社会不安障害:SAD、ボランティアとセカンドライフ

SADで会社を休職したが、一年で復帰し、無事定年を務めて、その後の生活とボランティアについて気ままに掲載中

松岡圭祐の世界その16「イリュージョン:マジシャン第2幕」

2008-01-21 11:39:20 | 趣味(読書)

松岡圭祐氏の書籍紹介です。この本は、松岡圭祐氏の世界その9「千里眼シリーズ」で「千里眼のマジシャン」を紹介したが、この本の後に書かれた物であり、松岡圭祐氏の世界その13「マジシャン」 のシリーズ第2作の位置づけである。
つまり、マジシャン里見沙希警視庁捜査二課舛城警部補が登場人物となる。但し、今回の作品の主人公はだらしない無職の父親と生活の為に無理をして育てってくれた母親、その離婚と母親の逮捕により、わずか15歳で家出して、生きていく為に、年齢を偽り、趣味のマジックを利用して、万引きGメンをしながら、同時に万引きに手を染めていく椎橋彬とその万引きの手口がマジックの技術を使ったものと見破り追い詰めていく舛城警部補の2人の物語となっている。
ハードカバー帯の推薦文にあるように「われわれ読者は、この少年の生き方をはたして否定できるのだろうか。」と言うようなかなり重い、切ない物語でもあるが、最後は舛城警部補の人間くささがこの少年を救っている気がする。一読に値する書籍である。
氏の作品の中では、「催眠」シリーズや「千里眼」シリーズのどれとも異なり、むしろ東野圭吾氏の「幻野」(最近読んだ本2(東野圭吾) 参照)に近いジャンルと思われる。最も最後の終わり方が正反対となっているが・・・。

書 籍:「ILLUSION イリュージョン マジシャン第2幕」
発行年:2003年10月20日初版発行
発行所:(株)小学館
価 格:1,600円+税

<ハードカバー裏のストーリー紹介>

画像 007-2.jpgマジシャン愛好家の少年・椎橋彬は母親の逮捕を気に、家出、上京する。飢えとの戦いのなか、テレビのニュース番組で万引きGメンへの密着取材を目にしたとき、椎橋は閃いた。マジックのタネを利用すれば、完全無欠の万引き犯になれるのでは。やがて、奇跡のような万引きを成功させる神出鬼没の万引き犯の存在が、小売業者達を騒然とさせる。万引き家業で一筋で財をなすまでになった椎橋。防犯カメラをも欺く彼の「ショービジネス」に疑いを持ったのは、かつて天才少女・里見沙希からマジックの手ほどきを受けた、舛城捜査二課警部補だった・・・。

少年が犯罪を引き起こす複雑な深層心理のからくりと少年法のあり方を世に問いながら、巧妙なトリックの連続と息もつかせぬスピード感で一気に読ませる、ヒューマン・サスペンス・ノベルの感動作。
<ハードカバー表裏の紹介>

欺瞞に満ちた社会の仕組み、嘘と虚飾の人間関係・・・この世は全て幻想だ!やり場のない怒りと絶望感を覚えた少年は、得意のトリックを駆使して、たったひとりで闘いを挑んだ。コンビニでの万引きからスタートし、殻の販売は次第にエスカレートしていくが、その手口は誰にも見破ることはできなかった。だが、そこに落とし穴が待っていた。
本社は、数多ある少年犯罪小説や、自分探しの小説とは明らかに一線を画している。少年が抱える問題はもっと広い。他社=社会との距離とコミュニケーションの方法である。それを稀代のストーリーテラー松岡圭祐は、実現可能、防御不可能のトリックを操る事件を通して、決して声高にではなく、静かに静かに描いていく。まさにこれは、松岡圭祐の新たな面を打ち出した、現代の黙示録と言えるだろう。われわれ読者は、この少年の生き方をはたして否定できるだろうか。

関口苑生(文芸評論家)


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