今月新聞やTVで一斉に取り上げられていたニュースに、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)世界最大手米フェイスブックの新規株式公開申請がある。株式時価評価額は1,000億ドル(約7兆6,000億円)とも言われている。フェイスブックが上場時に予定する資金調達額は50億ドル。米グーグルが2004年の上場時に調達した約19億ドルをはるかに上回る額となり、インターネット関連企業で桁外れの大型上場となる。
フェイスブックの売上高は07年の1億5,300万ドルから、11年は約24倍の37億1,100万ドル。売上の9割近くが広告収入。08年まで赤字だった純利益も11年は10億ドルの黒字と急激に成長・拡大している。フェイスブックは11年末時点で、世界で8億4500万人の会員を抱える。
とそのフェイスブックの上場時の評価額について大きく取り扱われており、多くの方がビックリされていたようだ。また昨年公開された映画『ソーシャル・ネットワーク』(原題『ジ・アクシデンタル・ビリオネアーズ)も日本で公開されていたのでフェイスブックを知っている方も多いかも知れない。もちろん私はその映画は見ていないが・・・。
さて、このフェイスブック(マーク・ザッカーバーグ)を知る上で、今回紹介する書籍が一番詳細な資料ではないかと思う。これより詳しい内容は映画でもなく、むしろ当のご本人達よりこの本の方が詳しいのではないかと思うぐらいだ。それぐらい著者のデビッド・カークパトリック氏のフェイスブックや関係する多くの方へのインタビューがなされている。
この本を読むと、どのようにフェイスブックがうまれ、そして急激に拡大していったのか?そのスピード間や資金獲得との戦いが良く分かると言うか、話の展開が面白い。まるでフィクションそう何らかの小説を読んでいるみたいだった。そしてフェイスブックで使っている機能が、どのようにして生まれたか?とても面白い。
2003年9月コンピュータ科学専攻で2年になったばかりのザッカーバーグはハーバード大学のカークランド寮で、1週間もかけずに作ったインターネットプログラム「コースマッチ」を公開した。これはユーザーが講義をクリックすると、受講者の一覧が表示され、逆に学生をクリックすると受講している講義一覧が表示されるシステムだった。
そしてこのコースマッチの成功で、今度は10月に「フェイスマッシュ」と言うサービスを公開した。チェスプレイヤーの強さのランクを決める為に使われるコンピュータプログラムを利用して、二人の同性の人物を表示して、どちらがよりホットかをユーザーが投票できるようにしたサービス。ある人物がホットなら更にホットな人物との対決が用意されていた。このプログラム開発は何と8時間(のみ)。このフェイスマッシュで使われた写真が、各寮が用意した公式の「フェイスブック」(新入寮生がオリエンテーションの時に撮影された写真集)からの写真データだった。要は12の寮の写真データをさまざまな方法で勝手に収集して乗せたと言う事。またもやこのフェイスマッシュもヒットするが、ザッカーバーグは大学の査問委員会から、コンピュータセキュリティ侵害、著作権侵害、プライバシーの侵害で告発され、システムは停止となった。
当時、主にデートの相手を探すのに使われていたSNSの「フレンドスター」は前年にハーバード大学で流行っていたが、全国的にヒットした事で、サーバートラブルを引き起こし、使いづらくなって(レスポンスが遅くなって)、人気がおちてしまった。そしてもう一つのSNSの「マイスペース」の全国的にヒットしていたが、ハーバード大学では人気がなかった。
そして大学は全部の寮の「フェイスブック」を一か所に集めてデジタル化して公開する事を約束していた。学生が求めていたのは、全学の「フェイスブック」写真がオンラインで検索できるようなフレンドスター的サービスだった。そして多くの大学で、学生達が大学当局にこの写真入りのオンライン学生名簿を要求していた。
ザッカーバーグはフェイスマッシュで問題となったコンテンツを学生が自ら登録する物に限れば解決できると考え、現実の学生の情報に基づく信頼できるオンライン・ディレクトリをつくろうと考えた。コースマッチやフェイスマッシュで大学のサーバーをホスティングして大学とトラブッたので、今度はオンライン・ホスティング・サービス(レンタルサーバー)を月85ドル支払って借りた。そのサーバーに以前取得していたドメイン「thefacebook.com」を使用した。そして2004年2月4日に借りたサーバーへのリンクをクリックした。ザ・フェイスブックが誕生した。
![]() | 書籍名: フェイスブック 若き天才の野望 5億人をつなぐソーシャルネットワークはこう生まれた 原題:The facebook Effect 著者:デビッド・カークパトリック 訳者:滑川海彦・高橋信夫 発行者:瀬川弘司 発行:日経BP社 発売:日経BPマーケティング 価格:1800円+税 |
ユーザー数が5億を超え、 会社の時価総額が2兆円を超え、グーグルを脅かす存在となった巨人、フェイスブックーーー。 同社を率いるマスコミ嫌いのCEO、マーク・ザッカーバーグからの信頼を勝ち得た元フォーチュン誌のベテラン記者が、徹底取材からフェイスブックの真実を初めて明かす! プログラミング、裏切り、訴訟、プライバシー問題、買収の危機、大型投資、仲間との別れ、2兆円企業、世界展開ーーーー フィスブックをめぐる至高のノンフィクション 独裁者なのか、創造主なのか、マーク・ザッカーバーグが挑む! | デビット・カークパトリック Dvid Kirkpatrick フォーチュン誌で長年にわたりインターネットおよびテクノロジー担当編集主任を務める。同誌ではアップル、IBM,インテル、マイクロソフト、サンをはじめとする数多くのテクノロジー企業に関する特集記事を執筆した。2001年に「フォーチュン・ブレーンストーム会議」を創設し、また最近では、人間のあらゆる活動のための技術革新をテーマに「テコノミー会議」を立ち上げた。現在、外交問題評議会のメンバーとして、テクノロジーのエキスパートとしてテレビ、ラジオ、インターネットで幅広く活動している。 |
フェイスブック誕生までを完結にまとめてみたが、何とザッカーバーグが2年になった9月~翌年の2月と超スピードの半年もかかっていない。学生からの現実的なニーズがあり、その仕様をある程度限定していたとは言え、短期間でWebのプログラムを完成できたのは凄い。しかも一人で。最も初期のパソコン創世記も一人で最初はプログラムを組んでいたが・・・。当時からするとおそらくWebサーバーはApache、RDBMSはMySQLそしてプログラム言語はPHPと言った所だろう。全てオープンソースだ。この組み合わせなら、レンタルサーバーも安かっただろう。
何が言いたいか?そう成功するかどうかは別にして、今では圧倒的にWebサービスを超安く(無料でと言って良い)始められる。腕一本でと言う事だ。しかし成功するのは難しいが・・・。しかしアイディアをサービスにして、何かもトライできるのだ!素晴らしい時代になったと思う。
さて、この本を読んで驚いた。本当の所はわからないが、マーク・ザッカーバーグ氏の人間性だ。余りにも崇高的すぎる。既に考え方が超越している。それだけに多くの社員や関係者が彼に夢中になったのだろうが。そしてこの純粋さ故に、ビジネスのベテランが最初から彼に力を貸したのが大きいのだろう。小林弘人(インフォバーン代表取締役CEO,東大情報学環 教育部非常勤講師)氏の解説にもあるが、ペイパル創立者のピーター・シール氏や自分でもベンチャーを創業して会社を追放された経験を持つショーン・パーカー氏の協力を得られた事があまりにも大きいと言う気がする。そして現在のCOOのシェリル・サンドバーグ氏。
さて無事上場を果たして、その先にある物はなんだろうか?この前人未到のSNSフェイスブックが行き着く先はどこなのだろうか?
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