階段を降りながら身づくろいをする。
最後の一段の前で立ち止まった。
昨日ここで転びそうになったんだな。そしてカバンの中味をブチ巻いて、拾い集めたら、その中に例の“あれ”があったんだよな…… と言う事は、ここで拾ったのかな。いやいやいや、さすがのボクでも拾ったら気付いたはずだ…… と思うんだけど、たぶん、きっと…… 今一つ自分に自信を持てないコーイチであった。
コーイチは妙に慎重に最後の一段を降りた。こう降りれば何事もなかったんだろうな。コーイチは自分の部屋のある二階を見上げた。あれだけ激しくドアを閉めたんだから“あれ”は目を覚ましたかもしれないな。今頃ボクを探して開いたり閉じたりしているかもな。そうだ、何かのはずみで南部さんの所へでも行ってくれないかなぁ、あの人はついていない人だから可能性は大きいぞ…… コーイチは淡い期待を抱いて歩き出した。
素足に革靴はやはり良い気持ちではない。コーイチはやはり靴下を買うことにした。いつも利用しているコンビニエンス・ストアが見えた。昨日居た恰幅の良いおばさんが出入り口前で掃除をしていた。このおばさん、ちょっと苦手だなぁ、別の店で買おうか…… そう思い、前を素通りしようとした途端、おばさんはコーイチのほうを見て「あっしゃいませー!」と、少し発音の変わった大きな声を出し、さっと横へずれた。コーイチは仕方なく店に入った。
でも、どうしてボクが客だって分かるんだろう…… そんな顔をしてたのかな。コーイチはレジに立ったおばさんを見て思った。とりあえず、一番安い靴下を持ち、レジへ向かった。
「あっしゃいませー! 紳士用靴下が三百五十円でーし!」
コーイチは料金を払った。覚悟はしていたが、こんなに大きな声で言われると、やはり恥ずかしい。別の店にすれば良かったなぁ。
おばさんは不意に顔をコーイチに近づけ、声をひそめて続けた。
「すぐご利用になーますかー」
「えっ?」
おばさんはレジのカウンター越しに太い右手を伸ばし、人差し指でコーイチの靴を指した。コーイチもつられて靴を見た。
「裸足でーし!」
コーイチはギクッとし、身を強張らせた。コーイチは指摘された靴を見つめていた。
す・る・ど・い! 人は見かけによらないとは言ったものだ。ひょっとして超能力者かな…… そうだ、このおばさんなら信じてくれるかもしれない。
コーイチは下を向きながらポツリポツリと話し出した。
「じ、実は…… 昨日なんですが…… ヘンなノートを拾いまして…… それがそのぅ……」
「あっしゃいませー!」
おばさんの声が別の所から聞こえた。コーイチは驚いて顔を上げた。目の前には誰もいなかった。おばさんは隣のレジに居た。店内にいた制服姿の女子高生三人組がくすくす笑いながら、コーイチの後ろを通り過ぎて行った。
だめだこりゃ…… コーイチはため息をつきながらコンビニエンス・ストアの出入り口に向かった。
「ありあとござっした! またどーぞ!」
おばさんの大きな声がコーイチを送り出した。
つづく
最後の一段の前で立ち止まった。
昨日ここで転びそうになったんだな。そしてカバンの中味をブチ巻いて、拾い集めたら、その中に例の“あれ”があったんだよな…… と言う事は、ここで拾ったのかな。いやいやいや、さすがのボクでも拾ったら気付いたはずだ…… と思うんだけど、たぶん、きっと…… 今一つ自分に自信を持てないコーイチであった。
コーイチは妙に慎重に最後の一段を降りた。こう降りれば何事もなかったんだろうな。コーイチは自分の部屋のある二階を見上げた。あれだけ激しくドアを閉めたんだから“あれ”は目を覚ましたかもしれないな。今頃ボクを探して開いたり閉じたりしているかもな。そうだ、何かのはずみで南部さんの所へでも行ってくれないかなぁ、あの人はついていない人だから可能性は大きいぞ…… コーイチは淡い期待を抱いて歩き出した。
素足に革靴はやはり良い気持ちではない。コーイチはやはり靴下を買うことにした。いつも利用しているコンビニエンス・ストアが見えた。昨日居た恰幅の良いおばさんが出入り口前で掃除をしていた。このおばさん、ちょっと苦手だなぁ、別の店で買おうか…… そう思い、前を素通りしようとした途端、おばさんはコーイチのほうを見て「あっしゃいませー!」と、少し発音の変わった大きな声を出し、さっと横へずれた。コーイチは仕方なく店に入った。
でも、どうしてボクが客だって分かるんだろう…… そんな顔をしてたのかな。コーイチはレジに立ったおばさんを見て思った。とりあえず、一番安い靴下を持ち、レジへ向かった。
「あっしゃいませー! 紳士用靴下が三百五十円でーし!」
コーイチは料金を払った。覚悟はしていたが、こんなに大きな声で言われると、やはり恥ずかしい。別の店にすれば良かったなぁ。
おばさんは不意に顔をコーイチに近づけ、声をひそめて続けた。
「すぐご利用になーますかー」
「えっ?」
おばさんはレジのカウンター越しに太い右手を伸ばし、人差し指でコーイチの靴を指した。コーイチもつられて靴を見た。
「裸足でーし!」
コーイチはギクッとし、身を強張らせた。コーイチは指摘された靴を見つめていた。
す・る・ど・い! 人は見かけによらないとは言ったものだ。ひょっとして超能力者かな…… そうだ、このおばさんなら信じてくれるかもしれない。
コーイチは下を向きながらポツリポツリと話し出した。
「じ、実は…… 昨日なんですが…… ヘンなノートを拾いまして…… それがそのぅ……」
「あっしゃいませー!」
おばさんの声が別の所から聞こえた。コーイチは驚いて顔を上げた。目の前には誰もいなかった。おばさんは隣のレジに居た。店内にいた制服姿の女子高生三人組がくすくす笑いながら、コーイチの後ろを通り過ぎて行った。
だめだこりゃ…… コーイチはため息をつきながらコンビニエンス・ストアの出入り口に向かった。
「ありあとござっした! またどーぞ!」
おばさんの大きな声がコーイチを送り出した。
つづく
『裸足でーし』がもう笑えます
これからもヨロシクでーし
いつも感謝しております。