野沢尚『呼人(よひと)』に続く氏の作品紹介です。チョット久しぶりになるが、実は氏の作品を連続で読破していたのだが、ここの所忙しくて、投稿していなかった。と言うか、以前も掲載したとは思うが、読書に関しては、私の場合投稿するのにかなり時間を擁する為、なかなかアップできない。
と言う事でこの後も氏の作品をアップする予定でもあるが、更に新しい作家も見つけてしまった為に、遅れる事になるかも知れない。とは言え、このGW中に野沢尚『呼人(よひと)』以降読んだ作品に関してはアップしておこうと考えている。
さて、野沢尚氏の作品の中で、過去野沢尚(のざわひさし)『破線のマリス』、野沢 尚『リミット』、野沢 尚『魔笛』、野沢尚『深紅』と割と初期に読んだ作品(かなりくらく、危ないイメージ)に比較して、 野沢尚『ふたたびの恋』、野沢尚『眠れぬ夜を抱いて』の系統に属する作品かなと考える。本木雅弘、安田成美主演で映画にもなった作品でご存知な方も多いかも知れない。残念ながら私は、見てはいないが・・・。1994年2月公開と言うと、バブル崩壊後の多分仕事がメチャクチャ忙しかった頃と思う。
話は、地元博多のラジオ局に就職したばかりの庄司倫子が、その上司寺園部長の紹介で、博多のライブハウス「飛ぶ鳥」を訪れた事から始まる。閉店間際のショーで演奏する八住修吉(シュウ:ボーカル)、河原元吉(ゲン:ベース)、松山義久(マツ:ドラム)、渡辺賢太郎(ケンボー:ギター)のバンドが演奏する中、突然、稲葉一矢がギターで飛び入り参加した。そして修吉の歌と一矢のギターのバトルが始まる。これこそが寺園のたくらみだった。この後、修吉達の打ち上げにインタビューで参加した倫子は、結局修吉と結ばれ、愛人となってしまう。
一方パシフィックレコードと契約した修吉は、その会社の女プロジューサー青木祥子から「ギターが弱い」指摘を受けており、その為にケンボーの変わりに一矢をスカウトする。倫子は婚約者だった歯科医の増田幹夫とも家族とも別れ、家出同然で、修吉達とブルーとレインで東京に向う。取り残されたケンボーが手を振る中で・・・。
東京に来て半年が経ち、アイドル・タレントの前座を務めながら、遂にデビュー・シングル『犬たちの詩』が発売されたが、一ヶ月経ってもオリコンチャートの100位にも入っていなかった。音楽だけで食べていけない為、各自バイトを続けながら、練習していたが、青木祥子に地方での冬の全国ツアー(要はドサ回り)を命じられる。倫子はマネージャーとして皆の世話をしながら、修吉を愛していた。修吉は一矢を可愛がりながら、音楽での才能、つまりボーカルでも一矢の方が優れているのを自覚し始めていた。一方で一矢は修吉を尊敬しながら、倫子をかげながら愛するようになっていた。
ドサ回りを開始するに当たり、青木祥子は一矢に、曲を作っておく様に支持していた。鳥取のライブハウスに、突如出現した祥子は、出演中の一矢達にリクエストする。演奏するのを拒否する修吉、今まで修吉に従順だった一矢が始めて、一人でギター片手に歌い始めた。そして冷ややかだった客が静まり、確かな手応えを感じた祥子と倫子。祥子は、ライブ後、一矢に告げた。『あなた一人ならいける」と。また非情にもケンボーを切ったように今また、一緒に苦労してきたゲンとマツも切り、修吉の歌う場所を奪い、一矢のマネージャーにさせた。
再度、味わうゲンとマツとの別れ、鳥取から博多へ戻る二人。東京に向う一矢と一矢のマネージャーを引き受けた修吉、そして自分の音楽ライターへの夢を再び目指す事にした倫子。
一矢のソロ・デビュー曲、鳥取のライブハウスで歌った『光あるうちにゆけ』を売り込む為に全力を掛けた修吉。そして発売半年後にいきなり売れた。この化け物的な世界で、アルバム製作が始まり、10曲を作らなければならなかったが、倫子が手伝った。3人の関係は続いていたが、一矢が売れるに従って、修吉と倫子の関係は男と女の関係ではなくなっていた。更に、修吉の行動に回りが付いてこなくなりつつあった。音楽事務所の移籍等の問題とコンサート開催で、トラブルが発生するが、最後に一矢が、修吉に告げたのは、『いなくなってくれ』つまり、最初に修吉がケンボーに告げた言葉と同じだった。
倫子に取って八住修吉との別れ。そして一矢のラストソングをコンサートで聞かなければ・・・。
書 籍:『ラストソング』
著 者:野沢 尚
発行年:1994年1月12日初版発行
発行所:株式会社 フジテレビ出版
発 売:株式会社 扶桑社
価 格:1,200円(本体1,165円) 縦1段組み275ページ+あとがき4ページ(著者)
<ハードカバー帯の紹介>
友達を失くしたことが ありますか。
1994年2月全国東宝系ロードショー 主演/本木雅弘 (93年度東京国際映画祭最優秀主演男優賞) 安田成美/吉岡秀隆
「あいつが俺の光だった。 あいつのために、今、俺は歌うよ。」
一人の女が見つめ続けた、男たちの友情と裏切り。
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是非とも皆様に読んで欲しい作品ですが、現実に即すと余りにも現実過ぎる現実がそこにあるような気がします。この作品自身がミュージシャンの現実を如実に表現されているだけに、何ともいえない感動がおきてきます。
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