社会不安障害:SAD、ボランティアとセカンドライフ

SADで会社を休職したが、一年で復帰し、無事定年を務めて、その後の生活とボランティアについて気ままに掲載中

服部真澄『エクサバイト』

2008-06-20 09:44:29 | 趣味(読書)

野沢尚(のざわひさし)『破線のマリス』で予告したが、図書館で借りた新しい作家「服部真澄」氏の書籍紹介です

実は氏の処女作でありベストセラーとなった『龍の契り』を古本屋で購入していたのだが、まだ読んでいない。図書館でなぜか目に付いたこの本を先に読み始める事になった。

ある意味、この作品は、いろんな意味で考えさせる作品です。近未来小説でSF分野になると思うが、自分の過去、両親や祖父の過去とその真実、歴史上の意義と自分の存在意義を振り返り、人間は自分を美化したい、真実を隠したい要望が根底にあり、一方で歴史に名を残したいという欲望を持っていると・・・。つまり何が言いたいかと言うと、人間の生きる意味を考えさせるテーマがこの物語の背景にあるのではないかと個人的には思った。

殆どの人間が、潔癖であるわけではなく、自分の過去を隠したい或いは書き換えたいと思いながら、歴史に名も残したい。この矛盾する要望をあるゆる人間がもっている中で、真実を求める事の意味を問う作品ではないかと言うかなり難しいテーマだと考えます。

<私的概略>
人間の目の動きに連動し、体に埋め込まれた超小型のデジタルビデオカメラ(ヴィジビルユニット)が実用化され、見た物を全て記憶できるユニットが著名人を含め一般の人にも広く普及する時代となる。個人情報保護法で著名人の連絡先が入手困難な中、自分の人脈を利用し、このユニットをマスメディアに利用した鈴木央児(ナカジ)はプロジューサーとして成功する。

ある時、イタリアで「エクサバイト商會」の会長ローレン・リナ・バークに会い、ヴィジビルユニットを利用した真実の歴史再構築の夢に見せられ協力する事を約束する。「エクサバイト商會」は、ヴィジビルユニットが、装着者の死後100年間経たないと公開できない事を逆に利用し、自分の死んだ後に歴史に名を残したい欲求にかられる著名人から、あっというまに、ユーザーを獲得して、一大ビジネスとなっていった。

一方ヴィジビルユニットを開発販売している「グラフィコム」は、「エクサバイト商會」の新ビジネスにより、ビジネスが拡大するが、一方で真の目的に損害を与える事となり、「エクサバイト商會」と同じビジネスを立ち上げ、「エクサバイト商會」を吸収しようとする。

「グラフィコム」の真実の実態(社員の殆どは知らない)は、米国の、9月11日のテロ事件以降情報収集を強化する為に、情報員を世界各国に配置する事から始まったが、このヴィジビルユニットを世界的に広め、リサイクル事業として、装着者が抹消したツールの回収を行なう事にあった。
つまり、装着者には、自由に記録を消去できると言う事になっていたり、企業秘密防衛の為に場所によっては撮影できないはずの物が、実際は全て再生できる事にあった。

ナカジは、ローレン・リナ・バークとグラフィコムの密談を演出された画像と見抜き、且つローレン・リナ・バークが、実は生まれて自分を直ぐ捨てた実の母親クニコ(ジャーナリストとして世界で著名人となっていた)と見抜く。
クニコは、既に死んだ事になっており、そのヴィジビルユニットの受取人として、唯一の子供であるナカジが指定されていたが、ユニットを見るに従い、実の母親の真実であるはずのユニットの画像のウソまで見抜いてしまう。

ナカジは、結果自分も母親と同じように死んだ演出をして、今まで見た真実が映っているユニットを後世に託す。

その後、ナカジの直径の子孫から、託されたヴィジビルユニットが再生され、「グラフィコム」や「エクサバイト商會」の実像が暴露され、且つクニコが生きており、『ローレン・リナ・バーク』であった事もわかり再度、クニコとナカジが脚光をあびる事となる。

エクサバイトA.jpg書籍名:『エクサバイト』
著 者:服部真澄
発行所:株式会社角川書店
発 行:2008年1月31日初刊発行
定 価:1,700円+税
頁 数:縦一段組み381ページ 

<著者紹介>
1961年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒。95年、香港返還の機密文書を巡る熾烈な争奪戦をつづった処女作『龍の契り』がベストセラーとなり、大型新人の登場として読書会の話題をさらう。97年、第二作『鷲の陰り』」で第18回吉川文学新人賞を受賞。他に『ディール・メイカー』『バカラ』『エル・ドラド』『清談 沸々堂先生』『海国記』『最勝王』などがある。

<ハードカバー書籍表紙裏のあらすじ紹介> 

2025年。記録媒体はの小型化が飛躍的に進み、人々はみな超小型記録メディア”ユニット”を身につけている。これにより、人間は一生の内に見聞する全ての情報を記録できるようになっていた。
時流に乗り、このユニットを使用した番組制作で大成功を収めた映像プロジューサ・ナカジにも転機が訪れる。『エクサバイト商會』のローレン・リナ・バーグ会長から事業提携を持ちかけられたのだ。彼女は、人々が装着していたユニットを死後に回収し、そのデータを大量に集めて再生することで、動画の「世界史辞典」製作を目論んでいるという。まさに「記録」を巡る壮大なビジネスだ。ナカジが依頼されたのは、人脈を生かし、世界史の軸となる有名人たちのユニットを回収することだった。
 だが、このビッグ・プロジェクトは順調に滑り出した途端、ユニットの独占メーカーである米「グラフィコム」社から待ったがかかってしまう・・・。

<ハードカバー帯の紹介>
養老 孟司氏、佐藤優氏、絶賛!
全記録時代、到来---。
人生をまるごと記録することで、我々は何を得るのだろうか。
次世代メディア”ユニット”によって、一躍、時代の寵児となった映像プロジューサー・ナカジ。
彼に持ちかけられた新ビジネスは、歴史を一変させてしまうような壮大なプロジェクトだった。
服部真澄の真骨頂、最先端情報小説の傑作!
[※エクスバイト 情報の単位。1エクサバイト=100万テラバイト=10億ギガバイト]

一気に読了した。
底知れぬ欲望を人類がどう満たすのか、見ものである。養老孟


来るべき情報革命!その恐ろしい実態を描いたインテリジェンス小説。佐藤優

「カリフォルニア大の調査によれば、人類がこの世に現れてから紀元二000年までに、総人類が残した記録データ全てを総合しても十二エクサバイトしかなかたんだ。ところがさ、デジタルメディアの普及で、前世紀の終わり頃から各自の情報ストック量が飛躍的に増えてさ。いまでは毎年、年間一万エクサバイトもの情報が世界中で蓄えられている」------本文より

何が歴史に残り、何が埋もれてゆくのか。
時を超えて、我々は何を残したいのか。
人間と時間との闘いを描く、神話的エンタテインメント巨編!


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1 コメント

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見たものすべてを記憶... (西田)
2008-06-20 22:36:16
すごい小説が出ているものですね。
私は、人間がもつ霊体(魂)には、人生で経験したすべてこのことが記録されているということを信じています。
臨死体験をした人が、自分の人生を走馬灯のように瞬間的に見たという経験を語るのは、それを証明する一つの話です。
死後、霊体は霊界で永世しますが、霊体に記録された地上生活の様子は、誰にでも見えます。
だから、地上で隠せたことも、天では隠すことができません。
自分の良心に恥じない生活を送りたいものだと思います。
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