社会不安障害:SAD、ボランティアとセカンドライフ

SADで会社を休職したが、一年で復帰し、無事定年を務めて、その後の生活とボランティアについて気ままに掲載中

野沢尚『反乱のボヤージュ』

2009-05-19 07:32:36 | 趣味(読書)

野沢尚『ラストソング』に続き、野沢氏の作品紹介です。前回で予告はし、GW中にすべて掲載しておきたかったのだが、結局出来なかった。なかなかできない物である。時間があっても、先に本ブログにアップするより次の作品を読んでしまう為、読書に関しては中々難しい課題とも言える。最も知れば知るほど、新しい作者を知る事になる為、面白くなり、かつ無限の書籍がある事が更に焦りを産んでいるが、これは嬉しい悲鳴なのだろう。つまり、セカンドライフを考えるに、読書の分野では退屈する事はない程、多くと言うか無限の作者が存在すると言う事がつくづく最近思い知らされている。従って図書館とは私や奥様に取って切っても切り離せない公共施設の一つである。最も昔からだが・・・。

さて前回同様、野沢尚氏の作品の中で、過去野沢尚(のざわひさし)『破線のマリス』野沢 尚『リミット』野沢 尚『魔笛』野沢尚『深紅』と、異なりこの作品も全く異なるジャンルの作品であり、この作品を読む事で、私よりお歳の世代には大学の学生運動の激しかった時代を思い出す人が多くいるのかも知れないと勝手に思いながら読んだ。昨年定年退職を迎えられた先輩は、大学中殆ど学生運動で大学が封鎖され大学に行けず。殆どの教科をレポートで取得したと言っていたし、私の元上司も東大受験が受けられず、別の大学を受けるしかなかったと仰っていた。

今の時代となっては、このような作品は大変珍しく、今の時代で起き得るかと思うと、実際は起き得ないと思うフィクションの世界だろうと思う。既に学生運動の時代は過去の物なのではないかと思う。そういう意味で考えると、私自身が学生運動の終焉時代に大学に入学した経験からすると、別の意味でなんとも言えない作品かも知れない。※私が、入学した大学も、学生運動で機動隊を構内に突入させた大学のひとつではあったが、私が入学した時には学生運動は、終焉していた。

反乱のボヤージュ.jpg書 籍:『反乱のボヤージュ』 著 者:野沢 尚
発行年:2001年4月10日初版発行 発行所:株式会社 集英社
価 格:1,600円(税別) 縦1段組み357ページ

<ハードカバー帯の紹介>
漂うように生きる、僕ら。 情熱を置き忘れた、彼ら。 失われた父性を取り戻す戦い

吉川英治文学新人賞受賞第一作 集英社 長編エンタティメント

僕達の場所を守る為に! 薫平たちの戦いが始まる

舎監・名倉が送り込まれ、”弦巻寮”がいよいよ廃寮に!?大学側と戦う薫平たちに 肉親の借金、恋愛・就職問題、さらにストーカー事件などが次々と襲いかかる。 生活を共にするうち、反発しあいながらも、いつしか心を通わせる寮生と名倉。 それは団塊の世代とそのジュニアたちの交流でもあった。失われた父親的存在を 探す、現在の若者たちをビビットに描く、21世紀最初の青春グラフィティ。

  -------------------------------------------

日本のトップレベルの大学「首都大学」。その寮「弦巻寮」は、蔦のからまる鉄筋3階建て、築65年の廃墟のようだが、寮費7千円で3食付で住め、学生の自治運営に任されていた。一方大学側は、その弦巻寮を潰そうとして、「廃寮キャンペーン」をはり、120人は住める寮だったが、現在は69人に減っていた。その様な状況の中で、寮の自治委員会は委員長司馬さん、副委員長本多真純先輩、会計監査役の保利さんを中心に運営されており、今年新入生としてその寮に入ってきた医学部坂下薫平を中心に話が進んで行く。もともと寮費は5千円で、食事は各自の当番性であったが、食中毒を起こした事から、大学側に付け入られないように、寮費を2千円上げて、賄い婦の日高菊さんを雇った経由があった。

寮をつぶす大学側の実質的な責任者である琢磨玲一。2年前に学長補佐に就任してから一方的な廃寮宣言を掲げ、これまで血を見る一歩手前まで激しく対立して来た。その琢磨が寮の規則の盲点を付き、義理の弟である舎監名倉さんを寮に送り込んで来た。

名倉さんは元警察の機動隊で学生運動の時に、学生を殴り倒した人間でもあり、弦巻寮に来た時にはっきり、寮を潰す為に来た事を皆に伝える。寮生は、寮に住む自治権では、民主主義の中の一票と受け止めて、さして重要視しなかった。しかし名倉さんが来て、65年前の寮則の第5条「寮生の中から一人でも留年者を出した場合、大学側が寮の自治権を剥奪する事に異議を唱えないと誓約する」を持ち出してから、大問題となる。

出席日数や、試験、レポート等で問題のある寮生が3人いた。その中の一人、寮には二人の女性がいたが、副委員長本多真純先輩ともう一人、田北奈生子が、出席日数や試験等で問題があり、薫平を含む寮生が、奈生子を無理やり、大学の授業に出席させるようにする事になる。

しかし、彼女の昔の愛人であり恐怖の対象であった神楽が、薫平に近づき、寮を訪れた事により、大きな事件へと発展して行く。その為に寮を出ようとする奈生子を守る為に、寮生が結託し、身辺警護などをして守ろうとする。最後のケリをつける為に騙された薫平と名倉さんで、決着の場へと向う。そこで名倉さんは、そのグループにやられ放題になるが、最後に直接神楽に手を出させる事で、現行犯逮捕と言う結果で、旧知の警察官を巻き込み、解決させる。

菊さんの離婚した夫に引き取られた息子の話や「左翼問題研究会」と言う戦後の学生運動の事件も発生するが、話は、上述の留年者を出さない為に、3人のカバーを寮生が行なう事で進んで行く。

問題の奈生子は、最後の一つの単位取得のレポートを提出したが、実は学長補佐の琢磨玲一の陰謀で、その教科の教授を脅し、レポートが間に合わなかった様にして、寮則が破られた事実を作り、寮の取り壊しを実行しようとする。しかも義理の弟である、名倉さんを解雇して、民間の警備会社を使って・・・。

寮に籠城する寮生に対し、民間の警備会社が、圧力を掛け、大型重機で、食堂を請わそうと迫る。この中で寮の退去命令に従う寮生も出て殆どの寮生が、寮を逃げ出してしまう。信じていた、自治委員会長司馬さんまでも。

最後の決戦の時、元寮生で薫平の友人でもある沖田率いるバンドが、寮の側で演奏を始める。もちろんクリスマスソングではなく、寮生達への歌である。集まった学生達を前にして、学生達の怒りが爆発する。

そこに現れたのは、逃げたと思われた自治委員会長司馬さんであり、学長補佐の琢磨玲一の陰謀で、加担した教授を探し出してつれて来たのだった。無事奈生子の提出したレポートを再度受け取って貰い、寮の取り壊しは中止となるが、大学側からの解雇により、大学への不法侵入の罪に問われ、名倉さんは全ての責任を取って、逮捕されてゆく・・・。

この作品も是非とも読んで欲しい作品ですが、現実に即すと既に時代が過ぎた感がある為、あまり推奨はできないが、そういう時代があったと言う意味では興味深い作品ではないか思う。

※ボヤージュの意味ですが、この書籍の中では、記述されていないが、フランス語の(時代と超えた)旅と解釈していますが・・・。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿