社会不安障害:SAD、ボランティアとセカンドライフ

SADで会社を休職したが、一年で復帰し、無事定年を務めて、その後の生活とボランティアについて気ままに掲載中

松岡圭祐の世界その22『千里眼の教室』

2008-07-30 09:21:00 | 趣味(読書)

松岡圭祐の世界その21『千里眼 ミッドタウンタワーの迷宮』に続き、千里眼新シリーズの第5弾です。 <カバーのPR> 高校が独立国に! 最強のスクールカウンセラー岬美由紀。いじめも自殺も彼女が阻止する。 <カバー裏のストリー紹介> 酸素欠乏症を引き起こす時限式爆発物を追い、名古屋の中心街をF1で疾走する臨床心理士・岬美由紀は最悪の事実を突きつけられる。それが高校に仕掛けられたと。そして残された時間は1時間を切っていると---。 いじめや自殺、社会格差など、現代日本の抱える問題点に鋭く切り込みながら、美由紀の新たな側面を描き出す。シリーズの新たな地平を切り拓く書下ろし第5弾。異色の社会派エンターティンメント! 千里眼の教室A.jpg書 籍:『千里眼の教室』 発行年:2007年5月25日初版発行 発行所:株式会社角川書店 価 格:552円(税別) 縦一段組み328ページ+解説4ページ(ライター 石井千湖)

<ライター石井千湖氏の解説からのストリー抜粋> 物語は、岬美由紀が脳神経科医・五十嵐哲治を追って名古屋の町を疾走するシーンから始まります。彼はいじめが発生する原因に関して、ある斬新な説をとなえていいました。五十嵐は自身の研究結果を厚生労働省と文部科学省に訴え、その理論に基づく精度の改善を求めますが、黙殺されてしまいます。そこで彼は、ある学校に爆発物を仕掛けるという強行手段に出たのです。狙われたのは、岐阜県にある氏神工業高校。五十嵐の息子・聡が通う高校でした。聡は以前いじめられていて、そのことが五十嵐を今回の行動に駆り立てたのではないかと美由紀は考えるのですが・・・。 この作品の舞台になっている氏神工業高校、ちょっと変わった学校です。地域の過疎化によって一帯の公立高校が合併し、名称は工業高校なのに、普通化、工業科、農業科が混在している。偏差値は30前後。ほとんどの生徒は自分の将来に絶望しており、日々無気力に過ごしています。一方教師をはじめとする大人たちは事なかれ主義。いじめは見てみぬふり。生徒が自殺予告の手紙を出したことが判明しても放置しています。昨年、全国的に世界史の履修漏れ問題が顕在化してからも、何の改善もしていません。挙句の果てには教育委員会までもが、問題の隠蔽に加担する始末。 そんな日本の教育の暗部をぎゅっと凝縮したような学校が激変します。五十嵐の仕掛けた爆弾は高校生の体には傷をつけませんでしたが、精神になんらかの影響を与えたようなのです。生徒は学校に立てこもり、ひとつの国家を作ります。その国の名は「氏神高校国」。生徒会長の菊池は彼らの国の独立を認めるように要求し、もし妨害するならば生徒をひとりずつ粛清していくと告げます。そして、早速血が流される。ひとりの女生徒が国旗掲揚塔から投げ落とされるのです。学校から締め出され、なすすべもなく見守る教師たちの目の前で。 ~~~『千里眼の教室』は、学校に属したまま、自分たちで未来を切り拓こうとするという店が出色です。「氏神高校国」の政府はいじめっ子には制裁を与え治安を維持し、それぞれの生徒の得意分野を生かした独自の経済システムを確立します。しかし、教師も親も日本の政府も、そんな彼らを認めようとはしません。徐々に追い詰められてゆく高校生。岬美由紀だけが、彼らを理解しようとします。 本書は、いじめ、必須科目の履修漏れ、格差社会など、現在進行形で深刻化している問題を描いています。がユニークなアイデアとスピーディな物語展開、テンポのよい文体に乗って読み進めていくうちに、自然とそれらの問題への関心も深まるという感じ。派手なアクションあり、ミステリー的などんでん返しあり、物資が乏しい場所での生活の知恵や『ドラゴン桜』顔負けの学習法など現実にも役立ちそうな情報ありで、サービス満点。社会批評エンターテインメントとでもいうべき一冊なのです。

千里眼新シリーズを読み始めてから、かなり臨床心理学がより現実的な解釈へとかわり、物語の展開も身近な・つまり日本国内での話し中心となり、旧千里眼シリーズとは、また違った趣があるなと感じます。

最も身近なテーマに変わっても相変わらず、奇想天外な現実にはありえない世界を描いており、そういう意味ではやはり超エンターテイメント小説だと思う。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿