池井戸潤『果つる底なき』に続き、『M1(エム・ワン)』と言う作品を読んだ。江戸川乱歩賞受賞後の第一作と言う事で、かなり期待したのだが、予想外に残念な作品だ。もっともあくまで私の意見だが・・・。
その理由の一つは、主人公の元大手商社の調査部員だった高校の社会教師の辛島武史が、教え子の黒沢麻紀の父親の会社を、倒産させない為に麻紀と一緒に奔走すると言うストーリーがあまりにも非現実的で、感情移入できなかったと言う事になる。それはそうだろう。クラスの副担当にすぎない教師が普通そこまでするだろうか?
二つ目の理由は、この作品の大きなキーになっている「田神札」だが、いくら企業城下町とはいえ、一つの企業の固有札みたいなものが金融の札としての意味付けで流通できるのだろか?と言う疑問だ。全くないとは言いきれないが・・・。
この作品の中で、主人公の元大手商社の調査部員だった高校の社会教師の辛島と元刑事の大手企業調査員の佐木の二人が、お互いが得意な企業システムや情報屋等を駆使して調べて、事件の背景を推測していくが、ある意味、これがこの作品の核の部分なのかもしれない。上記の教え子の家出からと言うシナリオではなく。するとまた別の作品となっていた気がする。
![]() | 書籍名:M1(エム・ワン) |
「田神札」はいま、田神町の経済を蝕み始めている。 まさに経済を死に導く伝染病です。 この町に蔓延するウィルスは田神協力会という特殊な組織で培養され、次々と下請け企業の血液に注入されていく。 おそらくあなたの想像を遥かに逸脱して、この町の経済そのものが闇の通貨に支配されつつある」(本文より) | 江戸川乱歩賞受賞第一作 誰も読んだことのない金融パニック・サスペンス あの金に 侵された者は 狂い始める。 町は闇の通貨に支配されていた。 元商社マンの高校教師は、教え子の父の会社を救うために企業王国のドンに戦いを挑んだ。 |
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