合併症のない急性虫垂炎では、24時間以内に手術行っても、8 時間以内に手術を行った場合と比べて虫垂穿孔の頻度は変わらない
Lancet 2023. https://doi.org/10.1016/S0140-6736(23)01311-9
背景
虫垂切除術は依然として虫垂炎の標準的治療法である。急性合併症のない虫垂炎に対する手術の緊急性については国際的なコンセンサスはなく、遅滞のない手術から 24 時間以内の手術まで推奨はさまざまである。
そこで著者らは、2 つの異なる緊急度(<8 時間 vs <24 時間)で予定された虫垂切除術を受けた患者の虫垂穿孔率を比較することを目的とした。
方法
フィンランドの 2 病院とノルウェーの 1 病院で非盲検、多施設、非劣性、無作為化比較試験を行った。
合併症のない急性虫垂炎と推定される 18 歳以上の患者を 8 時間以内に予定された虫垂切除術と 24 時間以内に予定された虫垂切除術に無作為に 1:1 に割り付けた。
妊娠、穿孔性虫垂炎の疑い(CRP 10 mg/dL 以上、38.5℃以上の発熱、画像検査での複雑性虫垂炎の徴候、臨床的な汎発性腹膜炎) 、または迅速な手術が必要なその他の理由がある場合は対象から除外した。
主要アウトカムは、手術中に診断された穿孔虫垂炎で、intention to treat により虫垂切除術を受けた全患者を分析した。穿孔虫垂炎の発生率の絶対差を群間で比較した。合併症とその他の安全性アウトカムは虫垂切除術を受けた全患者で解析された。非劣性を立証するために5パーセンテージポイントのマージンが用いられた。
所見
2020 年 5 月 18 日から 2022 年 12 月 31 日の間に、2095 例の患者の適格性が評価され、そのうち 1822 例が 8 時間以内に予定された虫垂切除術(n=914)または 24 時間以内に予定された虫垂切除術(n=908)に無作為に割り付けられた。
無作為化後、1822 例中 19 例(1%)がプロトコール違反により除外された。1803 例が intention-to-treat 解析に組み入れられ、うち 985 例(55%)が男性、818 例(45%)が女性であった。
虫垂穿孔率は群間で同様であった(8時間未満群に割り付けられた 907 例中 77 例[8%]、24 時間未満群に割り付けられた 896 例中 81 例[9%];絶対リスク差 0-6 %[95%信頼区間: -2.1〜3.2],P = 0.68, リスク比: 1.065, 95%信頼区間:
0.790-1.435)。
30 日以内の合併症発生率に有意差は認められず(8 時間未満群 907 例中 66 例[7%] vs 24 時間未満群 896 例中 56 例[6%];差: -1.0%[-3.3~1.3], P = 0.39)、この追跡期間中に死亡例はなかった。
解釈
合併症のない急性虫垂炎と推定される患者において、24 時間以内に虫垂切除術を予定することは、8 時間以内に虫垂切除術を予定することと比較して虫垂穿孔のリスクを増加させない。この結果は、例えば夜間の虫垂切除術を日中に延期するなど、手術室の資源配分に用いることができる。
https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(23)01311-9/fulltext