サテュロスの祭典

神話から着想を得た創作小説を掲載します。

兎神伝〜紅兎四部〜(29)

2022-02-04 00:29:00 | 兎神伝〜紅兎〜革命編其乃二
兎神伝

紅兎〜革命編其乃二〜

(29)潮風

『ウッ!』
若芽は、平蔵の股間を跨ぎ、穂柱を自らの神門(みと)に押し込むと、固く目を瞑り、歯を食いしばった。
『ウゥゥゥゥーッ!』
穂柱は、参道に潜りこむにつれ、一層熱を帯びて硬く太くなってゆく。
『頑張れ!お姉ちゃん、頑張れ!』
『もう少し!もう少しよ!』
周囲からは、共にここまでやってきた青兎の少女達が、声援の掛け声をかけている。
『ウゥゥゥゥーッ!』
若芽は、更に恐る恐る腰を落とし、膨張を続ける穂柱を奥に挿れていった。
『アッ!』
遂に滑りを帯びた穂柱の先端が御祭神に当たると、肩を縮こめ声を上げた。
しかし…
痛くない…
若芽は目を丸くして平蔵の顔を見下ろすと、平蔵はニッと笑いながら、椀を逆さにしたような乳房と、仄かに若草萌える神門(みと)の先端に手を伸ばした。
『アッ…アッ…アッ…』
優しく乳房を揉まれ、乳首を摘まれ、包皮越しに神核(みかく)を弄られるの合わせ、声を漏らしながら、軽やかに顎と腰を動かしてゆく。
『そうよ!その調子!その調子!』
『上手よ、若芽姉ちゃん!』
周囲からは、また、青兎の少女達の声援が飛び…
『そうそう!快楽に、身も心も委ねて、感じるままに動くのよ!』
と、一番幼な顔の香織が、ませた口調で言えば…
『まあっ!この子ったら、ナマ言ってる!』
『最初、テッちゃんに身体(からだ)を触られたら、怖がってメソメソ泣いてたクセに。』
と、花子と美雪が言い、一斉に笑いの渦が飛び交った。
平蔵は、忽ち顔を赤くし、肩を窄めて涙目になる香織に片目を瞑って見せると…
『よしよし、若芽、うまいぞ、上手だぞ。』
まるで、おぼこをあやすように声をかけながら、若芽の胸と股間に伸ばす指先の動きを一段と細やかにしていった。
『アンッ!アンッ!アンッ!アンッ!』
若芽の声が次第に大きくなってゆく。
心地良い…
何て心地よいのだろう…
まるで、全身を内側から擽られるような感覚と、頭の中が浮かび上がるような感覚に、意識が混濁し始めると…
『さあ、中で穂柱を揉み解すような感じで、神門(みと)を締め上げてるんだ。』
若芽は、言われるままに、腰を上下させながら、穂柱を挟み込む肉壁を動かしてゆく。
『良いぞ、凄く良いぞ…オッ…オッ…オッ…』
励ます平蔵の声も、次第に喘ぎへと変わってゆき…
『オッ!オッ!オッ!オッ!』
『アンッ!アンッ!アンッ!アンッ!』
二人の喘ぎが交差してゆく。
やがて…
『オォォォォォォォーーーーッ!!!!』
『アァァァァァァァーーーンッ!!!!』
二人が一段と大きな声を上げた瞬間…
時が止まり…
やがて、瘧にでも罹ったように、全身をカタカタさせる若芽の神門(みと)のワレメから、大量の白濁したモノが溢れ出してきた。
『よしよし、でかした、上出来だ、上出来だ。』
平蔵が、力尽きたように胸にうつ伏せてくる若芽を抱きしめ、頭を撫でてやると…
『若芽姉ちゃん、上手よ、凄く上手にできたわ。』
周囲で声援を送っていた青兎の少女達も、一斉に拍手を送り、若芽の背中を摩ったり、肩を抱いたりした。
『平蔵…様…』
若芽が虚な眼差しを向けると…
『テッだ。俺の事は哲人のテツと呼ぶ、主水のバカと違って、頭が良いからな。』
『テッ…ちゃん…』
『そうだ、そうだ、哲人のテツ、テッちゃん。うん!呼び方も上出来だ!』
平蔵はまた、片目を瞑って若芽を抱きしめ、頬擦りをした。
と…
『おっ…何か、また、良い感じがしてきたぞ。』
平蔵が言いながら、下腹部の方に目をやると…
『まあっ!鈴子ったら、何抜けがけしてるのよ!』
美雪が口を尖らせた。
『だって、テッちゃんの穂柱、まだまだこんなに腫らしていて、辛そう何だもん。』
既に両肌を脱ぎ、裾を広げて、真っ平らな胸とまっさらな股間を露にして弄りながら、鈴子は構わず平蔵の穂柱を頬張り続けた。
『何言ってるのよ!次は私よ!私の方が、上手だって、気持ち良いって、テッちゃん褒めてくれたんだからね!』
美雪も負けじと、鈴子を押し退け、平蔵の穂柱を咥えにかかる。
『うわっ!痛ぇっ!二人とも、喧嘩するな!喧嘩するでない!』
平蔵が思わず悲鳴をあげると…
『テッちゃん!ミッちゃんの言ってる事、本当なの!』
鈴子が、鬼の形相で睨みつける。
『テッちゃん、私には、ミッちゃんより私の方が良いって、言ったじゃない!』
すると…
『まあっ!テッちゃん!それ、本当!嘘よね!スズちゃん、嘘つきなのよね!』
今度は、美雪が睨みつけてくる。
『いや…それは…』
忽ち平蔵の目が泳ぎ出すと…
『許せない!』
『噛み切ってやる!』
鈴子と美雪は、同時に、平蔵の穂柱と穂袋に歯を立てた。
『うわっ!痛ぇっ!』
またも悲鳴をあげる平蔵に、香織と花子がクスクス笑い出した。
平蔵の胸にうつ伏せている若芽も、つられるように笑いつつ…
目線は、縁側に腰掛ける恒彦に向けられていた。
砂丘を模倣する庭先の彼方から、潮風が舞い込んで来る。
遠く響くは、船出を告げる板木の音…
あの子達は、もう楽園に向かったのだろうか…
ふと、軽信に預けた穢兎(けがれうさぎ)の少女達の事を思い出す。
丸子…
咲子…
珠江…
恵美…
桃子…
中でも、最後まで若芽と一緒に行きたがり、泣いていた丸子の事が忘れられない。
本当のお姉ちゃんになって欲しかったのだと言う。
そして…
数日前、一足先に試しを受け、聖領(ひじりのかなめ)に送られた十人の青兎の少女達…
青兎の少女を受け取りに訪れる遣属使の神職(みしき)は、聖領諸島(ひじりのかなめのもろつしま)より各五人…
試しの祭祀は、一度にこの五人の穂供(そなえ)を受けて行われる。
しかも、試しはこの五人では終わらない。
最低、十の社(やしろ)から派遣された神職(みしき)達の試しを、交代で繰り返し何度も受け続ける。
試しが終われば、彼らが引き連れてきた十人の神漏兵(みもろのつわもの)達の相手をさせられ…
十日十晩、休む間もなく、弄ばれ続けるのである。
そうして、漸く引き取る社(やしろ)が決まれば、死ぬまで聖領(ひじりのかなめ)の男達の慰み者となる定めが待っているのだが…
聖領(ひじひのかなめ)に送られた青兎が、十八まで生きれば長くもったと言われ、二十歳まで生きれば奇跡と言われる。
『主水さまーっ。』
朧衆の忍、中村の主水の事を、死んだ父親に似ていると言って懐いていた十二の青兎、浮江が貰った人形を大事そうに抱きしめながら、いつまでも手を振る笑顔と…
押し黙ったまま、複雑な眼差しで見送る主水の顔…
二人の顔が、いつまでも脳裏の中で交差する。
磯味か…
また一陣、潮風靡くと、佳奈の笑顔を思い出す。
抱きしめた時の柔らかく温かな温もり…
舐め回した時の果実のような味…
そして…
『刑部(ぎょうぶ)様は、磯の味がします。』
丹念に穂袋を舐め、穂柱をしゃぶり…
小さな口腔内にいっぱいに放たれた白穂を飲み干すと、満面の笑顔で決まって言う言葉…
佳奈…
海を見た事のない佳奈…
潮風は、おまえが思うほど心地よくはなく…
海原は、悲しい声でいつも哭いているぞ…
『佳奈…』
恒彦が、不意にその名を口にして振り向くと、半襦袢を一枚羽織っただけの若芽が、後ろに立っていた。
『ちびまるちゃん達…もう、楽園に着いたかしら。』
若芽は、恒彦の隣に座ると、白穂まみれの股間を懐紙で拭いながら言った。
『どうだろうな…楽園は、聖領(ひじりのかなめ)の島々など及びもつかぬ程、遠い海の彼方にあると聞く。まだ、船の上かも知れん。』
『お結…食べさせて貰ってるかな…』
『きっと、船乗り達を困らせてるだろう。』
『えっ?』
『俺の友人…カメはな、頗る料理自慢で、ちびまるが食いてえと言うから、得意顔で山ほど握ってやったんだかな…
ちびまるの奴、これ、お結じゃない…若芽姉ちゃんが結んでくれたのが良いって、大泣きしたんだ。』
『まあっ!あの子ったら…』
『おめえが、自分の為に出された飯を、こっそり握って食わせてやった、団子のような結が、あの子にとっては、この世で一番うめえ飯みてぇだな。』
『ちびまるちゃん…』
真夜中…
丸子は、渡瀬人(とせにん)達の玩具にされてる最中、絶えず垂れ流しては、袋叩きにされていた。
七つの頃…
いや、赤兎となる事が決まり、田打が始まった五つの時から、絶え間なく指や異物で掻き回され続け、股間も尻もぼろぼろになっていた。
筋肉が完全に緩み切り、大も小も全く堪える事ができなくなっていたのである。
それが、穢兎(けがれうさぎ)として始末される理由となったのだが…
渡瀬人(とせにん)達は、そんな丸子に容赦なく、汚いと言って仕置きし続けたのである。
あの時も、死ぬ程、殴り蹴飛ばされ、最後には綺麗にしてやると、肌を指すような川の水を桶で何十杯もぶっかけられたのである。
若芽は、漸く仕置きが終わり、息も絶え絶えの丸子の側に駆け寄ると、懐に抱いて温めながら差し出したのが、こっそり結んだお結であった。
そして、また…
潮風が舞い込んで来る。
ひとしきり、丸子達を思い出して泣き続けた若芽は、不意に思い出したように…
『刑部(ぎょうぶ)様って、磯の味がするんですってね…』
呟くように言った。
『平蔵様が、仰られてました。佳奈ちゃんと言う子が、あの…その…』
『テッの奴…つまらねぇ事を…』
『磯の味って…どんな味なのでしょう…』
『さっき、テッのを散々飲み込んだろう。男が放つ白穂の味など、どれも同じさ。』
恒彦が吐き捨てるように言うと…
『いいえ…』
若芽は大きくかぶりを振ると、満面の笑みを浮かべて見せた。
『みんな違います。平蔵様は、焼塩のような味…とてもサラサラとして、優しい味がしました。
磯の味って…
刑部(ぎょうぶ)様の味って…』
若芽がそう言いかけ、頬を赤くして俯くと…
『確かめてみたらどうだ。』
漸く、少女達から解放された平蔵が、やはり襦袢を一枚羽織った格好で、若芽の隣に座って言った。
後ろでは、さっきまで喧嘩していた鈴子と美雪が、仲良く大股開きに並んで座り、神門(みと)から溢れ出す白穂を互いの手で掬いながら、ケラケラ笑っている。
『若芽、コイツに抱かれてぇんだろ?』
『平蔵様…』
『平蔵様じゃねえ。哲人の鉄…テッちゃんだ。』
『テッ…ちゃん。』
『そうそう…
そのテッちゃんより、本当はツネ公が良かったんだよな、今朝だって…』
『そんな…私…』
『脇腹の傷で熱出してうなされていた時、おめえ、ずっとツネ公の名を口走っていたじゃねえか。『刑部(ぎょうぶ)様…刑部(ぎょうぶ)様…』ってな。』
平蔵がそこまで言うと、若芽はいよいよ顔を真っ赤にして立ち上がり、隣の部屋に去ってしまった。
恒彦は、また砂丘を模倣した庭の彼方を眺めやると、相変わらずの潮風が、頬に吹き付けてくる。
『磯の味か…
佳奈も若芽も、おめえの中に海を見てるんだろうな…広く大きな海を…』
平蔵がしみじみ言うと…
『俺は、海が嫌えだ。海は悲しみばかり持ち込み、大切なものを連れ去って行く…』
『薊か…おめえが初めて惚れた女は、青兎だったな。』
『惚れたと言うわけじゃねぇ。ただ、初めての航河で、船酔いして寝込んだ俺を、寝ずに解放してくれたのが、薊と言う青兎だった。
あいつも、別に俺に惚れたとかそんなんじゃねえ。
若芽のように、虐められている穢兎(けがれうさぎ)や年下の青兎達を必死に庇っていたあいつは、船酔いして笑われていた俺に、親切にしてくれただけだった。そんなあいつを、俺は…』
『男になれと言われ、渡瀬人(とせにん)達に着物を剥がれ、手足を抑えつけられたその子と、無理やりやらされたんだな。』
『無理やりじゃねえ。既にめちゃくちゃに弄ばれ、口も神門(みと)も尻も白穂まみれのあいつに欲情して…気づけば、俺はあいつを…
だのに、あいつ…自分のした事に震えている俺に、ニッコリ笑いかけやがった…』
『それから、二度と女を抱けなくなったか…』
恒彦は何も答えず、ただ、潮風の吹き付ける彼方を見つめ続けた。
『薊…おめえに惚れていたんだよ。おめえに抱かれて嬉しかった…いや、おめえに抱かれた事だけが、何一つ良い事のない人生の中、唯一の救いだったんじゃーねーのかな?』
『馬鹿な…ただ、船酔いに倒れた時、あいつの膝枕で寝込んでいただけだぞ、俺は…最後まで、言葉すら交わさなかった…』
『女が、男に惚れるなんてのは、そんなもんだ。特に、何も望みのない人生を生きる女はな。』
『そんな女に、俺は何もしてやれなかった…』
『してやっただろう。そいつを探す為だけに、おめえは兎津川刑部(とつかわぎょうぶ)のお役につき、役者となった。それで、必死にその後のその子の消息を探り続けた。』
『だが、漸く探り当てたあいつは、とっくに死んでいた。何十人もの神職(みしき)達の試しを受け、夜な夜な神漏(みもろ)達の玩具にされた挙句、聖領(ひじりのかなめ)でも、最も辺境の島に送られて…
そこでも、休みなく男達の玩具にされた挙句、三年もしねえうちに死んでいた。
まだ、十五にすら、なってなかったってのにな…』
『だったら…
今度は、一つだけ、おめえに惚れた女に良い事をしてやらねぇか?』
『良い事?』
『若芽の海になってやれ。』
『若芽の海だと?』
『そうだ。おめえは、海は哀しみばかり持ち込み、大切なものを連れ去って行くと言っていたが…
せめて、おめぇと言う海は、あの子に束の間の喜びを持ち込み、大切なものを残す海となってやれ。』
『俺に、何ができるってんだ?』
『田打をしてやれ。明後日…最初の試しを受ける前にな。』
『俺に、あの子を抱けと?』
『聖領(ひじりのかなめ)に行けば…あの子も、あの子と束の間の苦楽を共にした青兎達も、十八まで生きられる子は、一人もいねぇだろうよ。
だったら…
あの子の短い人生、最初で最後の男になってやれよ。』
平蔵がそう言うと、何も答えずに押し黙る恒彦の頬に、いつまでも物悲しい潮風が吹き付け続けた。

兎神伝〜紅兎四部〜(28]

2022-02-04 00:28:00 | 兎神伝〜紅兎〜革命編其乃二
兎神伝

紅兎〜革命編其乃二〜

(28)平蔵

『アッ…アッ…アッ…アッ…』
部屋に近づくと、小刻みに喘ぐ幼い声が聞こえてきた。
その声は…
『よしよし、良いぞ、香織、その調子だ。おまえも筋が良い、なかなか良い。』
濁声に励まされるや、一段と軽快に、心地よさ気になる。
『アーンッ…アッ…アッ…アッ…アーーーンッ…』
またか…
恒彦は軽く眉を顰めると、部屋の前に正座し…
『刑部にござんす。』
中に向かって、ムッツリと声をかけた。
『おーっ、ツネ公か。かまわん、入れ入れ…』
濁声が返事を返した後も、喘ぎは止まるどころか、一段と高くなる。
『アンッ!アンッ!アンッ!』
『どうだ?心地よいか?此処も心地良いか?』
『はい、とっても…アンッ…アンッ…アンッ…』
『もっと、責めて欲しいか?』
『はいっ!お願い…します…もっと…もっと…もっと…』
『よしよし、それで良い、それで良い。そうやって、身も心も快楽に委ねるのじゃ。』
『アンッ!アンッ!アンッ!アーーーーーーーンッ!!!!』
恒彦は、一瞬、襖に伸ばしかけた手を止める。
『どうした、ツネ公?早う入らぬか。』
『宜しいので?』
『構わんと言っておろう。』
恒彦が尚も躊躇しつつも、思い切って襖を開けると…
『アーーーーーンッ!アッ!アッ!アッ!もっと!もっと!もっと!アーーーーーーーンッ!』
真正面を向いた十一歳の全裸の少女…香織が、後ろから微かに膨らみを帯びた乳房と股間の神門(みと)を弄られ、身体(からだ)を弓形にして声を上げていた。
『よーしっ、よしよし、良い子じゃ、良い子じゃ。良いぞ、良いぞ、うまいぞ。』
中肉中背の白髪混じりの男が、後ろから調子付かせるように言うと、腰から頸にかけて、背骨に沿って丹念に舐めてゆく。
火盗(ひどり)の平蔵なる、この男…
歳の頃は、既に六十を過ぎていると言うが…
未だ闊達としていて、見た目には四十代にも見える…
周囲では、香織と同じく、三人の少女達が、やはり全裸になり、平蔵と少女の姿に見入りながら、身体(からだ)をむずつかせていた。
『鈴子、美雪、花子…おまえ達もな、身体(からだ)の反応に素直になれ…我慢せずに、身体(からだ)が求めるままに、求める通りにするのじゃ。』
『はい!』
『はい!』
『はい!』
十一の鈴子と美雪、十二になったばかりの花子は、平蔵に言われるままに、自らの胸と股間を弄り出した。
『アンッ…アンッ…アンッ…』
『アーッ…アーッ…アーッ…』
『アッ…アッ…アッ…アッ…』
少女達は、あるかなしかの乳房を揉み、乳首を摘み、発芽の兆しもない神門(みと)を、ワレメ線になぞりながら…
鈴子はうずくまるように身を丸め…
美雪は香織同様に起こした身体(からだ)を弓形に…
花子は仰向け大股開きにした腰を激しく上下させ…
それぞれの反応を示しながら、憚る事のない声を上げていった。
『そうじゃ、そうじゃ、みんな、その調子じゃ。』
平蔵は、少女達を一巡して、白髪混じりのやや太めな眉の目を細めると…
『では、香織…そろそろ、行くぞ。』
言いながら、十分に潤った神門(みと)のワレメに、穂柱の先を押し当てる。
『はい、平蔵様…』
『哲で良い。哲人のテッちゃん…俺は主水のバカと違って頭が良くてな、みんなからそう呼ばれてる…教えたろう?』
平蔵が片目を瞑って言うと…
『はい、テッちゃん。』
香織も気をほぐしたように笑みを返した。
『そうだ、肩の力を抜いて、身体(からだ)を楽にし…そうだ、そうだ…』
平蔵は言いながら、ゆっくりと膨張した穂柱を、香織の神門(みと)から参道へと挿入させてゆく。
『アッ…アッ…アッ…アッ…』
一瞬…
香織は、それまでと打って変わって顔を顰め、歯を食いしばる。
『大丈夫…少しの辛抱…少しの辛抱…』
平蔵は、まるで初めてのおぼこをあやすような声をかけながら、慎重に奥まで入れて行き…
ゆっくりと身体(からだ)を動かし始めた。
七つの時から、数多の男達に掻き回されてきたと言うが…
やはり、十一は十一、中はまだ狭く小さい。
『アッ…アッ…アッ…』
香織は尚も顔を顰め、歯を食いしばり続けるが…
平蔵が優しく頭を撫でながら、慎重に…しかし、慣れた調子で腰を動かすにつれ…
『アンッ…アンッ…アンッ…』
香織の顔も声も次第にほぐれてゆき…
やがて…
『アーーーーーンッ!アッ!アッ!アッ!アーーーーンッ!』
前にも増して、心地よさげな喘ぎをあげだし、自分から腰を動かし出した。
『よーーーーしっ!!!その調子じゃ、その調子じゃーーーーーっ!!!』
平蔵もまた、香織の声に合わせて、腰の動きを軽やかに早めてゆく。
併せて…
『アッ!アッ!アッ!アッ!』
『アーッ…アーッ…アーッ…』
『アッ…アッ…アッ…アッ…』
周りの少女達も、声も身体(からだ)の反応も、一段と大きく派手になっていった。
やがて…
『アーーーーーン!!!!!』
『アーーーーーン!!!!!』
『アーーーーーン!!!!!』
『アーーーーーン!!!!!』
少女達が、ひときわ大きな声を一斉にあげると同時に、時が止まる…
次の刹那…
平蔵が穂柱を奥まで挿れて留めた香織の参道から、白濁したものが大量に溢れ出してきた。
『さあ、この後はどうするか、わかっておるな。』
『はい、平蔵様。』
『違うだろ?』
『アッ!テッちゃん…』
『そうじゃ、そうじゃ、良い子じゃ良い子じゃ。』
平蔵が、存分に白穂を放った穂柱を引き抜きながら言うと、香織はまたニッコリ笑い、胡座をかく平蔵の股ぐらに顔を埋めた。
『よしよし、先端を舌先でチロチロ擽りながらな、しっかり空になるまで、吸い込むんじゃぞ。』
平蔵は優しく香織の頭を撫でながら、漸く恒彦の方に目を向けた。
周囲では、正気に帰った他の少女達が、また、まだ余韻の残る股間を弄りながら、香織のする事をジッと見つめている。
『朧忍術(おぼろしのびじゅつ)…
一斉昇竜か…』
恒彦がボソッと言うと…
『忍術(しのびじゅつ)ではない。房術だ。
厳密に言えば、房道の作法だ。』
『作法?』
『そうだ。我ら山人(やまと)の忍(しのび)衆は、穂供(そなえ)は食事と同じ、命を繋ぐ嗜みだと考えておる。
命や心を繋ぐ嗜みは、食事、茶飲み、神祇(みかみ)への祈祷と同様、道があり、作法がある。』
『だから、幼いものにも平然とそれを行い、見せつける…』
『当然だろう。小さい時から、箸の使い方や椀の持ち方を見せて教える。全く同じ事だ。』
平蔵の言葉に、恒彦が一層、眉を顰めると…
『何だ、おめえも主水のバカと同じ顔するんだな。』
『中村の主水…』
『そうだ。あのバカ、麓人(くまそ)には麓人(くまそ)、海人(はやと)には海人(はやと)の流儀がある。それを、山人(やまと)の流儀を押し付けるのは、品位に欠けるとか何とか…
馬鹿言っちゃいけねえ。麓人(くまそ)は、房道を変に汚ねえものだと決めつけて、抑圧するから、歪んで、相手を痛めつけたり傷つけたりするようになる。元来、戯け者の熊や、気高い狼も、飢えれば凶暴な野獣と化すようにな。
食うのも穂供(そな)えるのも、満たされてこそ鎮まり、飢えれば荒ぶる…
当たり前の事を当たり前だと教えてやるのに、山人(やまと)も麓人(くまそ)もあるかってんだ。
それを、主水の馬鹿は…』
『まあ、おめえが主水に惚れ狂ってるのはよくわかったが…』
『おいおい、何だと?』
『だから、軽信が名無しとか言う奴に惚れ狂ってるように、おめえさんは、中村の主水に…』
『バカ言っちゃーいけねー!何で、俺が…』
平蔵は叫び立ち上がりかけると…
『痛てっ!』
思わず声を上げて、股間に手を回した。
香織の小さな口いっぱいに頬張っていた穂柱に、歯が当たったのである。
『もっ!申し訳ありません!』
それまで、満面の笑みで平蔵の穂柱をしゃぶり舐め回していた香織が、瞬時に凍りつく。
七つの頃から、ほんの少しでも歯を立てれば、凄惨な仕置きが待っていた記憶が蘇ったのだ。
しかし…
『おっ!すまんすまん、急に動いた俺が悪かった。』
『申し訳ありません…申し訳ありません…』
シクシク泣き出す香織に…
『大丈夫だ。俺はもう痛くねぇ。それより、おまえの舌使い、なかなかなもんだ。ほれ、見い、こんなにまた勃ってきおったわ。』
平蔵が優しく頭を撫でて言うと…
『まあ、本当。』
香織もまた、クスクス笑い出した。
『さあ、もう一舐めしておくれ。後でまた、しようなー。』
『はい、平蔵…いいえ、テッちゃん!』
平蔵が満面の笑みで何度も頷きながら香織の頭を撫でてやると…
『わっ!酷い!次は、私って約束でしょ!』
『ううん!私よ!』
『違うわ!私ったら、私よ!』
鈴子と美雪と花子が、一斉に平蔵に飛びつき、本当に噛みつき、つねり出した。
『わっ!痛ぇ!わかった!わかった!次はおめえ達だ!誰からとかではなく、一度にまとめて相手してやる!だから…だから…』
平蔵が忽ち悲鳴をあげ出すと…
『後じゃダメ!今してっ!今すぐしてっ!』
『でないと、テッちゃんの穂柱、本当に噛み切っちゃう!
『それっ!』
鈴子が平蔵を押し倒して唇を吸い、美雪は毛の生えた乳首の辺りを舐め回して、花子が思い切り穂柱を咥えて軽く歯を立てると…
『よしよし!それじゃあ、今からまとめて相手してやる!まとめて相手してやるぞ!』
平蔵も片端から小さな乳首を舐め、乳房を揉み、発芽のない神門(みと)を弄りながら、恒彦に苦笑いをして見せる。
『すまん!こんな事情だ、もう少しだけ…
もう少しだけ、待ってくれ…』
恒彦は溜息混じりに首を振りながら立ち上がると…
少し離れた布団から、ニコニコ笑ってこちらを見つめる十三になったばかりと言う少女…
若芽と目が合った。
若芽は、忽ち頬を赤くして俯きだす。
『若芽、あの子達は、無事に送り届けてやったぞ。』
恒彦が言うと…
『ありがとう、ございます。』
若芽は、俯いたまま、細い声で礼を言った。
『みんな、最後までおめぇと一緒に行きたがっていた。俺も、おめえも…他の青兎達も行かせてやりたかった。本当に、よかったのか?これで…』
『はい。あの子達は、既に死んだものとされてる子達…いなくなったところで誰も気にも止めません。でも、私達は…』
『おめえには、家族がいねえと聞いたが?おめえが抜けたからって…責を問われる社(やしろ)に義理だてする筋合いもねぇだろう?』
恒彦が言うと…
『でも、あの子達には、みんな家族がおります。』
若芽は、平蔵と戯れ、ケラケラ笑う少女達に、愛しげな眼差しを向けた。
『あの子達って…どうぜ、試しが終われば、バラバラに聖領(ひじりのかなめ)の島社(しまつやしろ)に送られるんだぞ。現に、他の十人はもう…』
『それでも、縁あってここまで共に来た姉妹達…
ずっと、自分一人丸裸にされて、好奇の目線に晒されて、ボロボロになるまで弄ばれて…
やっとできた姉妹達ですもの…』
『だから、最後まで側にいてぇと…
その後、何十年、これまで以上の地獄を見ると知っていて、それでも、ほんの少しの間でも…』
『私の大切な妹達ですから…』
若芽がそう言って口を閉ざすと、恒彦もしばし押し黙った後…
『何か、欲しいものはねえのか?』
『欲しい…もの?』
『そうだ。食いてぇものでも、着てぇ着物でも…
聖領(ひじりのかなめ)に行けば、また、これまでと同じに着物を剥ぎ取られ、ろくに食うものも与えられず、命ある限り貪られる。せめて、今のうちだけ…』
言いかけると、若芽は答える代わりに、堪えきれなくなったように、恒彦の胸に顔を埋めた。
『おまえ…』
見れば、ハラハラと涙を溢れさせ、身体(からだ)を震わせている。
佳奈…
恒彦は、一瞬、口にしかけたその名を飲み込むと、若芽の小さな肩をそっと抱きしめてやった。
『眠ったようだな。』
半刻ほど過ぎた頃…
恒彦が振り向くと、褌もつけぬ平蔵が、寝巻きを一枚だけ引っ掛けるように羽織りながら、後ろに立っていた。
『終わったのか?』
『見ての通りだ。』
平蔵が軽く顎をしゃくって見せると、少女達は、全裸のまま大の字になって、寝息を立てていた。
見れば皆、神門(みと)のワレメから、白濁したものを溢れさせている。
『あいつらも、七日後には試しを受けて、それぞれの島社(しまつやしろ)に送られる。
それまでに、少しでも穂供(そなえ)の楽しさ、心地よさを教えてやりてぇ。
死ぬまで、痛くて苦しいままでは、余りに哀れだからな。』
『死ぬまで痛い苦しいは哀れ…
同じ事を言い、同じ理由から、主水は一切、手をつけず、ひたすら飯事やお手玉の相手をしてやっていたな…先に送られた十人に…』
『あいつは、やっぱりバカな奴だ…みんな、あいつを慕い、抱かれるのが一番嬉しかったろうに…隠里の奥方様同様にな…』
『隠里…俺がいつもおめぇに預けていた、穢兎(けがれうさぎ)を…』
恒彦が言いかけると、平蔵は答える代わりに軽く口元を引き攣らせた。
『ところで…今度の穢兎(けがれうさぎ)は、何故、俺に預けなかった?』
『もっと、確実な引き取り手を見つけた。』
『軽信か?』
『朧衆が山でどれほどのもんかは知らねぇ。童(わらべ)どもも手を出せねえくれぇとは聞いてるが…
所詮は、和邇雨神職(わにさめみしき)の配下…何処まで匿い、どこまで守り切れるかは保障がねぇ。
だが、軽信に預ければ…』
『おめえ、楽園って場所に行った事があるのか?』
『楽園どころか…兎津川(とつかわ)を離れた事すらねぇ。それが?』
恒彦が怪訝そうに聞き返すと、平蔵はまた、難しい顔をして押し黙った。
『テツ…おめぇも、軽信は気に入らねえか。俺も十分不愉快な女だがな…』
『俺は、基本、抱かねえうちは、その女を評価しねえ。女は抱いてみなけりゃわからねえ。まして、顔も見た事のねぇ女とあってはな…ただ…』
『ただ?』
『若がたいそう、嫌っておられる。』
『名無しか?みてぇだな。軽信は相当惚れ込んでいるようだが、まるで相手にされず、拗ねてる感じだ。』
『それと…主水の奴が…』
『また、主水か…こっちは、相当、惚れあってるな。あいつも、滅多に開かぬ口から出てくるのは、おめえの名ばかりだ。』
『ケッ!あいつが、俺の剣の腕に嫉妬してるのは確かだが…俺は、あいつがでぇ嫌ぇよ。』
『なら、何故、軽信の話であいつの名が出る。』
『でぇ嫌ぇだが、俺はあいつを信じてる。あいつの見立て…あいつの言葉を…
それで、あいつは言ってやがった。』
『今に、俺が泣きを見ると…』
『そうだ。特に、あいつに子供達を預けるのだけはやめた方が良い。若にも、いつも申し上げておったのだがな…
おめえも若も、何だかんだ言って人が良い。近づく相手にすぐ心を許してしまうところがある。生理的に受け付けなくてもな…』
『あの子達…穢兎(けがれうさぎ)達は、楽園で幸せにならねぇってのか?優しい父さんや母さんに引き取られて、うめぇもんをたらふく食わせて貰えねえってのか?』
恒彦が眉を吊り上げ、横目で睨み据えるように言うと…
『おめえが、いつか泣きを見る。死ぬまで、自分を許せなくなる…そう言ってるんだ。』
平蔵は、何処か寂しげな目で恒彦を見つめながら、嘆息して言った。

兎神伝〜紅兎四部〜(27)

2022-02-04 00:27:00 | 兎神伝〜紅兎〜革命編其乃二
兎神伝

紅兎〜革命編其乃二〜

(27)遣属

朝靄薄れゆく大兎海峡。
飛沫の彼方より、一隻の聖領船(ひじりのかなめのふね)が朧に姿を現す。
それは、蜃気楼の見せる幻の如き雅な船…
いや…
三階建ての船室の入母屋根には、金箔瓦が葺かれ…
翡翠の鬼瓦に、雨の如く吊るされた、金銀細工の庇飾り…
朱に塗られた壁一面には、細やかな意匠…
それは、さながら海神(わたつみ)の宮殿のようでもあれば…
荒れ狂う波上に咲いた蓮のようでもあった。
迎賓楼門前では、軍弾庁の招請を待つまでもなく立ち現れた近在の産土宮司(うぶすなのみやつかさ)達が、呆けたように見惚れている。
しかし…
『ケーッ!また、あんなガラクタで来やがって!』
西武警邏衆弾正与頭(せいぶけいらしゅうだんじょうくみがしら)、館(たち)の弘成(ひろしげ)は、埠頭に佇み眺めやりながら、吐き捨てるように言った。
『あんなもん、船でも何でもねーっ!ただの箱!重石の箱だ!』
『声がでけぇぞ、弘成。後ろに控える神職(みしき)達に聞かれたら面倒だ。』
西武警邏衆軍部与頭(せいぶけいらしゅういくさべくみがしら)、沖浦の友和も、同僚を嗜めるように言いつつ、表情は険しい。
『おめぇ、何も感じねぇのか?迎えに出向いた仲間が、あんな船を漕がされて戻って来るのを見せられてよ。今度もいってぇ何人の渡瀬人(とせにん)が流されてるこったか…』
弘成が尚も歯軋りして言うと…
『良いから黙ってろ。』
友和は、やはり嗜めるように一言言うと、苦飯噛み潰した顔をして押し黙った。
思いは、この同僚と同じだ。
出迎えに行く時…
熟練の船職人達が、荒波に備えて粋を凝らせて造った船に乗り、選び抜かれた渡瀬人(とせにん)達が迎宗使(げいそうし)として送られる。
しかし、その船は満載した貢物と共に取り上げられ、代わりに見栄えばかりの粗雑な船に下級神職(みしき)の使いの者を載せて送り返される。
漕ぎ手は、勿論、迎宗使(げいそうし)船の水夫として送り出した渡瀬人(とせにん)…
その際、渡瀬人(とせにん)達は、同伴を命じられた十二歳以下の娘達の着物を一枚残らず剥ぎ取らせ、人質として置いて行かされる。
戻るまでの間、一切着物を着せられない娘達に、剥いだ着物を着せて連れ帰る事が許されるのは、生きて送り出した使者を連れ帰った者のみ。
しかも、使者に一人でも死人が出れば、残りの渡瀬人(とせにん)達は全員奴隷にされ、贖兎(あがないうさぎ)とされた娘達は、命ある限り弄ばれ続ける定めとなる。
これまで、一体、何人の渡瀬人(とせにん)達が、そうして同伴した娘達と共に消えて行った事か…
しかし…
何よりも腑煮えくり変えるのは、船首に書かれた幟の文字…
遣属使(けんぞくし)…
『遣属(けんぞく)…
我らを属領民(やからのかなめのたみ)だと…
奴らが宗主(むねつあるじ)だと…
我らの貢物がなければ、三日で干上がる青瓢箪のくせに…
そして…
その船に乗せられた、聖領(ひじりのかなめ)では、最下級の神職(みしき)が携える薄っぺらい書類を、涎を垂らして待ち焦がれる、背後に控えた産土宮司(うぶすなのみやつかさ)達…
『友和、何を考えている。』
不意に、彼らの先頭に立つ男…
大門軍弾丞(だいもんぐんだんじょう)、渡の哲也が目を細めて口を開いた。
『いえ、別に…』
『おめえの言いてえ事は、だいたい察しが付いている。
だがな…あの青瓢箪どもが携えてくる紙切れが、一触即発の諸社領(もろつやしろのかなめ)の紛争を、辛うじて抑えている。』
『逆に、うちの赤瓢箪どもの対立を煽っているとも言えやす。』
友和は瞑目したまま、ムスッと一言呟き返した。
『まあ、待て…それも、あと少しの辛抱…我らが浦主(ぼす)が、必ず神領(かむのかなめ)を一つにまとめてくんなさる。そうなれば…』
『独立…』
『そうだ。用済みの青瓢箪どもとは、永久に手を切れる。』
『どうですかね…
浦主(ぼす)…鱶腹裕次郎(ふかはらゆうじろう)とて、所詮は神職家(みしきのいえ)の者…
あっしは、お頭ほど信じる気にはなれやせん。』
やがて、見栄えだけは絢爛な聖領船(ひじりのかなめのふね)が、ゆっくりと接舷してきた。
岸に渡板が掛けられると、中から最初に姿を表す男…
『井浜の源太…げんさん…』
眉が太く性悪な目つきの男に目を留めるなり、一層細められた哲也の眼差しに複雑な影をさす。
井浜の源太…
哲也が心の中で呼びかけた男は、彼の顔を一瞬目に留め物言いたげな眼差しを送るが、すぐにそっぽを向いて前にすすむ。
次に、彼らの配下と思しき、聖領渡瀬人(ひじりのかなめのとせにん)達が姿を現し…
首に縄を掛けられ数珠繋ぎにされた十一から十三くらいまでの全裸の少女達が、彼らに鞭打たれながら、引き摺られてやって来た。
あれは、去年、迎宗使船に水夫として乗り込まされたり渡瀬人(とせにん)達の娘…
哲也が心の中で呟くと同時に…
『繋いどけ!』
源太の図太い声に命じられるまま、聖領渡瀬人(ひじりのかなめのとせにん)達は少女達を乱暴に岸壁に連れ出し、柵に繋いだ。
哲也の後ろでは、友和が固く瞑目し、弘成が目を血走らせ、歯軋りしながら、この光景を見つめている。
すると…
『お父さん!お父さん!』
『浮音(ふね)!
柵に繋がれた少女の一人が、目の前に引き摺られてきた、やはり全裸にされた傷だらけの男に取り縋って泣いていた。
『さあて、おまえはもう用済みだ。今生の別れにしっかり娘の顔を見ておけ。』
『航海中、毎日、実の娘に穂柱しゃぶって貰って、良ぇ思いしたんだ。もう、この世に未練は無かろう。』
二人の聖領渡瀬人(ひじりのかなめのとせにん)が、ゲラゲラ笑いながら、男の髪を掴んで娘に突きつける。
『お願い!お父さんを殺さないで!殺さないで!』
少女がなおも泣きじゃくって父に取り縋ると…
『そうか、そうか、よしよし、それじゃあ、もう一度、父ちゃんの穂柱をしゃぶってみな。』
聖領渡瀬人(ひじりのかなめのとせにん)が、ニヤけながら娘に言った。
『それで…それで、本当にお父さんを助けてくれるのですか?本当に?本当に?』
『ああ、おめぇが、船の中でしたのとおんなじに、ちゃーんと父ちゃんの穂柱から白穂を絞り出して、上手に飲み込めたならな。』
全裸にされた男はそれを聞くと…
『浮音、よせ…もう良い…俺はもう良い…だから…』
最後の力を振り絞るように、娘に言った。
しかし、娘は飛びつくようにして父親の穂柱を咥えると、必死に舐めしゃぶり出した。
『よせ…やめろ…やめるんだ…』
男は娘から顔を背け、涙目で言いつつも、穂柱は自然と娘の口腔内で膨張してゆき…
『ウッ!ウッ!ウッ!ウゥゥッ!』
呻くような声を漏らすと同時に、大量の白穂を放った。
次の刹那…
『お父さんっ!』
娘が叫ぶより早く、聖領渡瀬人(ひじりのかなめのわたせにん)二人は、同時に男の脇腹を突き刺しえぐった。
『ふ…浮音…』
男は、最後の声を漏らしながら、血の海に沈み、息絶えた。
『お父…さ…ん…』
娘は、父の亡骸が足元に転がると…
『イヤッ…イヤッ…イヤーーーーーーーーッ!!!!!』
半狂乱の声を上げて、泣き叫びだした。
『やっ…野郎っ!』
『よせっ!弘成っ!』
遂に耐えきれなくなり、長脇差を抜きかける弘成を友和が遮るのと同時に…
『離せっ!離せっ!源太っ!てめぇ!ぶっ殺す!ぶっ殺してやる!』
新たに姿を現した男が、長脇差を抜いて叫び暴れるのを、周囲の男達が五人がかりで必死に止めに入った。
『あっ…アイツ…』
『柴の俊雄…』
弘成と友和が同時に呟くと…
『どうした、俺をやりてぇか?うーん?』
源太が、抑えつけられた俊雄の側に行き、したから覗きこむように睨み据えた。
『なら、やってみな。聖領(ひじりのかなめ)に残した娘が、繋がれてる奴らと同じ目に遭わされてもよけりゃーな。』
『て…てめぇ…』
俊雄は、尚も憎悪に燃えた眼差しを源太に向けつつ、振り上げた長脇差を力なく落としていった。
そこへ…
『ホッホッホッ…何の騒ぎにおじゃりますかな?』
垂纓を被り、錦に彩られた水干を着込んだ神職(みしき)が五人、迎宗使(げいそうし)である神領(かむのかなめ)の神職(みしき)達と警護の神漏兵(みもろのつわもの)達に伴われ、ゆったりとした足取りで姿を現した。
『何かと思えば…』
先頭に立つ神職(みしき)が、血の海に転がる亡骸にとも、取り縋って泣き喚く少女にともつかず、目線をくれて舌舐めずりをした。
そこへ…
『仰せの通り、娘に穂柱を咥えさせながら、始末しやした…』
源太が進み出て言うと…
『それは、良い事をしたのう。ちゃんと、白穂を放たせてやってから…で、おじゃろうな。』
『へぇ…』
『上出来、上出来…麻呂も、あの娘には楽しませておじゃったが…実に具合がようおじゃった。さぞかし、あの虫ケラも、良い思いをして逝ったであろうのう。』
神職(みしき)はほくそ笑みながら言い…
『まこと、まこと…あの娘は具合ようおじゃった。』
『特に一番最初、父親の前で五人掛りで泣いて暴れるのを抑えつけて可愛いがってやった時は最高でおじゃったの。』
『何の何の…少しでも噛めば、父の手足の指を寸刻みで切り落とすと言ってやって、我らの穂柱を咥えさせてやった時もなかなかでおじゃりましたぞ。』
『できれば、父の骸の前でも、一度五人で抱いてみたいものよのう。そう、骸が腐り果てる前にの。』
他の神職(みしき)達も口々に言うと、ホッホッホッ…と、手に持つ笏で口を覆い笑い出した。
『野郎…』
『許せぬ…』
遂に、弘成だけでなく、友和も耐えきれず、長太刀に手をかけるや…
『これは、これは、遠路はるばるようお起こし下された。』
哲也が二人の前を遮るように進み出るや、両袖を合わせて膝をつき、神職(みしき)の前に平伏した。
『それがしは、西部大門軍弾小丞(せいぶだいもんぐんだんすないのじょう)を務めさせて頂きまする、渡の哲也にござんす。どうぞ、お見知りおきを…』
『ホッホッホッ…そちが、噂に名高う大門軍弾丞(だいもんぐんだんじょう)の哲也か…
麻呂は、遣属使筆頭、神妣聖宮社(かぶろみのひじりつみやしろ)の八乃祝(やつのほり)、猪狩長助(いがりのちょうすけ)でおじゃる。
出迎え、大義でおじゃる。』
『へぇっ…では、早速、迎賓楼までご案内を…
我が大門の産社(うぶやしろ)様方が、まずはあちらにて、宴の席を設けさせて頂いておりやす。』
『ホッホッホッ…それは楽しみじゃのう。では、案内いたせ。』
遣属使筆頭猪狩長助八乃祝(けんぞくしひっとういがりのちょうすけのやつのほり)が言うと、哲也は更に恭しく平伏し、案内を始めた。


兎神伝〜紅兎四部〜(26)

2022-02-04 00:26:00 | 兎神伝〜紅兎〜革命編其乃二
兎神伝

紅兎〜革命編其乃二〜

(26)軍団

渡瀬人(とせにん)の船は大きく分けて二つある。
一つは、仔兎神(ことみ)を産み、青兎となった赤兎を乗せ、聖領(ひじりのかなめ)へと送る大門船。
一つは、仔兎神(ことみ)を産めず、穢兎(けがれうさぎ)とされた赤兎を乗せる小門船である。
それぞれの船の名の由来は、港の呼称にある。
神領(かむのかなめ)では、海港(わたつみなと)を門、川港(かわつみなと)を津と呼ぶ。
津の中で、青兎や穢兎(けがれうさぎ)を出航させる津を兎津(とつ)と呼ぶのは、先に話した通りだが…
門の中で、青兎と穢兎(けがれうさぎ)を出航させる門を、兎門(ともん)と言う。
青兎と穢兎(けがれうさぎ)を出航させる門は、二つに分かれている。
理由は、行き先の違いである。青兎は聖領(ひじりのかなめ)に送られるのに対し、穢兎(けがれうさぎ)は異国船(ことつくにのふね)に売られて行く。その異国船(ことつくにのふね)とは、海賊船であったり、密貿易船であったり、闇の品を扱う船である。故に、本家領(もとついえのかなめ)である聖領(ひじりのかなめ)からの船を迎える門は分ける必要があった。
この青兎を出航させる門を大兎門(だいともん)、穢兎(けがれうさぎ)を出航させる門を小兎門と言う。長じて大兎門(だいともん)は大門、小兎門(しょうともん)は小門(しょうもん)と呼ばれるようになった。
ここから、大門へ向かう船を大門船、小門へ向かう船を小門船と言う。
ただ、当初は船も船を操る渡瀬人(とせにん)も、はっきり分かれており、船の幟も形も違っていた。
しかし、ここ二百年の間、大門船と小門船に余り違いが見られなくなった。
それと言うのも…
格式は、聖領(ひじりのかなめ)と直接折衝し、それ如何で今後の神領(かむのかなめ)における社領(やしろのかなめ)の立ち位置も変わる事から、大門船の方が格式は高く特権も多い。
対し、小門船は、穢兎(けがれうさぎ)を隠れ蓑に、数多の密輸品を搭載する事ができる。
実際のところ、赤兎が本当に仔兎神(ことみ)を産む事は殆どない。七つの時から、連日数多の男達の穂供(そなえ)を受け、御祭神はぼろぼろになり、子供を産めなくなる事の方が多いからである。それを、別の白兎が産んだ仔兎神(ことみ)、もしくは兎神家(とがみのいえ)で生まれた赤子を、赤兎が産んだと称して、青兎にして、聖領(ひじりのかなめ)に送る事が多いからである。
聖領(ひじりのかなめ)もまた、そこのところは百も承知しており、要するに、殆ど廃れてしまった君臣関係を、青兎を送らせる事で、体裁を保てれば良いと言うのが、本当のところであった。
そうした中、穢兎(けがれうさぎ)として売り捌かれるのは、仔兎神(ことみ)を産めない、産まなかったと言うより、余りにもぼろぼろになり過ぎて、使い者にならなくなった赤兎である。正直なところ、そんなモノは殆ど売物にはならない。処分する手間を省く為に小門船に乗せると言うのが本当のところである。乗せる渡瀬人(とせにん)達も、まともに売り飛ばそうとは考えず、小門に着くまでの間、徹底的に弄びつくし、死んだら川や海に投げ込んで済ます事が多い。
むしろ、穢兎(けがれうさぎ)の始末料代わりに与えられる積荷改免除の特権を行使しての密輸が本命とも言えた。
大門にも積荷改免除の特権はあり、青兎を隠れ蓑に密輸は行っていなくもなかったが、接舷許可が降りている海港(わたつみなと)は、大門のみ。そして、神領(かむのかなめ)に大門は一つである。
対し、小門は全社領(すべてのやしろのかなめ)に一港あり、小門船は、どの小門に接舷する事も許されていた。
自然、小門船が密貿易で得られる利益は、大門船の比ではない。
そこで、まず幾艘かの大門船が穢兎(けがれうさぎ)を積む鑑札を求めた。元々は、密貿易の利潤を求めると言うより、渡瀬人(とせにん)達の慰みとするのが目的であった。青兎も、聖領(ひじりのかなめ)に着くまでの合間、田打の名目で弄ぶ事を許されていたが、それでも期日までに聖領(ひじりのかなめ)に引き渡さねばならず、もし、万一の事があれば処罰の対象となる。そこで、何をしても良い穢兎(けがれうさぎ)の搭載と鑑札を求めた。しかし、いざ穢兎(けがれうさぎ)を搭載させれば、諸小門(もろつしょうもん)で得られる利益が計り知れぬところから、自然、どの大門船も穢兎(けがれうさぎ)の鑑札を求めた。
一方…
小門船は、大門船の渡瀬人(とせにん)達がもつ特権を求めた。
大門船も小門船も、諸社領(もろつやしろのかなめ)通行勝手と積荷改免除の特権を持つ。
ただ、聖領(ひじりのかなめ)との交渉権を持つ大門船の渡瀬人達は、権神職家(かりつみしきのいえ)と見做されると同時に役者…と、呼ばれる官職に就く道が開かれていた。
就ける官職は三つ…
一つは、兎津川近宿(とつかわのちかきやど)の統括と兎津川(とつかわ)の治安を預かる刑部職(ぎょうぶしき)…
一つは、兎門町(ともんのまち)の行政と兎門近海(ともんのちかきうみ)の治安を預かる弾正職(だんじょうしき)…
一つは、兎門町(ともんのまち)の防衛を担う軍部職(いくさべしき)…
大門船が、穢兎(けがれうさぎ)を隠れ蓑に密貿易を活発化させるにつれ、小門船との間に利権争いが起こるようになった。
すると、大門船は役者に就ける特権を濫用し始めた。小門船の不正を一方的に取締り、あるいは捏造して、潰しにかかったのである。
対し、今度は小門船が、青兎の搭載と鑑札を求めるようになった。
当初、神職家(みしきのいえ)は、これを渋った。大門船との繋がりの強さもあるが、これ以上、神職家(みしきのいえ)に次ぐ力を持つ者を増やしたくなかったのである。
しかし、小門船は、穢兎(けがれうさぎ)の始末に託けて、神職家(みしきのいえ)の裏の仕事を引き受けていた。忌子(いむこ)を初めとする、世に出てはまずい、彼らの子達の始末である。
その弱みを握られていたのに合わせ、大門船の膨張を苦々しく思っていた神職家(みしきのいえ)の思惑も絡み、遂に小門船にも青兎の鑑札が与えられた。
結果として、これがまた、利権争いに重ねて、権力抗争を生み出し、深刻な問題となった。
そこで、大門の軍部職(いくさべしき)と弾正職(だんじょうしき)を統括する新たな官職…軍弾職(ぐんだんしき)が設けられ、これに抗争の取り締まりを一任した。
軍弾職の長として、神職家(みしきのいえ)から大丞(だいじょう)が一人、大門船の渡瀬人から小丞(しょうじょう)が一人選ばれた。
この大丞と小丞は、どちらも通常、軍弾丞(ぐんだんじょう)と呼ばれている。
また、大丞は、慣例的に鱶腹和邇雨家(ふかはらわにさめいえ)から輩出される事から、鱶腹軍弾殿とも呼ばれ、強大な勢力を誇っていた。
一方、小丞は、鱶腹軍弾丞と分けて、大門軍弾殿と呼ばれ、この勢力もまた、鱶腹軍弾に匹敵する勢力を誇っていた。
この鱶腹軍弾(ふかはらぐんだん)と大門軍弾(だいもんぐんだん)も長らく反目しあっていたのだが…
十年程前より、一人の男が大門軍弾(だいもんぐんだん)に就く事により、両者は手を結ぶ事になった。
その男とは…
日活衆渡一家(にっかつしゅうわたりいっか)の渡瀬人(とせにん)
渡の哲也と言う。
彼は、刑部職(ぎょうぶしき)に就いていた頃、大小門船どちらの不正にも目を瞑り、手を出さなかった事から、案山子の半兵衛とも呼ばれていたが…
何故か、新たに鱶腹軍弾職(ふかはらぐんだんしき)に就いた裕次郎の強い推挙で大門弾正職(だいもんだんじょうしき)に就くと実力を発揮。
見る間に昇進して、大門軍弾職に就いた。
哲也は、大門軍弾職(だいもんぐんだんしき)に就くや、何故か大門船ではなく、小門船出自の渡瀬人(とせにん)達を多く配下に抜擢する一方…
自ら鱶腹軍弾の傘下に加わる事を申し出た。
ここに、大門軍弾(だいもんぐんだん)を吸収した鱶腹軍弾(ふかはらぐんだん)は、鱶腹総宮社(ふかはらふさつやしろ)に次ぐ大勢力を誇る事になり、この勢力は、いつしか鱶腹軍団と呼ばれるようになった。

兎神伝〜紅兎四部〜(25)

2022-02-04 00:25:00 | 兎神伝〜紅兎〜革命編其乃二
兎神伝

紅兎〜革命編其乃二〜

(25)報酬

『相変わらず、鮮やかな仕事をするわね。』
軽信は、秘密拠点の一つに持ち込まれ、山積みされたものを目の前すると、感嘆の声を上げた。
『あんた達の金子にして、凡そ千両分の美国(うましくに)…
重ねて、兵士にして千人分の武器弾薬…
一夜にして、よくやったわ。
やっぱりあんたは、あいつ何かと違う。勇敢なる私達の同心、ますます惚れなおしたわ。
ねぇ、どお?今から私と…』
『今回は、報酬を貰いてぇ。』
恒彦は、相変わらずの笑みと流し目を傾けて擦り寄る軽信の言葉を、眉を顰め遮って言った。
『報酬?良いわよ、いつだって言ってるじゃない。欲しいだけ差し上げてよ。幾ら欲しいの?』
『金子は要らねえ。』
恒彦が言うのと同時に、近く控えていた亀四郎が、五人の少女達を連れてきた。
『この子達は?』
『あの船に積み込まれていた穢兎(けがれうさぎ)だ。この子達を楽園に連れて行って貰いてぇ。』
『なるほど。良いわ、連れてって上げる。』
軽信が快諾すると…
『さあ、お前達、良かったなー。これから、このお姉ちゃんに、良いところに連れてって貰えるぞ。』
それまで厳しい顔して軽信の顔を見つめていた亀四郎が、忽ち目尻を下げて笑いかけながら、穢兎(けがれうさぎ)の少女達に言った。
『良いところ?』
『そうだ。向こうについたら、すぐに優しい父さんと母さんになってくれる人が待っていた、暖かいお家に連れてってくれるんだぞ。もう、裸でいなくても良いし、悪いおじさん達に、よってたかって虐められる事もない。チョゴリって可愛い着物着て、美味しいものを食べて、ガッコウって所に行って、毎日大勢の友達と、一緒に勉強したり遊んだりして過ごせるんだぞ。』
『お結、食べられる?』
『大根煮は?』
『芋汁は?』
『食えるとも!毎日、鍋いっぱい拵えて貰って、腹一杯食えるんだぞ。』
亀四郎が手振り身振りで大仰に言うと…
『わあっ!』
『行きたい!行きたい!』
『早く行きたいなー!』
穢兎(けがれうさぎ)の少女達は、一切に手を叩いてはしゃぎだした。
しかし…
『ねえ、若芽姉ちゃんは?』
『若芽姉ちゃんは、何処にいるの?』
『若芽姉ちゃんと一緒に行きたい。』
穢兎(けがれうさぎ)の少女達が言い出した途端、亀四郎は忽ち言葉につまった。
すると…
『若芽は行けねえ。』
恒彦が、ぶっきら棒に言った。
『どうして?』
『若芽姉ちゃんも連れてってよ。』
『ねえねえ、お願い。私、良い子にするから…また、着物脱いで過ごしても良い。おじさん達に、気持ち良い事いっぱいさせてあげる。』
『私、お父さんになってくれる人の穂柱、毎日舐めて上げる。白穂だって、一雫もこぼさず呑んであげるよ。』
『お願い…若芽姉ちゃんも連れてって…お願い。』
穢兎(けがれうさぎ)の少女達が、涙声になって言うと…
『若芽は行けねえ!行かせるわけにいかねー!若芽は、期日までに聖領に行かなければ、家族身内が厳しい咎めを受ける!娘達はみんな、一番酷い社(やしろ)に兎として送られるか、河原者達の慰みにされる!』
恒彦は、血を吐くような言葉で叫び、穢兎(けがれうさぎ)の少女達は、一切に声を上げて泣き出した。
『嫌だ!嫌だ!若芽姉ちゃんと行く!』
『若芽姉ちゃんと一緒でなきゃ、行かない!』
『若芽姉ちゃんと離れたくない!』
『若芽姉ちゃんと離れたくないよー!』
恒彦は、暫し硬く目を瞑り、穢兎(けがれうさぎ)の少女達が延々と泣き続けるのを聴き続けると…
『甘ったれるな!』
不意に、怒声を上げると同時に、穢兎(けがれうさぎ)の少女達の頬を、思いっきり打った。
『良いか!おめえ達は、壊れ物!壊れ物!壊れ物の不具者何だよ!御祭神も壊れてれば、参道も裏参道もボロボロ!大人になっても、子供を作れないどころか…』
恒彦が言いかけると…
『アッ…』
と、穢兎(けがれうさぎ)の少女の一人が、小さく声を漏らすなり、しゃがみ込んだ。
見れば、着物の裾と地面がぐっしょり濡れて、尻のあたりから雫を垂らしている。
『どうだ?おめえ達は、これから、一生、そうやって糞も小便も垂れ流して生きる事になる。
若芽はな、聖領(ひじりのかなめ)に行けば、今までより、もっともっと辛え事が待ってるんだ!
そんな若芽に、おめえ達の垂れ流す、糞小便の世話までさせる気か!どうなんでぇ!』
穢兎(けがれうさぎ)の少女達が、漸く鎮まり帰る中…
『若芽姉ちゃん…若芽姉ちゃん…』
尿を垂れ流した穢兎(けがれうさぎ)の少女だけは、一人目を覆って啜り泣き続けた。
それまで、ジッと黙って様子を見続けていて軽信は…
『チビちゃん、お名前は?』
『まる子…』
『そう、まる子ちゃんって言うの…
それじゃあ、まる子ちゃん、一緒にお着替えに行こうか。
まる子ちゃんには、他の子達より先に、可愛いチョゴリを着せてあげる。』
『チョ…ゴリ?』
『そう…これから行く楽園の女の子は、みんな着ているのよ。』
と、ここでまる子の耳元に口を寄せ…
『大丈夫…若芽ちゃんも、いつか必ず、お姉ちゃんが楽園に連れて行ってあげる。
『えっ?お姉ちゃん…が?』
『そう。聖領(ひじりのかなめ)の悪い人達みんなやっつけて…必ず、楽園に連れて行ってあげるわ。約束する。』
そう言うと、まる子は忽ち満面の笑みを浮かべた。
『刑部(ぎょうぶ)さん、これで良いかしら?』
『うむ。』
『他に欲しいものはなくて?』
『ねぇ!』
『あんたが望むなら…佳奈ちゃんと一緒に楽園に連れて行ってあげてよ。』
軽信が、またいつもの誘いかける笑みと流し目を向けて言うと、恒彦は嫌なものを噛んだように睨み返した。
『どうせ、まだ佳奈ちゃんを抱っこしてあげてないんでしょう。』
『佳奈は…もう、俺の女だ。』
『穂柱さんをペロペロして貰って、口の中に出したモノを呑み込んで貰って?
あんたは、磯の味、海の味がするんだってね。可愛いんだ。』
コイツ…
何処で…
誰からそんな事を…
恒彦がまた、何か嫌なモノを噛み締めたように押し黙ると…
『良いわ。あんたは、まだまだ、ここでしなくちゃいけない事がたくさんあるもんね。兎津川(とつかわ)には、刑部(ぎょうぶ)さんがまだ必要…また、私で引き受けられる子がいたら、引き渡して。責任もって、楽園に送って上げる。』
軽信はそう言うと、恒彦の頬をなで回し、唇に軽く口づけすると、穢兎(けがれうさぎ)の少女達を連れて、引き上げて行った。
恒彦は、なおも嫌なものを噛んだらような目つきで、軽信とも穢兎(けがれうさぎ)の少女達ともつかぬ後ろ姿を見つめ立ち尽くしていると…
『お頭、行きやしょう。ここに、長居は無用です。』
と、やはり苦飯噛み潰したような顔して、亀四郎が声をかけてきた。
『それと、これ以上、あの女と関わるのは…』
『カメさんは、嫌いか?あの女が…』
『へぇ、どうにも…』
『俺もだ。あいつが情報を回してくれるから手を組んでいるが、どうにもな…』
『ただ…』
『ただ、手を組むってんなら、腹を括る必要があるかと思いやす。』
『革命か…』
『それと、お頭が渡の旦那とあの女と、どちらをお取りになりやすか…』
『どちらって…あいつは、渡の兄貴…いや、鱶腹軍団(ふかはらのいくさつかたまり)にも唾をつけてるんじゃ…』
『その鱶腹軍団(ふかはらのいくさつかたまり)を嵌めた…と、言いやしても、ですかい?』
『鱶腹を…嵌めただと?』
恒彦が、怪訝な目つきをして首を傾げると、亀四郎は辺りをサッと伺い…
『七曲組(ななまがりくみ)、柴田の優作がやられやしたぜ…』
恒彦にそっと耳打ちして言った。
『何だと…』
恒彦は一瞬、目を見開き亀四郎を睨み据えたが、すぐに気を取り直したように嘆息し…
『まあ、良い。渡の兄貴とは義兄弟の盃を交わしてるが、七曲組も鱶腹軍団(ふかはらのいくさのかたまり)も、俺には関係ねえ…』
『お頭…』
『おれは、情報を貰う為に…それと、これからは然るべき報酬を頂く為に、あの女と誼みを続ける。そう…まる子達のような子を、一人でも二人でも、神領(かむのかなめ)から逃して貰う為にな…』
そう言うと、軽信の拠点を後にした。