社会不安障害:SAD、ボランティアとセカンドライフ

SADで会社を休職したが、一年で復帰し、無事定年を務めて、その後の生活とボランティアについて気ままに掲載中

安東能明『ポセイドンの涙』その2

2009-08-13 15:30:41 | 趣味(読書)

安東能明『ポセイドンの涙』の続きというか、かなり暗いあらすじだが、私的読書日記として残す為に掲載する。

青函トンネルの開業16年目を迎える2週間前、構内の点検中に、コンクリートに隠された死体が発見された北海道警松前署刑事生活安全課の課長田口旭彦、地元出身の菅沼係長金子主任らは、現場に向かい、死体を確認すると同時に捜査を開始するその死体は内田保と判明し、兄から捜索願が出されていた内田保の実の娘であり、函館に転勤になっていた根本由貴を、田口らは探し出す

一方、苦労して世界的なデザイナーブランド『REN』のデザイナーとして成功した、三上連は、妻のオルガと共に帰国し『R』というブランドで何故か函館にショップを開店した本来であれば、大都市の東京に出展すべきはずなのに・・・。また三上に取って重要な『パリコレ』が迫っているのにその準備の為にパリに帰ろうともしない・・・。蓮は、記者会見のホテルで根本由貴らしき人物を見かける。一方同じ中学時代の同級の江原政人から、根本由貴が函館に帰って来ている事を教えられ、早く函館から出て行くように言われるが、三上は今年パリに送られて来た、内田保本人の写真を江原に見せ、自分達が内田を殺した事を知らないはずだが、由貴が脅しているのではないかと

昔、北海道松前郡吉岡町という所にニュータウンができ、青函トンネルの掘るための多くの工夫が、家族をつれて移り住んできていた。由貴、政人、政人の弟の知恵遅れの浩二、蓮は、この町で一緒に住み、毎日遊んでいた。政人の父親は最初イカ釣り船の漁師をしていたが、工夫となり、またイカ釣り船にもどってきたが、毎日酔っ払って過ごしていた。母親は小料理屋を持っており、家に寄り付く事はなかった。この小料理屋で多くの男と関係を持っていたが、その中の一人に由貴の父親つまり内田保もいた。一方蓮の父親は作業抗の切削工事に携わってきており、その工事を受け継いだ内田保は、蓮の父親の所に仕事を教わりに来ており、蓮も洋裁教室を開いた由貴の家に母親に連れられて行っていた。

昭和52年7月、昆布取りの為に政人と蓮は船を出し、その船に浩二も乗せ、昆布取りに夢中になっている時に、浩二がいなくなり、亡くなってしまった。浩二の捜索中に多くの漁船やパトカーが出ていたが、その時、内田保と政人の母親がタクシーで帰って来た。その家に母親は駆け込み、更に吉岡のおまわりさんが家に入って行った。これを見ていた由貴は、父が出張に出ているはずなのに不思議に思っていた。その2年後由貴の父親、内田保と母親は離婚し、吉岡を離れ山形へ転校して行った。その後由貴の母親が亡くなり、母に連れられて蓮は、葬式に行くがそこには、由貴の父親内田保も来ていた。

卒業を前にして、蓮と政人は、青函トンネルの作業坑に行く事を思いつき、決行するが、そこで内田保とバッタリ会う。近寄ってくる内田に対し、由貴が内田から暴力を受けていた事を思い出した蓮は、設備の送風ボタンを押し、コンプレッサーが作動して、先に付いているショベルが暴れだし、砂煙の中で人が跳ね飛ばされた。自分も地面に叩きつけられ、気づくと、目の前に内田が倒れていた。政人の名を呼ぶが返事も無く、死んだようになった内田を隙間に押し込み、コンクリートを吹き付けた。なぜこうなったのか?ありえないと思いながら必死にコンクリートを吹き付けた。何時間か後に政人に連れ出された蓮は、自分は何をしたのかわからないまま・・・。

根本由貴は二コーラジャパンの社長コージモから、三上連の同級生である事を理由に『REN』のブランド買収の交渉をする為に、函館に飛ばされて来ていた。一方三上連は、パリに内田の写真を送ってきて脅迫しているのは、その娘である根本由貴だと勘違いしていた

江原と同じ吉岡出身の早川は、イカ釣りの漁師をしていたが、漁師を止めてサッサと抗夫になり10年近く働いた後に、工事から手を洗い、函館に水産加工場をつくった。同じ出身と言う事で、その工場で江原を可愛がっているかのように使っていた

そして最初の内田保の死体発見の2週間後、今度は列車に引かれた死体が発見される。来ている服類が全て「チェスター」と言う米国の著名ブランドで統一されていた長塚と言う男だった

一方、蓮に、不信な、脅しとも何が目的なのか分からない脅迫の手紙やFAXがその後も送られてくる。蓮と正人は訳が分からないまま、過ごしていくが・・・。由貴は母に辛くあたっていた父、そして江原政人の母親のお店、浩二・・・。離婚した理由は気づいていたし、吉岡に住んでいたかったが、山形に引っ越して、すぐ母親が癌でなくなり、遠い親戚に引き取られ、その後、父とは一回もあった事がなかった。

由貴は、「REN」の買収の為に蓮に近づくが、蓮に見せられた内田の写真に何の反応を示さなかった。蓮は脅迫の犯人が由貴ではないと知り、また同時に江原政人も由貴ではない事を知る。それではだれが???

江原は、水産加工場で研修生として雇っている中国人の小麗と、同棲状態となっていたが、ある時に上司の多良に見つかり、小麗も奪われてしまう。中国の研修生との関係は、禁止となっており、それを見つかった事で、社長の早川から、新たな命令を受け、昔ながらの金融の取り立て屋の仕事を請け負う。この仕事とは、第二工場として土地を買収する事であったが、その買収土地に行くと、変な話を聞かされる。「近くに駅ができると・・・」

田口は、入出記録等から、三上がこれら一連の殺人に絡んでいるのではないかと気づき、三上を追うと同時に、飛行場から消えた三上に対し、逮捕状を取る。一方菅沼は、江原政人を含め早川を疑っており、政人を呼び出し迫るが、逆に政人に刺されて重傷を追う。

政人は由貴のアパートで、血にまみれた服を着替え、由貴と三上に会いに行くが、政人の会社の冷凍倉庫で三上と争っている時に、冷凍倉庫に閉じ込められてしまう。この冷凍倉庫に真犯人を呼び出していたのだが。その犯人に・・・。

しばらくすると小麗が、早川水産の多良を刺して、ドアを開けてくれた

政人は倉庫を飛び出し、逃げようとしていた早川を殴り倒し、蓮と一緒に青函トンネルに向う。トンネルの底(内田の死体が発見された付近)にまで車を走らせ、下りると同時に、ポンプ室の配線をカッターで切断した

青函トンネルは、湧き水をポンプで吸い上げないと水没してしまうが、今まさに浸水量が膨大に増加しつつあった。ポンプ室に入った江原、三上と早川。江原は、ポンプ室から、巻き上げ室にいる田口に電話を掛ける。

三上連をパリから呼び寄せ、函館に店を開けと言った真犯人は早川だった。そして内田の死体発見後の殺人事件(長塚を殺した)の犯人も早川だった

長塚は、三上と契約する為に、早川から三上をゆするネタを貰い、変わりにお金を早川に渡した。しかし三上がそのネタ(内田殺し)を言われても、契約しなかった事から、早川に渡したお金を戻すように要求したが、早川は断わった。長塚は、早川が買い占めている新幹線周辺用地の事を知っており、会社の力を使って新幹線をストップさせるとはなしたらしく、これで殺してしまう事にし、且つ、その罪も江原と三上に押し付けようとした。

早川は、早くから漁師に見切りをつけてトンネルマンになったが、漁業権を維持する為に、年の内に何度が漁に出ていたが、それが第2宝永丸であり、江原の父親が雇われ船員として乗っていた船だった。トンネル工事がピークを迎える中で、企業体の下請けがどんどん切られていった。この中で函館のイカ処理工場が2千万円で売りに出ている出ている事をしり、どうしてもその工場を手に入れたかったが、金がなかった。この為に漁船保険に目を付け、江原の父親と第2宝永丸にのり、ころあいを見計らって、漁船に火をつけた(つまり、江原の父親も殺した事になる)。

この事故を青函連絡船で目撃して、写真を撮影したのが、内田保であり、早川の親会社の労務担当をしていた内田は、下請けの本間組(つまり早川達)を切りたかった。この為に海難審判での、漏れた潤滑油が過給機にかかって発火したという主張を覆す為に、高校の先生や潤滑油の発火点等を調べたりしていたが、この事が早川の知るところとなり、当日のふいご祭りの翌日でトンネルの中が人の少ない日に、内田を呼び出した。たまたま三上と江原はそこに居合わせただけだった。

田口は、水没寸前のポンプ室へ、ゴムボートで向かい、上記の話を江原とする。三上は水に飛び込み、田口ののるゴムボートに泳ぎ着くが、江原と早川は・・・。

その後新函館まで新幹線が開通し、警視へ昇進した田口は、再び函館に戻ってきた。金子と会ってなつかしい話をしながら、ふと吉岡中学校に寄った。ここで、卒業文集の中に三上連と江原政人の作文を見つける。

この江原政人の作文「トンネルマン」の最後には「世話になった人が、とても悲しそうな顔をして、おまえが大人になる頃には、トンネルは完成しているかもしれないぞ、そうすると、この吉岡のにぎわいはなくなってしまうのだぞ、と言いました。ぼくは泣きました。それで決意したのです。一年でも半年でも一月でも、青函トンネルの工事を長引かせてやろうと思ったのです。そう言うと、大人の人たちはちょっと困ったような顔になりましたが、ほんとうはな、俺たちもそう思ってるんだよと頭をなでてくれました。だから、僕はそのためならどんなことでもやるのです。」が記載されていた。これを読みながら田口は戦慄を覚えた。

11年前の内田保の死体の犯人は早川に違いないと確信していたが、実はこの作文を書いた人物こそが犯人だった


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