「うわっ!」
エレベーターの扉を背にして座り込んでいたコーイチは、その支えとなっていた扉が左右に開かれて無くなったため、そのまま後ろに倒れ込み、フロアーに後頭部を打ち付けた。
コーイチは、そのままの姿勢で天井の蛍光灯を見上げ、今起きた出来事を思い返していた。
・・・あのおじいさんは何者なんだ? どうして壁の中に入る事が出来るんだ? 芳川さんとどういう関わりがあるんだ? 格好つけて先輩ぶったせいで、なんだか敵認定されてしまったようだ。と言う事は、僕はこれからどうなってしまうんだ? コーイチの喉がゴクリと音を立てた。
コーイチは目を閉じ、老人の顔を思い描いてみた。・・・あのおじいさんは、きっとどこかの悪の組織の大ボスだ。あんな衣装を着ているし、あんな不思議な事ができるんだから、これはまず間違いは無いだろうな。とすると、芳川さんは正義の味方ってことになるぞ。そうか、芳川さんがいた海外支社が、あのおじいさんの率いる悪の組織と戦う正義の組織ってことなんだ! コーイチは、全身に様々なハイテク・ウェポンを収納している桃色の超合金製のコンバットスーツに、フルフェイスのヘルメットを装着し、招き猫のようなファイティング・ポーズを取っている洋子の姿を、思い浮かべていた。・・・う~ん、今放映中の「お魚戦隊ギョギョレンジャー」って感じかなぁ。コーイチの口元は思わずゆるんでしまった。
「コーイチ・・・さん?」
真上から声がかけられた。コーイチは目を開けた。心配そうな印旛沼逸子の顔が、逆さまになって見えていた。コーイチはあわてて逸子の前に立ち上がった。
「大丈夫?」
逸子が心配そうな声で言って、コーイチへ近付いて来た。逸子は、ショートカットの黒髪、赤いTシャツにデニム地のミニスカート、そして黒いバスケットシューズを履いていた。化粧はしていないが、十分に綺麗だった。
「うん・・・大丈夫だよ」コーイチはぶつけた後頭部をなでながら言った。「幸い、たんこぶも出来てはいないみたいだし・・・」
「よかった・・・」逸子はほっとして、目に涙を溜めながら微笑んだ。「目を閉じたまま笑っていたので、ちょっと心配だったのよ」
「そうだったんだ・・・ 心配かけちゃったね」
「いいのよ。・・・ただ、どこに行っていたのか、教えてちょうだい」
「どこって・・・」コーイチは不思議そうな顔で言った。「エレベーターに乗っていたんだけど・・・」
「確かに、林谷さんの話じゃ、ずいぶん早くに来たってことだったけれど・・・」
「そうさ。先に行って眺望を楽しんでいるように言われて、エレベーターに乗ったんだ。印旛沼さんにも会ったんだよ」
「それは父から聞いたわ。で、それからどこへ行ったの?」
「だから、エレベーターに乗ったんだ」
「他へは行かなかったの?」
「うん」
「ずっと、エレベーターの中に?」
「うん」
「・・・」逸子は腕を組み、コーイチをじっと見つめていた。何か考え事をしているようだった。しばらくすると、逸子の顔がぱっと明るくなった。「そうよ! コーイチさんは、何かのせいでエレベーターの中で気を失って、ずっと往復していたんだわ! ・・・そうよね、コーイチさん?」
「え?」
「だって、もう七時半を回っているのよ」
「なんだってぇ?」コーイチは思わず大きな声を出してしまった。「じゃあ、ここは・・・」
「最上階、今夜の会場よ。もう始まっているわよ」
コーイチは逸子の横を通り抜けて進み出た。多くの人たちが、あちこちで談笑をしていた。誰もがおいしそうに寿司を食べている。
「ねえ、コーイチさん」逸子が声をかけてきた。コーイチは振り返る。逸子の半泣きな、心配そうな顔があった。「本当に、大丈夫なの・・・?」
「ああ、もちろん!」コーイチは元気な声を出した。「逸子さんの言っていた通り、エレベーターの中で気を失って、ずっと往復していたようだね。色々と忙しかったから、つい疲れが出たのかもしれないな。でも、もう、すっかり回復したよ!」
・・・壁抜け老人とか、エレベーターの恐怖の動きなんかは、話さない方がいいだろうな。これ以上心配をかけたくないし、下手に喋ると、逸子さんが悪の組織に狙われてしまうかもしれないし・・・
「それにしても、一体、どうなっているんだろうね?」
コーイチはつぶやきながら、ぽりぽりと頭をかいた。
つづく
いつも熱い拍手、感謝しておりまするぅ
(ちなみに、プロフィール紹介の画像をご覧下さい。気が付いた方は私と同様に○○ファンの方ですね。ニギニギ、ニギニギ・・・)
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エレベーターの扉を背にして座り込んでいたコーイチは、その支えとなっていた扉が左右に開かれて無くなったため、そのまま後ろに倒れ込み、フロアーに後頭部を打ち付けた。
コーイチは、そのままの姿勢で天井の蛍光灯を見上げ、今起きた出来事を思い返していた。
・・・あのおじいさんは何者なんだ? どうして壁の中に入る事が出来るんだ? 芳川さんとどういう関わりがあるんだ? 格好つけて先輩ぶったせいで、なんだか敵認定されてしまったようだ。と言う事は、僕はこれからどうなってしまうんだ? コーイチの喉がゴクリと音を立てた。
コーイチは目を閉じ、老人の顔を思い描いてみた。・・・あのおじいさんは、きっとどこかの悪の組織の大ボスだ。あんな衣装を着ているし、あんな不思議な事ができるんだから、これはまず間違いは無いだろうな。とすると、芳川さんは正義の味方ってことになるぞ。そうか、芳川さんがいた海外支社が、あのおじいさんの率いる悪の組織と戦う正義の組織ってことなんだ! コーイチは、全身に様々なハイテク・ウェポンを収納している桃色の超合金製のコンバットスーツに、フルフェイスのヘルメットを装着し、招き猫のようなファイティング・ポーズを取っている洋子の姿を、思い浮かべていた。・・・う~ん、今放映中の「お魚戦隊ギョギョレンジャー」って感じかなぁ。コーイチの口元は思わずゆるんでしまった。
「コーイチ・・・さん?」
真上から声がかけられた。コーイチは目を開けた。心配そうな印旛沼逸子の顔が、逆さまになって見えていた。コーイチはあわてて逸子の前に立ち上がった。
「大丈夫?」
逸子が心配そうな声で言って、コーイチへ近付いて来た。逸子は、ショートカットの黒髪、赤いTシャツにデニム地のミニスカート、そして黒いバスケットシューズを履いていた。化粧はしていないが、十分に綺麗だった。
「うん・・・大丈夫だよ」コーイチはぶつけた後頭部をなでながら言った。「幸い、たんこぶも出来てはいないみたいだし・・・」
「よかった・・・」逸子はほっとして、目に涙を溜めながら微笑んだ。「目を閉じたまま笑っていたので、ちょっと心配だったのよ」
「そうだったんだ・・・ 心配かけちゃったね」
「いいのよ。・・・ただ、どこに行っていたのか、教えてちょうだい」
「どこって・・・」コーイチは不思議そうな顔で言った。「エレベーターに乗っていたんだけど・・・」
「確かに、林谷さんの話じゃ、ずいぶん早くに来たってことだったけれど・・・」
「そうさ。先に行って眺望を楽しんでいるように言われて、エレベーターに乗ったんだ。印旛沼さんにも会ったんだよ」
「それは父から聞いたわ。で、それからどこへ行ったの?」
「だから、エレベーターに乗ったんだ」
「他へは行かなかったの?」
「うん」
「ずっと、エレベーターの中に?」
「うん」
「・・・」逸子は腕を組み、コーイチをじっと見つめていた。何か考え事をしているようだった。しばらくすると、逸子の顔がぱっと明るくなった。「そうよ! コーイチさんは、何かのせいでエレベーターの中で気を失って、ずっと往復していたんだわ! ・・・そうよね、コーイチさん?」
「え?」
「だって、もう七時半を回っているのよ」
「なんだってぇ?」コーイチは思わず大きな声を出してしまった。「じゃあ、ここは・・・」
「最上階、今夜の会場よ。もう始まっているわよ」
コーイチは逸子の横を通り抜けて進み出た。多くの人たちが、あちこちで談笑をしていた。誰もがおいしそうに寿司を食べている。
「ねえ、コーイチさん」逸子が声をかけてきた。コーイチは振り返る。逸子の半泣きな、心配そうな顔があった。「本当に、大丈夫なの・・・?」
「ああ、もちろん!」コーイチは元気な声を出した。「逸子さんの言っていた通り、エレベーターの中で気を失って、ずっと往復していたようだね。色々と忙しかったから、つい疲れが出たのかもしれないな。でも、もう、すっかり回復したよ!」
・・・壁抜け老人とか、エレベーターの恐怖の動きなんかは、話さない方がいいだろうな。これ以上心配をかけたくないし、下手に喋ると、逸子さんが悪の組織に狙われてしまうかもしれないし・・・
「それにしても、一体、どうなっているんだろうね?」
コーイチはつぶやきながら、ぽりぽりと頭をかいた。
つづく
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頭脳明晰で沈着冷静なリーダーのギョギョレッド、独断専行気味だが正義に厚いギョギョブルー、仲間一人一人に気を配り影のまとめ役のギョギョグリーン、お調子者で時に失敗もするが気は優しくて力持ちなギョギョイエロー、紅一点で色仕掛けに長けたギョギョピンクの5人からなっている。
さあ、「お魚戦隊ギョギョレンジャー」よ! 世界の海を荒らす「ブラックマーマン」の恐ろしい企てに敢然と立ち向かうのだ。
な~んて感じですかね。いつもありがとうございます。
お魚戦隊ギョギョレンジャー観てみたい(笑)