も想像できませんでした。

2周忌となる今年4月16日三千里鐵道として、安山市の合同焼香所付近に横断幕を掲げました。

『セウォル号 真相究明できなければ大韓民国も沈没するだろう』

  セウォル号を記憶する在日同胞たち NPO法人 三千里鐵道


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2年前に在日同胞107名の連名で出されたハンギョレ新聞意見広告の文章を再掲します。

2014年5月31日付ハンギョレ新聞に掲載された在日同胞100人署名入り意見広告(最終面全面)




在日同胞から国内同胞への呼訴文

私たちは韓国が何よりも人の命と人権を大切にする国になることを願います。


4月16日、珍島沖で起こったセウォル号沈没惨事は、これまでにもたびたび発生していた韓国の水難事故でも最大規模のものでした。 304名もの死亡者・行方不明者のうち大半が、『船室でじっと待て』という館内放送を信じて避難しなかった高校2年生であったことが、私たちにさらに大きな衝撃と悲しみをもたらしました。 
死を目前とした高校生たちは、どれほど悔しく、恐ろしく、苦しかったでしょうか。 国内同胞の皆さんがそうであったように、私たち海在日同胞も、それを思うと、胸がつぶれ、天を仰ぎました。

今回の惨事では、船長を始めとする乗組員の職務放棄、乗客を放置したまま真っ先に逃げたことが大きくクローズアップされていますが、それだけが問題なのではありません。それは、私たち誰もが知っていることです。

船長を始めとした乗務員の大半が非正規職員であった… ここ数年の過度な規制緩和によって、老朽化したフェリーの航海延長を許し、定員増員のための無謀な改装を許した… 最大積載量の3倍もの貨物を積載し、しかも固定が不十分であった… 安全航海のために必要なバラスト水が基準の4分の1しかなかった… 積載されていた救命ボートがほとんどすべて不良だった… 海洋警察による救助の初動が遅れた… 高校生全員救助などというとんでもない誤報があった… 海洋警察、安全行政部、海洋水産部などの関係部署が指揮系統の統一もなくバラバラな対応をした… 海洋警察の艦艇に、救助用の装備がなかった… 海洋警察が予算をゴルフ場建設などに流用していた… 韓国軍の海難救助艦統営号の派遣が見送られた… 救助活動において民間会社が優先された… 公営放送KBSを始めとしたマスコミはその報道の本分を忘れ、不正確で歪曲された報道を垂れ流し、犠牲者やその遺族の心を踏みにじった… 政府に怒り抗議する犠牲者の家族たちを暴徒のごとく扱った…

セウォル号沈没惨事は、事故発生から救助の失敗に至るまで、天災でもなく、船長以下の乗務員の過失のみによるものでもなく、徹頭徹尾、清海鎮海運と政府行政機関、そしてマスコミなどによる、起こるべくして起こった人災だったのです。

今、政府は経済効率のみを最優先し、企業は利潤のみを最優先し、社会には利己主義がはびこり、人々は私利私欲に走る ― 拝金主義の国に堕落してしまったのでしょうか? 自分に与えられた仕事に誠実に取り組むことを忘れ、責任を負うことを回避し他になすり付けることに汲々とする姿は、指導的な地位にある人々において特に顕著であると言わざるを得ません。
その一方で人の命は軽んじられ安全はないがしろにされています。 労働者の人権は無視され、子どもたちはこの過酷な社会に適応するよう強制されています。
セウォル号沈没惨事には、現代韓国が抱えているこのような深刻な社会的病理が凝縮していると言わざるを得ません。 そしてそれは私たち、今の社会を作り上げてきた既成世代の責任なのです。 ソウル市庁舎に『미안합니다』(ごめんなさい)という大きなたれ幕が掲げられましたが、それはまさに私たちの心を代弁しているものと思います。
犠牲となった人々を正しく記憶し、この深刻な社会的病理に切り込むことなしには、第2、第3のセウォル号事件が起こるのです。それは、今回犠牲となられた人々を再び殺すことを意味します。

韓国の建国思想は『弘益人間』であり、我が国が古来より『東宝礼儀の国』と称されてきましたが、私たち在日同胞も、そのような国を取り戻すことを心から願っています。
そのためには、何よりも人の命と人権を大切にする国にならなければならないと思います。
国内同胞の皆さん、憲法第一条をもう一度かみしめて下さい。
「大韓民国の主権は、国民に存し、すべての権力は、国民に由来する。」 
国内同胞の皆さんが、セウォル号沈没惨事の犠牲者の前に厳粛に立ち、深刻な社会的病理におかされた我が国の社会を変革するために、主権者としていかなる行動をとるべきか、よく考えてみてください。

 2014年5月31日

姜承一 姜晃範 康正亨 康昌宗 郭洋春 高大博 高東林 高允男 具本煥 琴尚一 金健   金達範 金広文 金明秀 金美花 金民雄 金富子 金床憲 金聖雄 金成元 金秀男 金淳次 金迅野 金安弘 金栄官 金英淑 金暎淑 金利明 金仁煥 金昌 金在法 金在英 金哲雄 金春花 金泰煥 金必順 金恒勝 金和子 金幸子 金洪仙 法岳光徳 都相太 都相夏 都雄吾 文京洙 朴耕成 朴昌利 孫在福 宋君哲 宋裕介 宋在伍 宋千年  安聖民 安益濬 呉光現 呉幸哲 呉希昌 王咲恵 尹健次 尹多来 尹炳泰 李大宗 李斗煕 李民男 李史好 李相勁 李相浩 李順連 李裕之 李政美 이창훈 李哲 李鎬柞 林美蘭 林範夫 林成一 張智恵 田聖実 鄭甲寿 鄭貴美 鄭雅英 鄭然元 鄭暎惠 鄭喜斗 趙峰姫 趙華美 蔡明恵 蔡孝  崔正剛 崔春子 崔雪花 高山三奈子 原田宣幸 原田敏安 韓基徳 韓萬海 許伯基 許政安 広田直樹  他匿名6名



開城工業団地を再稼働せよ!! 今年の6.15記念集会は6月18日です。

2016年04月22日 | NPO三千里鐵道ニュース


『小さな統一の奇跡の空間』  開城工業団地を再稼働せよ!!


 1月と2月に敢行された北の核実験と衛星ロケット発射に対し、南は開城工業団地の全面的な操業停止を通告しました。それを受け翌日には北が、開城工団を閉鎖して資産の凍結をし、軍事統制区域にすると宣言しました。

 『6.15共同宣言』が李明博-朴槿恵政権によって形骸化された中でも、南北の和解と経済協力の象徴である開城工団は、『小さな統一の奇跡の空間』として残り、2013年に韓米合同軍事演習への対抗措置として北が開城公団の閉鎖したことがありましたが、その時も約半年後には、南北両政権の合意の下、操業を再開しました。
その時、南北両政権は、「いかなる場合にも情勢の影響を受けることなく、開城工団の正常な運営を保障する」と約束して操業再開したにもかかわらず、朴槿恵政権は一方的に操業停止を通告したのでした。
 
 NPO法人三千里鐵道は、昨年来『在日同胞開城工業団地視察団』を計画し、2月12日に行うことで統一部の許可も得ていましたが、この事態を受けて中止に追い込まれました。それで急遽、事務局会議を持ち、下記のように決めました。

1.ハンギョレ新聞に意見広告を出すこと。

2.6.15共同宣言16周年記念集会に、開城工団管理委員会の企業支援部長として勤務し、昨年『開城公団の人々』という著書を発刊された金鎭香さんをお招きすること。

 金鎭香さんは、KAIST(韓国科学技術院)教授でしたが、この間の情勢の中で、辞任に追い込まれした。
 
 今は、開城工団の再開を求める国内と海外同胞の招きで、公園の毎日を過ごしていらっしゃいます。日本は、三千里鐵道がお招きしました。

略歴 
慶北大学 大学院 政治学 韓国政治、北韓/統一
大統領官邸 国家安全保障会議 事務局 韓半島平和体制担当官
大統領秘書室 統一外交安保政策室 南北関係局長
開城工団管理委員会 企業支援部長
KAIST(韓国科学技術院)未来戦略大学院 研究教授 
博士論文 韓半島統一に関する談論の分析

著書 
韓半島平和体制 2008年
開城工団の人々 2015年6月 

日時: 6月18日(土) 午後1時15分 開場 1時半 開演

場所: 名古屋YWCAビッグスペース
(名古屋市中区 新栄町2丁目3  愛知県芸術劇場 向側)

参加費:1000円 (学生無料)

主催:NPO法人 三千里鐵道 問合せ 0532-53-6999

なお、当日参加者の皆さんには、
1. 金鎭香さんの著書『開城工団の人々』の要約パンフレット
2. 三千里鐵道が意見広告を出したハンギョレ新聞

を進呈したします。



韓国総選挙の民心

2016年04月18日 | 三千里コラム

無所属で当選した「統合進歩党」出身のユン・ジョンオさん(4.13,蔚山市)



4月13日、韓国で第20代国会議員総選挙が実施された。事前に野党が分裂したことから、与党「セヌリ党」の圧勝が予測されていた。ところが、「セヌリ党」は過半数議席どころか、第1党の地位からも転落するという意外な結果となった。今回の総選挙ほど、専門家たちの予測が外れた選挙もなかっただろう。本稿で、選挙結果に現れた韓国社会の民心を分析してみたい(JHK)。

1.各党の議席数と得票率の変化

韓国の国会議員総選挙は、小選挙区と比例代表の並立制で行われる。地域区253人、比例代表区47人の議員が選ばれ、任期は4年だ。各党の議席数を前回総選挙と比較すると、次のとおりである。「セヌリ党」(146⇒122)、「共に民主党」(102⇒123)、「国民の党」(20⇒38)、「正義党」(5⇒6)、無所属(⇒11)。また、比例代表の得票率では「セヌリ党」=33.5%、「共に民主党」=23.5%、「国民の党」=26.7%、「正義党」=7.2%だった。「国民の党」と「正義党」は今回新たに結成された新党なので、得票率の推移を比較できない。だが、「セヌリ党」は12.5%、「共に民主党」(旧民主統合党)は11.0%と、いずれも前回に比べ得票率が大きく減少している。

にも拘らず、「共に民主党」が第1党になったのだ(「セヌリ党」の公認を得られず無所属で当選した7人は復党の意志を表明しており、「セヌリ党」が129議席で第1党になると予測される)。今回の選挙結果には、小選挙区制の抱える問題点をはじめ、幾つかの要因が重層的に作用している。ただ、表面上の結果からは、「セヌリ党」=惨敗、「共に民主党」=善戦、「国民の党」=躍進、「正義党」(他の進歩政党も含め)=停滞、と短評できるだろう。

2.民心の審判

今回の総選挙は言うまでもなく、朴槿恵政権の愚政に対する容赦なき審判であった。韓国市民は国政全般に渡る大統領の傲慢で独善的な姿勢に憤怒しており、何よりも、経済の失政と南北関係破綻の責任を厳しく追及したと言えるだろう。具体的には、セウォル号惨事の真相究明放棄、歴史教科書国定化の強行、日本軍「慰安婦」問題の屈辱的な対日交渉、国会と野党を無視した強引な政局運営、青年失業率と家計債務の増大、開城工団の閉鎖と南北関係の断絶など、枚挙にいとまがない。何一つ、肯定的な評価に値する治績は見当たらないのが現状だ。このままではおそらく、最も無能な大統領として記憶されるのではあるまいか。英国公営放送『BBC』や米紙『ニューヨーク・タイムズ』なども、「朴槿恵大統領の独断的な統治スタイル、反政府デモへの強硬な対応」などを敗因としてあげている。

今回は、特定の政策をめぐる与野党間の論争も殆どない選挙だった。与野党は経済悪化の責任を相互に転嫁するだけで、未来への政策展望を何も提示しなかった。また、北朝鮮の核・ミサイル開発と米韓合同演習の強化という高度の軍事緊張下で実施された選挙だったが、外交・安保・統一問題などは争点にもならなかったのだ。実際の選挙遊説でも、与野党間にこれといった差異が見えなかった。さらに、比例代表候補の選出過程を見ると、経歴や資質の疑わしい人士を与野党の指導部が不明瞭な基準で公認するという、旧態まで露呈していた。有権者が投票場に向かう動機を見つけるのが困難で、「史上最悪の選挙」になるだろうと酷評されていたほどだ。

しかし、前回に比べ投票率は3.8%上昇し(54.2⇒58.0)、過半数議席の獲得を目指した与党は第2党に後退した。予想外の結果をもたらしたのは、有権者が共有した政権交代への強い願望だったと言えよう。韓国市民はもはや朴槿恵大統領の“統治”を望んでおらず、民主政治の回復と朝鮮半島の平和定着、公正な分配による格差の解消を求めているのだ。

ここで看過すべきでないのは、民心は「大統領と政権与党を厳しく審判した」のであり、「野党に全面的な支持と期待を表示した」のではないという事実だ。「共に民主党」と「国民の党」が議席を増やしたのは、両党の政策や主張が共感を得たからではない。あくまでも、朴槿恵政権と「セヌリ党」の失政がもたらした“反射利益”にすぎない。両党が一時的なバブル議席に酔いしれていると、民心の新たな審判を免れないだろう。

すでに「共に民主党」は今回、伝統的な支持基盤の全羅道で有権者の峻厳な審判を受けている。この地域で総28議席のうち、同党はわずか3議席を得たに過ぎない。「国民の党」が23議席、与党が2議席だった。特に「民主化運動の聖地」と呼ばれる光州市で全敗した(「国民の党」が全8議席を獲得)ことは、「共に民主党」にとって致命的な痛手と言えよう。

全羅道の民心が「共に民主党」から離反したのは、南北関係の悪化と政権の公安弾圧(「従北」攻勢)に際し、同党が右傾化を選択し保身に回ったことに起因している。金大中政権期の南北和解・協力政策(太陽政策)を擁護せず、その成果である開城工業団地の一方的な閉鎖を阻止しなかった「共に民主党」の現状は、全羅道の民心が同党への支持を撤回する十分な根拠となった。その結果、代案として「国民の党」に票が流れ第3党に浮上したのだ。

しかし、共同代表の安哲秀をはじめ「国民の党」の主要人氏は、ほぼ全員が中道もしくは穏健保守に分類される。決して、南北関係の改善や和解協力政策に粉骨砕身する意思を持っているとは思えない。同党のスローガンである“新しい政治”も何を意味するのか、具体的なイメージすら湧いてこない。野党内で主導権確保に失敗した「安哲秀とその仲間たち」が離脱し、「政権交代のためには第3党が必要だ」と旗を上げ、既存野党に失望している全羅道民に受け入れらたのだ。

これも一種の“反射利益”と言える。全羅道における変化は、「共に民主党」に対する審判の結果であって、「国民の党」への全面的な支持を意味するものではない。また、「国民の党」が名実ともに第3党として認定されるには、まだ程遠いと言わざるをえない。全羅道以外の地域では、ソウル市で2議席を得ただけなのだ。地域政党としての限界は明白であろう。

3.今後の展望と課題

今回の選挙は図らずも、憲法第1条の「大韓民国は民主共和国である。大韓民国の主権は国民にあり、すべての権力は国民より出る」を実感する場となった。韓国民衆の躍動的な力量を示し、民主化の成果が決して消尽したのではないことを証明したからだ。主(あるじ)である民(たみ)が、自らの意志で、保守政権による後退と反動への流れに歯止めをかけたのだ。野党は候補一本化に失敗したが、市民が自らの判断で、当選可能な候補を選択して投票した。首都圏における「共に民主党」の勝利は、こうした市民の賢明な判断によるものだ。

市民社会の意志はさらに、1987年の民主化抗争以後、30年間にわたって韓国社会を規定してきた「地域対立の構図」を変革する動力となっている。朴槿恵大統領の地元であり保守勢力の拠点でもある大邱市で、「共に民主党」の次世代ホープ、金富謙(キム・ブギョム)が与党の重鎮に圧勝した。大邱市をはじめ与党の支持基盤地域である慶尚道は総65議席の票田だ。今回、野党と無所属が17議席を占めたのは重要な意味を持つ。野党地域の全羅道でも、「セヌリ党」が2議席を獲得している。

「地域主義」に根ざした87年体制が崩壊に向かい、その代わりに「世代対立の構図」が顕著になっているようだ。特に、20代~40代の人口比率が高くその世代が積極的に投票した地域では、「共に民主党」と「正義党」、そして無所属の議席が増えている。こうした傾向は2012年の大統領選挙でも顕著だった。20代~40代は野党の文在寅候補に、50代以上は朴槿恵候補に票が集中した。ただ、全羅道と慶尚道だけは例外だった。両地域は世代を問わず、野党と与党に圧倒的な支持を与えたからだ。しかし今回、両地域でも世代間の差異が顕著に現れた。全羅道の20代~40代は「共に民主党」、50代~60代は「国民の党」を支持した。慶尚道では、50代~60代が「セヌリ党」を支持したが、20代~40代は「共に民主党」と無所属支持に傾斜している。

社会を変革し歴史を創造する力の源泉はどこにあるのだろう。それは民衆の「ひたむきな心」ではないだろうか。矛盾だらけの現状を変えたいという「ひたむきな心」だ。今回の選挙も、20代~40代の「ひたむきな心」がもたらした結果だと思う。中央選挙管理委と各放送局の出口調査によると、前回(2012年)に比べ世代別の投票率推移は以下の通りである。20代(45.0%⇒49.4%)、30代(41.8%⇒49.5%)、40代(50.3%⇒53.4%)。一方、50代以上の増加率は1%に満たない。政権に失望した高世代は投票に行かなったが、20代~40代は「ひたむきな心」で政権交代への強い意志を投票で示したのだ。

来年の12月に大統領選挙が控えている。政権交代を実現するには野党勢力の連帯が不可欠だ。「国民の党」の躍進で20年ぶりに三党体制が出現した。しかし不安定で過渡的な三党体制だ。「国民の党」は選挙後に、いち早く「セヌリ党」内部の反朴槿恵勢力に連帯のエールを表明している。一方、大統領候補に知名度の高い人物が見当たらない「セヌリ党」は、安哲秀に大統領候補の座を譲ってでも政権の延長を企図するかもしれない。大統領への道が開かれるのなら、どの政党であっても厭わないのが「安哲秀とその仲間たち」ではないだろうか。かつて金泳三が、与党との野合で大統領候補の座を得たように。

かつて金大中が野党の指導者だった時期、政権交代に向けた最大の拠り所は全羅道民の「ひたむきな心」だった。しかし今、盧武鉉政権を誕生させたもう一つの要因である、特定地域を超えた進歩・民主勢力の「ひたむきな心」なくしては、2017年の政権交代は実現しないだろう。その中核を担う20代~40代の意志に期待したい。この世代の力が、野党勢力の連帯を推進することを願う。

最後になったが、蔚山の地で、二人の無所属議員が誕生している。キム・ジョンフン(51歳)とユン・ジョンオ(52歳)だ。二人は労働運動の経歴が長く、朴槿恵政権の弾圧で強制解散された「統合進歩党」に所属していた共通点を持つ。二人はまた、与党の牙城だったこの地域で市議や区長を努めながら、労働者と市民の支持を広げていった。今回の選挙で民衆は、朴槿恵政権を審判し民主政治への確固たる意志を表明した。同時に、不当な弾圧でも決して消滅しない進歩政党の新たな可能性を、力強く立証した。韓国民衆の奮起に拍手を!

制裁? 対話と交渉!

2016年04月05日 | 三千里コラム

各界人士818名による「今こそ制裁ではなく、対話と交渉を開始せよ!」共同宣言(3.31,ソウル)



3月31日、ワシントンでの第4回核安全保障サミット期間に米中首脳会談が開かれた。日本の報道では、両国首脳が「対北朝鮮制裁決議の全面的な履行意思を再確認した」と伝えるだけだ。しかし、国連安保理の決議2270号は単に制裁という要素だけではなく、対話と交渉によって朝鮮半島の非核化(北朝鮮の非核化ではない!)と平和体制を追求するという側面も含まれている。決議の第49項は「朝鮮半島・東北アジアにおける平和と安定の維持」、第50項は「六カ国協議と『9.19共同声明』の支持」となっているのだ。制裁決議の全面履行とは、これら項目の実現に向けて米中両国が共同で努力することの確認でもある。

4月1日、中国外交部の報道によれば、米中首脳会談で習近平主席は「中国は一貫して、朝鮮半島の非核化・朝鮮半島の平和と安定・対話と交渉による諸問題の解決、という原則を堅持してきた」と述べたそうだ。北朝鮮の第4回核実験以降、中国の首脳が米大統領に「対話と交渉による解決」を求めたのは、これが初めてのことだろう。
周知のごとく、史上最強レベルの対北朝鮮制裁決議が3月2日に採択され、史上最大規模の米韓合同演習が3月6日から始まった。そして南北双方が互いの最高指導者を標的にした軍事作戦の敢行を表明するなか、朝鮮半島の軍事緊張は「休戦協定以降で最高位」とまで言われている。一触即発とも見れる危機状況だが、筆者は「戦争から平和」に向かう変化の兆しを感じている。

まず、1月の核実験から制裁決議の採択に8週間も要したことは、何を意味するのだろうか。明らかに、制裁だけでは“北朝鮮の核・ミサイルの脅威”を解消できないこと、国連安保理が問題解決の有効な場ではないことの反映であろう。別の表現をするなら、朝鮮半島の非核化は朝鮮半島平和体制(核心は朝鮮戦争の平和協定)の一部分であり、その実現は安保理の制裁強化ではなく六カ国協議の合意履行を通じてこそ可能であることを、ようやく米中を始めとする関係国(日韓両国は除き)が自覚するようになったのだ。

次に、米中両国が制裁決議案を論議するなかで到達した合意内容だ。2月17日、中国の王毅外相は「朝鮮半島の非核化と米朝平和協定を並行して推進する」との提案を行った。さらに同23日、米中外相会談で両国は「制裁は対話のための手段であり、朝鮮半島問題の対話による解決」を表明している。衝撃的だったのは、2月21日付米紙『ウォールストリートジャーナル』の記事だった。昨年末に米朝両国がニューヨークで、平和協定交渉に関し非公開で接触したというのだ。この報道に関し米国務省は「われわれは平和協定に関する北朝鮮の提案を慎重に検討し、非核化がそうした論議の一部として含まれるべきだと言明した」というものだった。

これまでは「非核化(北朝鮮の核放棄)をあらゆる交渉の前提」にしてきた米政府が、「平和協定と非核化をパッケージにして一括交渉する」立場に移行しつつあると読める内容だ。米政府は制裁を前面に掲げているが、一角で交渉の余地も残している。それは、2006年以降くり返された安保理制裁に効力はなく、平和協定締結の提案を受け入れることでしか、北朝鮮の核問題は解決されないと悟り始めたからだろう。その意味で3月8日、全国人民代表大会における王毅外相の記者会見は、米朝関係の今後を予測するうえで参考になる。彼は次のように述べた。「非核化は国際社会の確固とした目標であり、停戦体制の平和体制への転換は朝鮮の合理的関心であり、両者を併行して交渉し統一的に解決することは、公平かつ合理的であるとともに、確実に実行可能でもある。」

そして、もう一方の当事者である北朝鮮も明確なシグナルを送っている。4月3日、国防委員会は報道官談話を通じて以下のようなメッセージを表明した。
「…一方的な制裁よりも安定の維持が急務であり、無謀な軍事的圧迫よりも交渉への転換が根本的な解決策であり、制度転覆の企図よりも無条件の体制承認と協調こそが賢明であるとの世論が大勢となっている…」。3月7日、米韓合同演習の開始直後に出された国防委員会の声明とは、明らかに異なるトーンである。当時、声明の基調は「米国とその追従勢力による核戦争の挑発狂気に全面対応するため、総攻勢に進入する」との過激な警告だった。今回、談話のキーワードが「安定の維持、交渉への転換」であることに注目したい。平和協定交渉に向け、米政府に“ボールを投げた”と言えよう。

ボールは米側のコートにある。受けて返すのか、以前のように無視するのか。選択は米政府にかかっている。残念ながら、韓国政府は変化の現状を直視していないようだ。朴槿恵政権の国防部は、北の談話に対し「今は国際社会が一致して対北制裁を強化している時期だ。対話について論じる時ではない」と一蹴した。参考までに、3月31日、韓国の市民社会と宗教界を代表する818名の人士が「今こそ制裁ではなく対話を!」という趣旨で共同宣言を発表した。宣言は、他でもない「朝鮮半島の平和協定と非核化の同時解決」を訴えている。そして、4月13日の国会議員総選挙を控え、主要な三野党もすべて「平和協定と非核化の同時解決」を公約として掲げている。制裁への執着がもたらすのは戦争の危機だけである。朴槿恵政権の覚醒を促したい。(JHK)