ワインバーでのひととき

フィクションのワインのテイスティング対決のストーリーとワインバーでの女性ソムリエとの会話の楽しいワイン実用書

ワインバーでのひととき セカンド(改訂) 36ページ目 手の平のブドウのあざ   

2013-02-07 20:37:29 | ワインバーでのひととき2改訂三話まで完
【36ページ】


「手の平をどこかに打ちつけたの? 痛むの?」


 良子は和音の右手の平が黒ずんでいるのを見ると、心配して訊いた。

和音がいつもと違うのはそのせいかしら?と考えた。


「いや」


 和音が一言発した後、しばらく沈黙が続いた。

和音はプライベートワイン会でのテイスティング対決の話をするべきか

迷っていた。


「マスター、良子さんにあのワインを開けてもらえますか?」


 和音は、右手の平を良子に見せた。


「あっ、ブドウの房の形をしている! 刺青をしたの?」


 和音は、首を振った。


「ワインの味覚がおかしくなったのは、このブドウのあざができてからで、

なぜできたかの説明をすると少し話が長くなる」


 マスターは良子の前にワインを置いた。


「良子さん、ワインを飲みながら聞いてください」


 良子は、和音を見つめた。 

そして心臓の鼓動が少し早くなっているのに気付いた。

最近、良子と和音はこの店で同席して、ワインを楽しく飲んでいる。

ワインについての悩みの相談にも乗ってもらった。

しかし和音のプライベートのことは何も聞いてなかった。