8月1日、東京の学士会館で開催された「ソウル-ピョンヤン-東京、リレー国際シンポジウム」
7月27日は、1953年に朝鮮戦争の停戦協定が締結されてから、ちょうど60周年になる日です。停戦協定は、戦争の終結を意味する終戦宣言でもなければ、交戦当事国間の和解を意味する平和協定でもありません。戦争の一時中断に過ぎない停戦状態は、朝鮮半島が極度の軍事緊張下にある主要因と言えます。
朝鮮半島の平和協定を求める集いが8月1日午後5時から、東京都千代田区の学士会館で催されました。「ソウル-ピョンヤン-東京、リレー国際シンポジウム」です。
当日の集いを主催したのは「停戦60周年国際シンポジウム実行委員会」です。同実行委員会は、6.15南北共同宣言を支持する在日コリアンの民族団体と人士、および朝鮮半島の平和統一を支持する日本の市民団体によって構成されました。
シンポジウムは停戦協定60周年をむかえた7月27日、ソウルとピョンヤンでの行事に参加した内外の平和学者や平和活動家が東京に合流し、それぞれの地域での成果を持ち寄り集約する内容となりました。以下に、8月2日付および5日付『統一ニュース』の記事を要訳して紹介します。 JHK
1. 米国に平和のメッセージを!
http://www.tongilnews.com/news/articleView.html?idxno=103548
停戦協定60周年をむかえた8月1日、朝鮮半島の平和統一を支持する在日同胞と日本市民が共同で主催する「ソウル-ピョンヤン-東京、リレー国際シンポジウム」が開かれた。
シンポジウムの基調発言を担当したのは、ラムジー・クラーク(元米国法務長官)と、ミシェル・チョスドフスキー(オタワ大学教授)だった。
クラーク氏は去る7月25日、停戦60周年記念行事に参加するためピョンヤンを訪問し、黄海南道信川郡で開催された「朝鮮戦争当時の米軍蛮行を糾弾する国際大会」で演説した。また、楊亨燮・最高人民会議常任委員会副委員長とも面談している。
一方のチョスドフスキー教授は7月26日、韓国で開かれた「停戦60年、韓半島平和協定締結のための国際平和シンポジウム」に参加し特別講演をした。そして27日には、ソウル市龍山区の戦争記念館前で開催された「停戦60年、韓半島平和協定締結のための国際平和大会」にも参加した。
先ず、クラーク元法務長官が「朝鮮戦争-忘れられた、分からなくなった、まだ終わっていない戦争」という題目で発言した。
彼は「日本が敗戦した後に朝鮮半島が分断され、ついには朝鮮戦争が始まった。この戦争により150万人が死亡したが、ほとんどは民間人だった。これはジェノサイドだった」と朝鮮戦争を規定した。
続いて彼は「朝鮮戦争は第2次大戦以後に類例がない大きな戦争だった。歴代戦争のなかでも大規模だった。朝鮮戦争のように国土全体が戦場になったことは類例がない」と朝鮮戦争の残酷性を次のように強調した。
「朝鮮戦争でピョンヤンが受けた被害は、1945年2月、ヨーロッパ(ドイツ)でドレスデンがこうむった被害よりも大きかった。この戦争により分断が長期化し、たくさんの離散家族ができてしまった。とても胸が痛いことだ。」
次に、チョスドフスキー教授が「朝鮮民族に対する米国の戦争」と題して基調発言をした。
彼は韓国での集会に参加した所感から話し始めた。ソウル市庁広場で開催された7.27の 60周年行事を回想し、「政府の主催行事には3千人が参加した。しかし、市庁広場のロウソク・デモ行事には2万人が集まった。反戦と平和協定、民主主義のために市民が結集したのだ」と語り、当時の感動を熱く語った。
彼もクラーク元長官と同じく、朝鮮戦争における米軍の蛮行をジェノサイドと規定した。 彼はその証拠として、爆撃に参加した米軍戦闘機の飛行士が「北朝鮮の全地域が瓦解した。絨毯爆撃ですべてが破壊された。北朝鮮にある都市はみな破壊された」と交信した事例を紹介した。
特に彼は、朝鮮戦争当時に米国が核攻撃を計画していた事実を強調した。「米国政府には朝鮮半島で核兵器を使用する計画があったが、断念した。ところで米国は、広島に核爆弾を投下した。無差別核攻撃という米国の“広島ドクトリン”は、北朝鮮にも適用される」と警告した。北朝鮮が米国の核先制攻撃の対象である、というのだ。
彼は「北朝鮮が核兵器を持っているが、これは防御用であって攻撃用ではない。もし朝鮮半島で戦争が起きるならば、米国が仕掛けるのであり、米国の同盟国が仕掛ける戦争となる」と釘を刺した。
彼はまた、「韓国は北朝鮮に対する戦争挑発の手先になってはいけない。韓国が統一のために先導すべきだ。統一は夢でない。歴史的なプロジェクトだ」と強調した。
基調発言を受け、パネルディスカッションが行われた。
ディスカッションはカン・ジョンホン(韓国問題研究所代表・在日)の司会で進行され、ブライアン・ベッカー「反人種差別行動(ANSWER)」事務総長(在米)、マラ・バーヘイデン・ヒリアード国際弁護士(在米)、キム・ヨンジャ朝鮮大学校文学歴史学部教授(在日)、そしてチョン・キヨル清華大学校客員教授(在中)が討論を行った。
2. 北朝鮮は“百聞は一見に如かず”の諺がぴったりの国
http://www.tongilnews.com/news/articleView.html?idxno=103561
ピョンヤンを経由して8月1日の「ソウル-ピョンヤン-東京、リレー国際シンポジウム」に参加した、ブライアン・ベッカー事務総長とマラ・バーヘイデン・ヒリアード弁護士に会った。お二人との短いインタビューは2日午前、学士会館のロビーで行われた。
□ 統一ニュース: 今回の7.27停戦協定日に際してピョンヤンを訪問したと聞いている。 今回が何回目の訪朝か?
■ ベッカー事務総長:4回目だ
□ 感想は?
■ 以前に比べすべての面で変わっていた。市街が美しくなったし、木が茂って人々の顔色も良く、何よりも気持ちの余裕を感じた。また、服装も良くなっていた。極めて楽観的に生きているという印象を受けた。
□ どんな人々に会ったのか?
■ 普通の市民たちだ。たくさんの人に会った。その人々と話しながら互いの気持ちが通じたように思う。また、ピョンヤンの人々は私たちを敵視しなかった。そのような意味で、南と北が敵対的である理由はないという気がした。
□ 北の政府当局者では誰と会ったのか?
■ 楊亨燮(ヤン・ヒョンソプ)最高人民会議常任委員会副委員長と会った。15分ほどの短い面談だったが、率直な意見交換ができた。印象深く残っているのは、ヤン副委員長が一番最後にした話だ。彼は「百聞は一見に如かず」という諺を語った。その諺を主題に私たちは話しあった。米朝関係を改善しようとするなら、重要な教訓になる諺だと思う。特に北朝鮮は、その諺が適用されるべき国だ。日本の人々もみなそのように言う。一度ピョンヤンに行って自分の目で直接見れば、北朝鮮に対する印象がすっかり変わる。
□ 北朝鮮に対するあなたの見解と立場は、米国では多数派ではなくて少数派だ。その点で、少なからぬ困難があるだろう。それでも平和活動家として、あなたは米国人に北朝鮮の真相をどのように知らせるのか?
■ 色々なすべき仕事がある。米国人も平和を望んでいる。北朝鮮と戦争したり敵対関係を望んでいるのではない。ただ、北朝鮮に対する正確な知識が本当に少ないということだ。これが大きな問題だ。その理由は何か? 保守的なメディアのためだ。
米国のメディアが北朝鮮をとても好戦的にだけ報道するので偏見が生まれる。昼夜なしにそうした宣伝をするので、米国人は北朝鮮が平和を望んでいることが分からない。これから私たちは、米国人に会って語ろうと思う。そして私たちが北朝鮮で撮ったビデオを見せたい。あらゆる手段と方法を使って、米国人に北朝鮮の真実を知らせる行事を開催していくことが重要だ。
□ あなたが考える北朝鮮と米間の関係改善は?
■ 北朝鮮と米国が平和のために関係を改善しようとするなら、色々なすべき仕事がある。 一つは署名運動を展開して、ビデオも見せて事実を知らせる運動を積極的に呼び起こさなければならない。これを通じて米政府に関係改善への圧力を加えることだ。その次には交流をしなければならない。北朝鮮と米国の間で活発な交流をしなければならない。私はこれから、たくさんの米国人を連れて北朝鮮を頻繁に訪問しようと考えている。
観光も良いのではないか? 普通の市民が、北朝鮮をよく知らない米国市民が観光するのは効果がある。北朝鮮を一度見てもらうということだ。ヤン副委員長の言うように「百聞は一見に如かず」だ。政治的な立場からの宣伝よりは、このような方法で世論を作っていくべきだ。その方が米国人の認識を変えていくのに適切だと考える。
□ 統一ニュース:あなたは国際人権弁護士として、弱者と少数者に対しても関心が深い人だと聞いている。
■ ヒリアード国際弁護士:昨日、東京朝鮮中高級学校を参観した。とても感動した。学生や教員たちに会えて、いろんな話をした。学生たちが溌剌として、とても明るいという印象を受けた。ところが、日本政府・安倍政権がこれら民族学校に対して差別している。
□ 日本政府と日本人社会の在日同胞に対する民族差別問題をどのように見るのか?
■ それは絶対に許容することができない問題だ。私たちが国際社会に向けて、このような現実を正確に知らせなければならない。国連やさまざまな国際機構を通じて日本での民族教育差別の実状を幅広く知らせ、日本政府にも圧力を加えるように多方面にわたる活動をしていくつもりだ。
□ 具体的な方法があるのか?
■ 一つ明確な方法がある。日本政府は来る2020年に、東京オリンピックを誘致しようとしている。ところで、人種差別と教育差別をするのはオリンピック精神とは相容れない行為だ。国際規約にも違反している。こうした事実を強調して、国際社会が日本政府に圧力を加えるようにしたい。この方法だけではないが、重要で効果的な方法だと思う。
在日同胞、とりわけ女性たちや教員たちをはじめすべての在日同胞と今後も引き続き関係を維持し、互いに情報も交換しながら私のできる事をやり尽くしたいと考えている。