兎神伝
紅兎〜革命編其乃二〜
(29)潮風
『ウッ!』
若芽は、平蔵の股間を跨ぎ、穂柱を自らの神門(みと)に押し込むと、固く目を瞑り、歯を食いしばった。
『ウゥゥゥゥーッ!』
穂柱は、参道に潜りこむにつれ、一層熱を帯びて硬く太くなってゆく。
『頑張れ!お姉ちゃん、頑張れ!』
『もう少し!もう少しよ!』
周囲からは、共にここまでやってきた青兎の少女達が、声援の掛け声をかけている。
『ウゥゥゥゥーッ!』
若芽は、更に恐る恐る腰を落とし、膨張を続ける穂柱を奥に挿れていった。
『アッ!』
遂に滑りを帯びた穂柱の先端が御祭神に当たると、肩を縮こめ声を上げた。
しかし…
痛くない…
若芽は目を丸くして平蔵の顔を見下ろすと、平蔵はニッと笑いながら、椀を逆さにしたような乳房と、仄かに若草萌える神門(みと)の先端に手を伸ばした。
『アッ…アッ…アッ…』
優しく乳房を揉まれ、乳首を摘まれ、包皮越しに神核(みかく)を弄られるの合わせ、声を漏らしながら、軽やかに顎と腰を動かしてゆく。
『そうよ!その調子!その調子!』
『上手よ、若芽姉ちゃん!』
周囲からは、また、青兎の少女達の声援が飛び…
『そうそう!快楽に、身も心も委ねて、感じるままに動くのよ!』
と、一番幼な顔の香織が、ませた口調で言えば…
『まあっ!この子ったら、ナマ言ってる!』
『最初、テッちゃんに身体(からだ)を触られたら、怖がってメソメソ泣いてたクセに。』
と、花子と美雪が言い、一斉に笑いの渦が飛び交った。
平蔵は、忽ち顔を赤くし、肩を窄めて涙目になる香織に片目を瞑って見せると…
『よしよし、若芽、うまいぞ、上手だぞ。』
まるで、おぼこをあやすように声をかけながら、若芽の胸と股間に伸ばす指先の動きを一段と細やかにしていった。
『アンッ!アンッ!アンッ!アンッ!』
若芽の声が次第に大きくなってゆく。
心地良い…
何て心地よいのだろう…
まるで、全身を内側から擽られるような感覚と、頭の中が浮かび上がるような感覚に、意識が混濁し始めると…
『さあ、中で穂柱を揉み解すような感じで、神門(みと)を締め上げてるんだ。』
若芽は、言われるままに、腰を上下させながら、穂柱を挟み込む肉壁を動かしてゆく。
『良いぞ、凄く良いぞ…オッ…オッ…オッ…』
励ます平蔵の声も、次第に喘ぎへと変わってゆき…
『オッ!オッ!オッ!オッ!』
『アンッ!アンッ!アンッ!アンッ!』
二人の喘ぎが交差してゆく。
やがて…
『オォォォォォォォーーーーッ!!!!』
『アァァァァァァァーーーンッ!!!!』
二人が一段と大きな声を上げた瞬間…
時が止まり…
やがて、瘧にでも罹ったように、全身をカタカタさせる若芽の神門(みと)のワレメから、大量の白濁したモノが溢れ出してきた。
『よしよし、でかした、上出来だ、上出来だ。』
平蔵が、力尽きたように胸にうつ伏せてくる若芽を抱きしめ、頭を撫でてやると…
『若芽姉ちゃん、上手よ、凄く上手にできたわ。』
周囲で声援を送っていた青兎の少女達も、一斉に拍手を送り、若芽の背中を摩ったり、肩を抱いたりした。
『平蔵…様…』
若芽が虚な眼差しを向けると…
『テッだ。俺の事は哲人のテツと呼ぶ、主水のバカと違って、頭が良いからな。』
『テッ…ちゃん…』
『そうだ、そうだ、哲人のテツ、テッちゃん。うん!呼び方も上出来だ!』
平蔵はまた、片目を瞑って若芽を抱きしめ、頬擦りをした。
と…
『おっ…何か、また、良い感じがしてきたぞ。』
平蔵が言いながら、下腹部の方に目をやると…
『まあっ!鈴子ったら、何抜けがけしてるのよ!』
美雪が口を尖らせた。
『だって、テッちゃんの穂柱、まだまだこんなに腫らしていて、辛そう何だもん。』
既に両肌を脱ぎ、裾を広げて、真っ平らな胸とまっさらな股間を露にして弄りながら、鈴子は構わず平蔵の穂柱を頬張り続けた。
『何言ってるのよ!次は私よ!私の方が、上手だって、気持ち良いって、テッちゃん褒めてくれたんだからね!』
美雪も負けじと、鈴子を押し退け、平蔵の穂柱を咥えにかかる。
『うわっ!痛ぇっ!二人とも、喧嘩するな!喧嘩するでない!』
平蔵が思わず悲鳴をあげると…
『テッちゃん!ミッちゃんの言ってる事、本当なの!』
鈴子が、鬼の形相で睨みつける。
『テッちゃん、私には、ミッちゃんより私の方が良いって、言ったじゃない!』
すると…
『まあっ!テッちゃん!それ、本当!嘘よね!スズちゃん、嘘つきなのよね!』
今度は、美雪が睨みつけてくる。
『いや…それは…』
忽ち平蔵の目が泳ぎ出すと…
『許せない!』
『噛み切ってやる!』
鈴子と美雪は、同時に、平蔵の穂柱と穂袋に歯を立てた。
『うわっ!痛ぇっ!』
またも悲鳴をあげる平蔵に、香織と花子がクスクス笑い出した。
平蔵の胸にうつ伏せている若芽も、つられるように笑いつつ…
目線は、縁側に腰掛ける恒彦に向けられていた。
砂丘を模倣する庭先の彼方から、潮風が舞い込んで来る。
遠く響くは、船出を告げる板木の音…
あの子達は、もう楽園に向かったのだろうか…
ふと、軽信に預けた穢兎(けがれうさぎ)の少女達の事を思い出す。
丸子…
咲子…
珠江…
恵美…
桃子…
中でも、最後まで若芽と一緒に行きたがり、泣いていた丸子の事が忘れられない。
本当のお姉ちゃんになって欲しかったのだと言う。
そして…
数日前、一足先に試しを受け、聖領(ひじりのかなめ)に送られた十人の青兎の少女達…
青兎の少女を受け取りに訪れる遣属使の神職(みしき)は、聖領諸島(ひじりのかなめのもろつしま)より各五人…
試しの祭祀は、一度にこの五人の穂供(そなえ)を受けて行われる。
しかも、試しはこの五人では終わらない。
最低、十の社(やしろ)から派遣された神職(みしき)達の試しを、交代で繰り返し何度も受け続ける。
試しが終われば、彼らが引き連れてきた十人の神漏兵(みもろのつわもの)達の相手をさせられ…
十日十晩、休む間もなく、弄ばれ続けるのである。
そうして、漸く引き取る社(やしろ)が決まれば、死ぬまで聖領(ひじりのかなめ)の男達の慰み者となる定めが待っているのだが…
聖領(ひじひのかなめ)に送られた青兎が、十八まで生きれば長くもったと言われ、二十歳まで生きれば奇跡と言われる。
『主水さまーっ。』
朧衆の忍、中村の主水の事を、死んだ父親に似ていると言って懐いていた十二の青兎、浮江が貰った人形を大事そうに抱きしめながら、いつまでも手を振る笑顔と…
押し黙ったまま、複雑な眼差しで見送る主水の顔…
二人の顔が、いつまでも脳裏の中で交差する。
磯味か…
また一陣、潮風靡くと、佳奈の笑顔を思い出す。
抱きしめた時の柔らかく温かな温もり…
舐め回した時の果実のような味…
そして…
『刑部(ぎょうぶ)様は、磯の味がします。』
丹念に穂袋を舐め、穂柱をしゃぶり…
小さな口腔内にいっぱいに放たれた白穂を飲み干すと、満面の笑顔で決まって言う言葉…
佳奈…
海を見た事のない佳奈…
潮風は、おまえが思うほど心地よくはなく…
海原は、悲しい声でいつも哭いているぞ…
『佳奈…』
恒彦が、不意にその名を口にして振り向くと、半襦袢を一枚羽織っただけの若芽が、後ろに立っていた。
『ちびまるちゃん達…もう、楽園に着いたかしら。』
若芽は、恒彦の隣に座ると、白穂まみれの股間を懐紙で拭いながら言った。
『どうだろうな…楽園は、聖領(ひじりのかなめ)の島々など及びもつかぬ程、遠い海の彼方にあると聞く。まだ、船の上かも知れん。』
『お結…食べさせて貰ってるかな…』
『きっと、船乗り達を困らせてるだろう。』
『えっ?』
『俺の友人…カメはな、頗る料理自慢で、ちびまるが食いてえと言うから、得意顔で山ほど握ってやったんだかな…
ちびまるの奴、これ、お結じゃない…若芽姉ちゃんが結んでくれたのが良いって、大泣きしたんだ。』
『まあっ!あの子ったら…』
『おめえが、自分の為に出された飯を、こっそり握って食わせてやった、団子のような結が、あの子にとっては、この世で一番うめえ飯みてぇだな。』
『ちびまるちゃん…』
真夜中…
丸子は、渡瀬人(とせにん)達の玩具にされてる最中、絶えず垂れ流しては、袋叩きにされていた。
七つの頃…
いや、赤兎となる事が決まり、田打が始まった五つの時から、絶え間なく指や異物で掻き回され続け、股間も尻もぼろぼろになっていた。
筋肉が完全に緩み切り、大も小も全く堪える事ができなくなっていたのである。
それが、穢兎(けがれうさぎ)として始末される理由となったのだが…
渡瀬人(とせにん)達は、そんな丸子に容赦なく、汚いと言って仕置きし続けたのである。
あの時も、死ぬ程、殴り蹴飛ばされ、最後には綺麗にしてやると、肌を指すような川の水を桶で何十杯もぶっかけられたのである。
若芽は、漸く仕置きが終わり、息も絶え絶えの丸子の側に駆け寄ると、懐に抱いて温めながら差し出したのが、こっそり結んだお結であった。
そして、また…
潮風が舞い込んで来る。
ひとしきり、丸子達を思い出して泣き続けた若芽は、不意に思い出したように…
『刑部(ぎょうぶ)様って、磯の味がするんですってね…』
呟くように言った。
『平蔵様が、仰られてました。佳奈ちゃんと言う子が、あの…その…』
『テッの奴…つまらねぇ事を…』
『磯の味って…どんな味なのでしょう…』
『さっき、テッのを散々飲み込んだろう。男が放つ白穂の味など、どれも同じさ。』
恒彦が吐き捨てるように言うと…
『いいえ…』
若芽は大きくかぶりを振ると、満面の笑みを浮かべて見せた。
『みんな違います。平蔵様は、焼塩のような味…とてもサラサラとして、優しい味がしました。
磯の味って…
刑部(ぎょうぶ)様の味って…』
若芽がそう言いかけ、頬を赤くして俯くと…
『確かめてみたらどうだ。』
漸く、少女達から解放された平蔵が、やはり襦袢を一枚羽織った格好で、若芽の隣に座って言った。
後ろでは、さっきまで喧嘩していた鈴子と美雪が、仲良く大股開きに並んで座り、神門(みと)から溢れ出す白穂を互いの手で掬いながら、ケラケラ笑っている。
『若芽、コイツに抱かれてぇんだろ?』
『平蔵様…』
『平蔵様じゃねえ。哲人の鉄…テッちゃんだ。』
『テッ…ちゃん。』
『そうそう…
そのテッちゃんより、本当はツネ公が良かったんだよな、今朝だって…』
『そんな…私…』
『脇腹の傷で熱出してうなされていた時、おめえ、ずっとツネ公の名を口走っていたじゃねえか。『刑部(ぎょうぶ)様…刑部(ぎょうぶ)様…』ってな。』
平蔵がそこまで言うと、若芽はいよいよ顔を真っ赤にして立ち上がり、隣の部屋に去ってしまった。
恒彦は、また砂丘を模倣した庭の彼方を眺めやると、相変わらずの潮風が、頬に吹き付けてくる。
『磯の味か…
佳奈も若芽も、おめえの中に海を見てるんだろうな…広く大きな海を…』
平蔵がしみじみ言うと…
『俺は、海が嫌えだ。海は悲しみばかり持ち込み、大切なものを連れ去って行く…』
『薊か…おめえが初めて惚れた女は、青兎だったな。』
『惚れたと言うわけじゃねぇ。ただ、初めての航河で、船酔いして寝込んだ俺を、寝ずに解放してくれたのが、薊と言う青兎だった。
あいつも、別に俺に惚れたとかそんなんじゃねえ。
若芽のように、虐められている穢兎(けがれうさぎ)や年下の青兎達を必死に庇っていたあいつは、船酔いして笑われていた俺に、親切にしてくれただけだった。そんなあいつを、俺は…』
『男になれと言われ、渡瀬人(とせにん)達に着物を剥がれ、手足を抑えつけられたその子と、無理やりやらされたんだな。』
『無理やりじゃねえ。既にめちゃくちゃに弄ばれ、口も神門(みと)も尻も白穂まみれのあいつに欲情して…気づけば、俺はあいつを…
だのに、あいつ…自分のした事に震えている俺に、ニッコリ笑いかけやがった…』
『それから、二度と女を抱けなくなったか…』
恒彦は何も答えず、ただ、潮風の吹き付ける彼方を見つめ続けた。
『薊…おめえに惚れていたんだよ。おめえに抱かれて嬉しかった…いや、おめえに抱かれた事だけが、何一つ良い事のない人生の中、唯一の救いだったんじゃーねーのかな?』
『馬鹿な…ただ、船酔いに倒れた時、あいつの膝枕で寝込んでいただけだぞ、俺は…最後まで、言葉すら交わさなかった…』
『女が、男に惚れるなんてのは、そんなもんだ。特に、何も望みのない人生を生きる女はな。』
『そんな女に、俺は何もしてやれなかった…』
『してやっただろう。そいつを探す為だけに、おめえは兎津川刑部(とつかわぎょうぶ)のお役につき、役者となった。それで、必死にその後のその子の消息を探り続けた。』
『だが、漸く探り当てたあいつは、とっくに死んでいた。何十人もの神職(みしき)達の試しを受け、夜な夜な神漏(みもろ)達の玩具にされた挙句、聖領(ひじりのかなめ)でも、最も辺境の島に送られて…
そこでも、休みなく男達の玩具にされた挙句、三年もしねえうちに死んでいた。
まだ、十五にすら、なってなかったってのにな…』
『だったら…
今度は、一つだけ、おめえに惚れた女に良い事をしてやらねぇか?』
『良い事?』
『若芽の海になってやれ。』
『若芽の海だと?』
『そうだ。おめえは、海は哀しみばかり持ち込み、大切なものを連れ去って行くと言っていたが…
せめて、おめぇと言う海は、あの子に束の間の喜びを持ち込み、大切なものを残す海となってやれ。』
『俺に、何ができるってんだ?』
『田打をしてやれ。明後日…最初の試しを受ける前にな。』
『俺に、あの子を抱けと?』
『聖領(ひじりのかなめ)に行けば…あの子も、あの子と束の間の苦楽を共にした青兎達も、十八まで生きられる子は、一人もいねぇだろうよ。
だったら…
あの子の短い人生、最初で最後の男になってやれよ。』
平蔵がそう言うと、何も答えずに押し黙る恒彦の頬に、いつまでも物悲しい潮風が吹き付け続けた。
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