楡周平『無限連鎖』に続く、久しぶりの楡周平氏の作品紹介であるが、この作品は今まで私が読んだ氏の作品とは全く発想の違う作品と思う。
楡周平『朝倉恭介 Cの福音・完結編』や楡周平『マリア・プロジェクト』等とは明らかに異なり、ハードボイルドな世界(表現が古いがダーティな世界)から全くはなれ、この作品は現代社会の余りにも切実な問題を、奇想天外な方法で、解決しようと奮闘する元商社マンの話である。
本人は、情熱を持って最初からこの課題に立ち向かう事を望んだわけではなく、仕事上の失敗と言うか、コミュニケーションの悪さとタイミングの悪さで、結果的に日本の大手商社でエリートクラスを歩んできたにも関わらず、出世の道を閉ざされ、退職せざるを得ない状況におい込まれる。 その原因となったのは、上司の紹介(親戚)で来た新入社員の面接で、上司の意向が知らされていなかった為に、採用不可とした事により、上司の怒りを買った事だった。
仕方なく、生まれ故郷で多大な借金を抱え、返すあてもない緑原町役場の町長を引き受ける事にしたが・・・。
書籍名:『プラチナタウン』
著 者:楡 周平(にれ しゅうへい)
発行所:株式会社祥伝社
発 行:2008(平成20)年07月30日初刊発行
初 校:『小説NON』平成18年11月号~平成20年4月号
定 価:1,800円+税 頁 数:縦一段組み408ページ
<ハードカバーの帯の作品紹介>
町長、老人集めて財政再建って、どうやんのすか?
読めば分かります
これぞぐっ~ジョブ!? 平成の大合併からも爪弾き。 財政破綻の寸前の田舎町が採った 逆転の秘策とは? シリアスな問題に明るく切り込む、硬派な新社会派小説!
国だって老人を切り捨ててるっているのに、 あの町長、モウ~、 大したもねえ。
お年寄りが増えたら、笑顔も増えたわね、 コケコッコーだこと
こんな町の町長を押し付けられて ブウたれていたけど、 眼からウロコのビジネスモデル誕生かって、 今じゃ全国で大評判だブヒッ。
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四井商事食料事業本部穀物取引部部長の山崎鉄郎。日本でも1、2位を争う大手総合商社のエリートであったが、直属の上司取締役八代の甥を、入社試験面接で落とした事で、子会社への出向となるか?中学の同級(山崎の故郷の緑原町役場に勤めている)のクマケンの要請で莫大な借金を抱える町の町長になるかの選択をせまられる事になる。
結局、将来のある?町長になる事を決意し、立候補の要請を受ける。莫大な借金を抱える町では、対立候補はなく、町会議員の協力を得て町長に当選する。
前の町長が、良かれと思って建設した、町の娯楽施設や医療施設が殆ど有効利用されずに、しかもそれを維持する為に莫大な経費となって、重荷になっていた。更に企業誘致の為の工業団地も整備したが、単なる空き地となっていた。
山崎は、四井商事を止める前に、不動産部門で同期の牛島幸太郎と偶然に飲む機会があり、そこで四井の「老人ホーム」事業の話を聞く。牛島の助言から、町長になる決心をする事になったのだが・・・。
山崎は、町長に当選すると同時にクマケンを助役にし、老人介護施設を核にした、事業計画を進める事にする。その為に四井の新しい事業を推進するプロジェクトに協力する形で、まず工業団地を無料で四井商事に提供し、安く介護施設やその周辺に介護する人の宿泊施設、商業施設等を安く建設できる様にする。
日本の現代社会の最大の課題となる老人介護と地方の財政破綻を一挙に解決する老人介護を核にした全く新しい事業構想を四井商事と一気に進める事を、マスコミを利用する事で、PRし、必要な介護等の人材や、実際に都会から地方に移住してくれる裕福なターゲットへの体験ツアーを実施する。
重荷となっていた娯楽施設や、医療施設がある事が逆に都会からの移住する人へのPRとなり、かつ地元で取れる新鮮な野菜や魚が都会より安く手に入る事をPRし展開する。
介護に夢を託し、結局介護では仕事にならず、別の仕事についている周辺の若い人材を集め、実践教育し、その他のサービスのサポート等も安くできる土地性を活かして、介護施設の周辺にその介護する人達や商業施設も作る事により人口も増え、周辺事業が一気に発展すると同時に、都会と同じ品質を実現する為、そのサービス向上への強力も依頼する。
結果、四井の新しいビジネス「老人介護」を核にした財政再建が、見える事になり、オープンの日に列席した四井の役員に、この町はまさに「プラチナタウン」だと言わせた。
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