非びらん性胃食道逆流症では食道腺癌は増えない: コホート研究
BMJ 2023; 382: e076017. https://doi.org/10.1136/bmj-2023-076017
背景
胃食道逆流症(gastro-oesophageal reflux disease: GORD)は、少なくとも週 1 回、煩わしい胸やけや逆流、または GORD に関連する合併症の症状があることで定義され、高所得国では成人の約 20%にみられる。
GORD の症状を持つ患者は、食道腺癌の前駆症状であるびらん性食道炎や異形成(Barrett's oesophagus バレット食道)を含む粘膜異常を検索するために、上部内視鏡検査に頻繁に紹介される。しかし、GORD 症状に対する上部内視鏡検査で最も一般的な所見は、正常な食道粘膜であり、これは非びらん性 GORD を表している。
食道炎と食道腺癌との関連は十分に確立されているが、内視鏡的に非びらん性GORDと確認された患者における食道腺癌の発症リスクを確実に検討した先行研究はない。この研究には、正常な上部内視鏡検査を受けた GORD 患者の大規模コホートと広範な追跡調査が必要である。
著者らは、北欧の 3 カ国から収集した、長期にわたる完全な追跡調査を行った大規模な非選択コホートを調査することにより、非びらん性 GORD が食道腺癌と関連しているかどうかについての答えを得ることを目的とした。
方法
1987 年 1 月 1 日から 2019 年 12 月 31 日までにデンマーク、フィンランド、スウェーデンの病院および専門外来医療を受診した全患者を対象にコホート研究を行った。
内視鏡検査を受けた成人(18歳以上)486,556例を組み入れ対象とした。非びらん性 GORD コホートには 285,811 例、びらん性 GORD 検証コホートには 200,745 例が組み入れられた。
食道腺がんの発生率を最長 31 年間の追跡期間について評価した。各 GORD コホートにおいて観察された食道腺がんの数を、対応する年齢、性別、および暦年のデンマーク、フィンランド、およびスウェーデンの一般集団から得られた期待数で除することにより、95%信頼区間を伴う標準化発生率比を算出した。
結果
非びらん性 GORD 患者 285,811 人のうち、 228 人が 2,081,051 人年の追跡期間中に食道腺がんを発症した。非びらん性 GORD 患者における食道腺がんの発生率は 11.0/10 万人年であった。
罹患率は一般集団と同程度であり(標準化罹患率比 1.04(95%信頼区間: 0.91-1.18))、追跡期間が長くなっても増加しなかった(追跡期間 15-31 年では 1.07(0.65-1.65))。
妥当性のため、内視鏡検査でびらん性食道炎を認めた人(患者数 200,745 人、1,750,249 人年、食道腺がん 542 人、発生率 31.0/10 万人年に相当)も分析したところ、食道腺がんの標準化発生率比は全体で2.36(2.17-2.57)と増加し、追跡期間が長くなるほど顕著になった (図)。
図: びらん性 GORD と非びらん性 GORD における食道腺癌の標準化罹患率
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結論
非びらん性 GORD は、一般集団と食道腺がん発生率は同程度のようである。この所見は、内視鏡的に確認された非びらん性胃食道逆流症では、食道腺がんに対する追加の内視鏡的モニタリングは必要ないことを示唆している。
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