「なによ、なによ、なんなのよ!」
シャンも湯気で姿が見えなくなっているコーイチを見て叫んだ。
「きっと限界を超えてしまったから、身体機能にもの凄い負荷がかかって正常に作用しなくなったんだわ!」
ブロウが泣き出しそうになりながら言った。
「どう言う事?」
シャンがきょとんとした顔で聞き返した。ブロウは大粒の涙を目いっぱいに浮かべていた。
「オーバーヒートよ!」ブロウはとうとう泣き出した。「からだを動かし過ぎて、からだ中の水分が汗になって流れ出しているんだけど、熱が高すぎて蒸発しているのよ! これじゃ血液も熱を持っちゃっているはずよ!」
「どうするのよ!」シャンがぶるっと身を震わせた。「このままじゃ、コーイチ君……」
「言わないで!」ブロウは両耳を両手できつく塞いだ。そして、弱々しくつぶやいた。「……その先は、言わないで……」
「あう、あう、あ……」
不意に声がした。二人はコーイチを見た。コーイチは自身の立てている湯気の向こうから声を発していた。
「コーイチ君! 大丈夫?」
ブロウが駆け寄った。しかし、発している高熱のせいで、すぐそばまでは近付けない。
「あの……ボクは、どうしたんだい?」コーイチは呆けたような顔をブロウに向け、弱々しい声で言った。「シャンさん……ちゃん……のくれたドリンクを飲んで……急に気分が高揚して……スミ子に名前を書いて……そして、そして……」
「コーイチ君! お願い、喋らないで!」ブロウが叫んだ。それからシャンの方に振り返った。「お姉様のドリンクの効き目が切れたようね。意識は戻ったみたいだわ。……でも、これじゃ……」
「うーん、厳しいわねぇ……」シャンが腕組みをしながら言った。「あれだけ効いたんだから、反動がこわいわね……」
「何を他人事みたいに言っているのよ!」ブロウが苛立たしげに言った。「元々、お姉さまが原因じゃない!」
「なによ! あなたがスミ子を落とさなければ何もなかったのよ!」
「そう言う話じゃないでしょう!」
「あ…… 仲良く……仲良く……ね」
コーイチが二人の方を見て、ささやくように言った。二人は黙り込んだ。
しばらくして、ブロウが意を決したような表情で声をかけた。
「コーイチ君、後二人書けば終わるわ。どう? 書ける?」
「ブロウ!」シャンがブロウの腕をつかんだ。「コーイチ君、とっても危険な状態なのよ。それが一番分かっているのは、あなたじゃないの!」
「でも、このままじゃ、どうにもならないわ……」ブロウの唇が震えている。泣き出したいのをこらえているようだ。「だったら、何とか後二人書いてもらって、スミ子にコーイチ君の名前を金色にさせるしか他に方法がないわ」
「そうかもしれないけど……」
「あ……後……二人?」コーイチがかすれた声で言った。「……ゴメン ……もう、名簿の名前……全部、使ったんだ……」
「ええっ!」ブロウは驚いて、コーイチを見た。湯気が少し弱くなっていた。コーイチの水分がなくなりかけているようだ。「名簿、もう無いの? じゃあ、他に知っている人はいないの?」
「……うーん……」
「本物の幼なじみの京子さんは?」シャンが声をかけた。「手品の助手だった逸子ちゃんは?」
「……そうだね……」
コーイチはペンを握り直そうとしたが、力が入らず、ぽろりと転がり落ちてしまった。コーイチはぼうっとした視線を転がるペンに向けた。コーイチのからだから立つ湯気が止まった。
「……あ、あ、あ……」
コーイチは寄り目になって、仰向けに床に倒れてしまった。
「きゃあっ!」
「コーイチ君!」
シャンとブロウは同時に叫んだ。
つづく
シャンも湯気で姿が見えなくなっているコーイチを見て叫んだ。
「きっと限界を超えてしまったから、身体機能にもの凄い負荷がかかって正常に作用しなくなったんだわ!」
ブロウが泣き出しそうになりながら言った。
「どう言う事?」
シャンがきょとんとした顔で聞き返した。ブロウは大粒の涙を目いっぱいに浮かべていた。
「オーバーヒートよ!」ブロウはとうとう泣き出した。「からだを動かし過ぎて、からだ中の水分が汗になって流れ出しているんだけど、熱が高すぎて蒸発しているのよ! これじゃ血液も熱を持っちゃっているはずよ!」
「どうするのよ!」シャンがぶるっと身を震わせた。「このままじゃ、コーイチ君……」
「言わないで!」ブロウは両耳を両手できつく塞いだ。そして、弱々しくつぶやいた。「……その先は、言わないで……」
「あう、あう、あ……」
不意に声がした。二人はコーイチを見た。コーイチは自身の立てている湯気の向こうから声を発していた。
「コーイチ君! 大丈夫?」
ブロウが駆け寄った。しかし、発している高熱のせいで、すぐそばまでは近付けない。
「あの……ボクは、どうしたんだい?」コーイチは呆けたような顔をブロウに向け、弱々しい声で言った。「シャンさん……ちゃん……のくれたドリンクを飲んで……急に気分が高揚して……スミ子に名前を書いて……そして、そして……」
「コーイチ君! お願い、喋らないで!」ブロウが叫んだ。それからシャンの方に振り返った。「お姉様のドリンクの効き目が切れたようね。意識は戻ったみたいだわ。……でも、これじゃ……」
「うーん、厳しいわねぇ……」シャンが腕組みをしながら言った。「あれだけ効いたんだから、反動がこわいわね……」
「何を他人事みたいに言っているのよ!」ブロウが苛立たしげに言った。「元々、お姉さまが原因じゃない!」
「なによ! あなたがスミ子を落とさなければ何もなかったのよ!」
「そう言う話じゃないでしょう!」
「あ…… 仲良く……仲良く……ね」
コーイチが二人の方を見て、ささやくように言った。二人は黙り込んだ。
しばらくして、ブロウが意を決したような表情で声をかけた。
「コーイチ君、後二人書けば終わるわ。どう? 書ける?」
「ブロウ!」シャンがブロウの腕をつかんだ。「コーイチ君、とっても危険な状態なのよ。それが一番分かっているのは、あなたじゃないの!」
「でも、このままじゃ、どうにもならないわ……」ブロウの唇が震えている。泣き出したいのをこらえているようだ。「だったら、何とか後二人書いてもらって、スミ子にコーイチ君の名前を金色にさせるしか他に方法がないわ」
「そうかもしれないけど……」
「あ……後……二人?」コーイチがかすれた声で言った。「……ゴメン ……もう、名簿の名前……全部、使ったんだ……」
「ええっ!」ブロウは驚いて、コーイチを見た。湯気が少し弱くなっていた。コーイチの水分がなくなりかけているようだ。「名簿、もう無いの? じゃあ、他に知っている人はいないの?」
「……うーん……」
「本物の幼なじみの京子さんは?」シャンが声をかけた。「手品の助手だった逸子ちゃんは?」
「……そうだね……」
コーイチはペンを握り直そうとしたが、力が入らず、ぽろりと転がり落ちてしまった。コーイチはぼうっとした視線を転がるペンに向けた。コーイチのからだから立つ湯気が止まった。
「……あ、あ、あ……」
コーイチは寄り目になって、仰向けに床に倒れてしまった。
「きゃあっ!」
「コーイチ君!」
シャンとブロウは同時に叫んだ。
つづく
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