社会不安障害:SAD、ボランティアとセカンドライフ

SADで会社を休職したが、一年で復帰し、無事定年を務めて、その後の生活とボランティアについて気ままに掲載中

黄金の13貫井徳郎『慟哭』

2009-06-18 07:45:02 | 趣味(読書)

西澤保彦『スナッチ』に続いて読んだ本が実は今回紹介する貫井徳郎氏の『慟哭』である。西田俊也『復活の恋人』を先に掲載したのは、西田俊也『復活の恋人』に掲載した通り、ストーリーの類似性からであるが、いずれにしても、3回連続の初めての作者の作品紹介となる。

この貫井徳郎氏はこの『慟哭』で鮮烈なデビューを飾り、以降ざまざまな作品を出されており、いずれまた氏の作品を掲載する事になると思う。楡周平氏同様にデビュー作が強烈と言わざるを得ないが、どうも私が選択する作品は、暗いものが多いような気がする。もっとも失礼ながら、恋愛物等は読む気がしないが・・・。

さて、この『慟哭』であるが、解説にも掲載されているが、二つの筋が同時展開して行くパターンであり、如何にこの二つの話(筋)を着地させるかが最大の見せ場となるが、奇妙にもこの二つの筋が、複雑に絡み合っている為つまり両方の主人公(登場人物)が同じであり、しかも犯人でもあり、最初の事件その物が解決していない事が最後にわかると言う、何ともいえない暗さと衝撃。そして宗教に逃げたくなる心理も含めて、考えさせられる作品です。

もっとも、この作品に関してあまり、深く考えて、のめりこむと、どっぷり暗い闇に落ちていきそうですが・・・。

慟哭.jpg書籍名:『慟哭』
著 者:貫井 徳郎(ぬくい とくろう)
発行所:株式会社東京創元社
発 行:1993年10月15日初刊発行
定 価:1,900円(税込み) 頁 数:縦一段組み363ページ+後記+解説(北村薫)

<ハードカバーの帯の作品紹介>

題は『慟哭』、書き振りは《練達》、読み終えてみれば《仰天》

「お願いですから、これが驚くべき作品だと、 人にいわないでください。 北村 薫」

この『慟哭』は、第4回鮎川哲也賞の最終予選に残り、惜しくも近藤史恵氏の『凍える島』に受賞は譲ったものの、新人離れしたストーリー・テリングの妙で、選考委員を唸らせた作品です。幼女連続殺人に新興宗教を絡めた、きわめて現代的な内容ですが、その作家的手腕は超一流。近藤氏とともに将来の楽しみな、大型新人の登場です。

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<平行に進む話1>

胸(心)に穴の開いた状態の彼は、ある時に道端で「あなたの幸せをお祈りさせて下さい」と言う女性に声を掛けられ、その女性が気になり探し始める。 書店で宗教の本を買い込んで、調べるがその中で《白光の宇宙教団》の教義が気にいり、教団に見学に行く。するとそこで目的の女性北村沙貴に会い、この教団に入る事にする。ボランティアや講義に出席する中で、教団が設立されてからいると言う司魔という人物に会うが、司魔は彼の心の穴を指摘する。そして教団の教祖「胡泉翔叡」との出会いを、予見し、彼を胡泉導師と会わせる。胡泉導師と有ってから更に教団にのめりこむようになり、私財を次々に教団に提供する事で、彼の教団での位はドンドン上っていった。

司魔は実際は教団の裏の支配者でもあり、高齢の入会者で裕福な人だと判ると、その人に近づき、教団に金を貢ぐようにさせていた。その中で司魔が、上位会員を集めて、特別な会合を行なっていたが、それは黒魔術だった。彼は、自分の胸の穴をふさぐ(つまり殺された娘の霊の復活)為に、司魔に要求する。莫大な財布の要求との引き換えに・・・。

司魔から教えられた奥義(まやかしであったが、彼は自分の為に信じ)を元にその計画を実行(狂気へと突入)していく。

司魔は「中世ヨーロッパで行なわれた儀式では、霊の宿る依代として人間の屍体が使われたが、今ではそれは犯罪になる為、依代としては、娘さんそっくりに作った人形を使う事と・・・」注意したが、彼は依代として、娘と同じ背格好の名前が娘と同じコードを持つ少女を選ぶ事にした。

必要な祭器と教団が使用している黒魔術用のいけにえとして購入している鶏業者から鶏を購入して、断食もして身を清め、幾度となく、条件に合う少女を誘拐して、何回も繰り返す事になる。毎回彼の望みは叶えられないまま・・・。

<平行に進む話2(本編と思われるが・・・?)>

平成2年12月10日に消息を絶って以来、行方がわからなくなっていた斉藤奈緒美ちゃんの物と思われる服が、河川敷で発見される。それを受けた東日野署は、警視庁捜査一課にも応援を求める。警視庁刑事部捜査第一課の佐伯課長(キャリアのエリート)と、その部下の熟練の刑事丘本が、事件を調査する事になる。 実はこの前に東久留米市の香川雪穂ちゃん失踪事件があり、未だに行方を探索中だった。その後も事件が発生し、累計7人に被害者が上る事になる。一方で佐伯課長の娘恵理子が行方不明となる。佐伯の生い立ちと複雑な立場から・・・。佐伯の娘が死体で発見されるが、佐伯は無表情で娘の頬を撫で続けた(佐伯の慟哭だった)。佐伯が警視庁を辞めた後、丘本が事件の真相を追い、まさかとは思うが、カルト教団の《白光の宇宙教団》を調べて行く内に、佐伯の犯行ではないかと突き止める。

佐伯は、丘本に最後に質問する。自分の娘「恵理子を殺した犯人は判明したのでしょうか?」と丘本は答える「いえ・・・・まだです」と

二つの話は最後で結ばれるが、平行に進む話1の彼とは佐伯課長と言う事になるが、これを話してしまうと、この小説の最後の落ちを喋ってしまった事になるし、上記<平行に進む話2>の方は、超簡単にまとめすぎているが、余り詳しく書いてもしょうがない為、是非とも読んで貰いたい。何とも言えない後味の悪いというか何とも言えない感覚が残る作品です。


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