内分泌代謝内科 備忘録

胃蜂窩織炎

胃蜂窩織炎 (phlegmonous gastritis) についての症例報告
CMAJ 2023; 195: E1181. https://doi.org/10.1503/cmaj.230767

2 型糖尿病の 54 歳男性が、3 日前からの心窩部痛のため救急車で救急外来を受診した。アルコール摂取はなく、腹部愁訴の既往はなく、免疫抑制剤も服用していなかった。

発熱があり、臍周囲に反跳性圧痛があった。血液検査では、白血球数が 14,800 /μL に増加し、CRP 27.29 mg/dL と高値だった。腹部 CT では、胃壁のびまん性の円周方向の肥厚が認められた (図1A)。

図1A: 腹部 CT 所見
https://www.cmaj.ca/content/195/35/E1181

胃蜂窩織炎を疑い、メロペネムとバンコマイシンの投与を開始した。上部消化管内視鏡検査では、胃壁粘膜のびまん性紅斑と浮腫性びらん性変化、および膿性滲出液が認められた(図1B)。

図1B: 内視鏡所見
https://www.cmaj.ca/content/cmaj/195/35/E1181/F1.large.jpg

胃吸引液と血液培養から化膿連鎖球菌が検出された。胃蜂窩織炎と診断し、患者を他院に転院させ胃全摘術を行った。胃粘膜の病理所見は、固有層に広範な出血性壊死、粘膜下層に好中球優位の炎症細胞浸潤を伴う重度の浮腫性変化であった。患者はさらにアンピシリン-スルバクタムの静脈内投与で治療され、自宅退院となった。

胃蜂窩織炎は胃の急性化膿性感染症である。胃の基礎疾患、アルコール症、免疫抑制剤の使用がリスク因子となるが、40%の患者では基礎疾患を認めない。連鎖球菌が最も一般的な原因菌(患者の約 70%)であるが、患者の約 3 分の 1 では多菌感染が関与している。

全死亡率は 40%程度で、胃全体に病変が及ぶ場合はさらに高くなる。

胃蜂窩織炎の症状は非特異的で、腹痛、嘔気、嘔吐、発熱などがある。したがって、画像診断が診断に重要な役割を果たす。CT では壁内低密度病変の有無にかかわらず胃壁が肥厚し、内視鏡ではひだ状肥厚や広範な潰瘍形成が典型的な所見である。

消化性潰瘍疾患、胃癌、胃リンパ腫が主な鑑別診断である。 びまん性疾患の患者に対しては、早期の胃切除術と広域抗菌薬の併用が生存の可能性を高める。

https://www.cmaj.ca/content/195/35/E1181
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