振り下ろされた両手から放たれた白い光は、床で玉のようになって回転している。大王の命令を受ければすぐにでも飛び出していきそうな様子をしている。大王もその様子を楽しそうに見ている。
「さあ、創造の光よ! あの者を石像にするのだ!」大王は言うと、コーイチを見た。「そして、ここに永遠に飾ってくれよう!」
「なに時代がかった言い方をしているのよ!」逸子がすかさず文句を言った。「あっ、老人だもんね。時代がかっちゃうのも仕方ないか……」
「やかましい!」大王は逸子をにらみつける。「……お前はこの者の恋人だったな。わめいてもお前には助けられんのだよ」
「コーイチさん! 逃げて!」花子が叫ぶ。「早く外へ……」
出入口の扉が大きな音を立てて閉じた。大王は邪悪な笑みを花子に向けた。
「もう逃がすわけには行かないな」大王は含み笑いをする。「私の温情もここまでだよ」
「大王!」洋子が思いきり右手を突き出した。大王めがけてオレンジ色の闘気が放たれた。しかし、大王に届く前に霧散した。「……ああ……」
「ふん! お前たちのやることなど、お見通しなのだよ」大王は落胆する洋子を嘲笑った。「私に何かしようとしても無駄だ」
三人娘がぎゃいのぎゃいのと喚いているのを無視して、大王はコーイチに向き直った。
「……お待たせしましたな……」大王は慇懃に礼をしてみせる。「では改めて…… 創造の光よ! あの者を石像にせよ!」
大王はコーイチを指さした。回転していた光は、号令を受けた猟犬のごとくコーイチに突進した。
コーイチは覚悟を決めたのか、目を閉じた。
光はコーイチの足に当たると伸び上り、コーイチの全身を包んだ。一瞬強く輝くと、光は消えた。
「いやーっ!」
三人娘は口々に悲鳴を上げた。
光の消えた後には、石像となったコーイチが立っていた。
「ほっほっほ……」大王は嬉しそうに笑う。「さあ、皆さんの大切な人は石像になってしまいましたぞ。どうしますかな? 元に戻してほしければ、私の言う事を聞くことですな。……いや、言うことなど聞くわけがありませんな。ならば、三人とも石像になってもらって、一緒に飾って差し上げましょう」
「わたしにそんな事できると思っているの?」花子が怒鳴った。「わたしはこの世界の主なのよ!」
「今の私なら出来ますよ」大王は胸を張る。「なぜなら、今は私がこの世界の頂点に立っているからです。実際、こうしてあなたを捕まえているでしょう?」
「お馬鹿さんね! わたしは姿形を変えることができるのよ! 小さくなれば抜け出すことなんか、わけないじゃない!」
「ほう…… では、やってみてくださいな」
花子の全身が明るく輝き、光の球になった。それが徐々に小さくなる。しかし、ある程度小さくなると元に戻ってしまう。何度か繰り返した後、光が消え、疲れ切った花子が大の字になって寝転がっていた。はあはあと荒い呼吸をしている。
「花子さん!」洋子が心配して声をかける。「大丈夫ですか?」
「……くやしい…… ダメ、出来ないわ……」花子は吐き捨てるように言う。「勝ち目無し…… かな……」
「お馬鹿さんはどちらだったでしょうなぁ」大王は含み笑いをする。「再三申しましたように、皆さんの手の内はわかっているのですよ。それに対抗策を張っていないとお思いなのですか? 何をやっても無駄なのですよ。……さあ、三人とも、あきらめてもらいましょうか……」
三人娘は互いを見合った。その表情には絶望感にあふれている。
「仕方ないわね……」
「花子さん! そんなこと言わないで下さいよ!」
「でも、どうしようもないじゃない……」
「逸子さんまで……」
「洋子ちゃんの闘気も効かなかったでしょ……」
「そうですけど…… 逸子さんも試してください!」
「洋子ちゃんがダメならわたしも同じよ……」
「そんなぁ……」
「……でもね、コーイチさんと共に石像になって並ぶんなら、良いんじゃない?」
「花子ちゃん、それ良い考えね…… わたしが右側ね」
「じゃあ、わたしは左側って事で……」
「それなら、わたしはどこに並べば良いんですか!」
「コーイチさんの前じゃ、ダメ?」
大王は三人娘の悲しげなやり取りをにたにたしながら見ていた。
「……ん……んが……んがが……」
変な声がする。三人娘と大王は声のする方を見た。
声はコーイチの石像から発せられているようだ。
しばらくすると、石像が前後に揺れ始めた。石像が大きく前方に傾き、倒れた。倒れながら明るく輝いた。輝きが消えると同時に、どさりと何かが床に当たった音がした。
「いたたたた……」
鼻を押さえながら、よろよろとコーイチが起き上がった。
「コーイチさん! きゃーっ!」
三人娘は同時に歓声を上げた。
「え? ああ……」コーイチはよっこらしょと立ち上がった。「いやあ、石になっときはどうなるかと思ったよ……」
「え? でも、どうして戻ったんですか?」洋子が不思議そうに言い、花子に向き直った。「花子さんが、何かやったんですか?」
「いいえ……」花子も驚いている。「自分すら何ともできないのに、そんな事できるわけないわ」
「じゃあ、じゃあ……」逸子があわてたように言う。「コーイチさんが、自分の力で石造から元に戻ったって事?」
「やかましい!」大王が三人娘に向かって怒鳴った。「……ふん、ちょっと手を抜いて、業が浅かったのかもしれんな……」
大王は両手を上げた。手が光り始めた。先ほどより白い光が大きい。
「ほっほっほ」大王は鼻を押さえているコーイチを見ながら笑う。「今度は全力ですからね。……おっと、全力過ぎて石になったとたん、砕けてしまうかもしれませんなぁ……」
大王は勢い良く両手を振り下ろした。
「さあ、創造の光よ! あの者を石像にするのだ!」大王は言うと、コーイチを見た。「そして、ここに永遠に飾ってくれよう!」
「なに時代がかった言い方をしているのよ!」逸子がすかさず文句を言った。「あっ、老人だもんね。時代がかっちゃうのも仕方ないか……」
「やかましい!」大王は逸子をにらみつける。「……お前はこの者の恋人だったな。わめいてもお前には助けられんのだよ」
「コーイチさん! 逃げて!」花子が叫ぶ。「早く外へ……」
出入口の扉が大きな音を立てて閉じた。大王は邪悪な笑みを花子に向けた。
「もう逃がすわけには行かないな」大王は含み笑いをする。「私の温情もここまでだよ」
「大王!」洋子が思いきり右手を突き出した。大王めがけてオレンジ色の闘気が放たれた。しかし、大王に届く前に霧散した。「……ああ……」
「ふん! お前たちのやることなど、お見通しなのだよ」大王は落胆する洋子を嘲笑った。「私に何かしようとしても無駄だ」
三人娘がぎゃいのぎゃいのと喚いているのを無視して、大王はコーイチに向き直った。
「……お待たせしましたな……」大王は慇懃に礼をしてみせる。「では改めて…… 創造の光よ! あの者を石像にせよ!」
大王はコーイチを指さした。回転していた光は、号令を受けた猟犬のごとくコーイチに突進した。
コーイチは覚悟を決めたのか、目を閉じた。
光はコーイチの足に当たると伸び上り、コーイチの全身を包んだ。一瞬強く輝くと、光は消えた。
「いやーっ!」
三人娘は口々に悲鳴を上げた。
光の消えた後には、石像となったコーイチが立っていた。
「ほっほっほ……」大王は嬉しそうに笑う。「さあ、皆さんの大切な人は石像になってしまいましたぞ。どうしますかな? 元に戻してほしければ、私の言う事を聞くことですな。……いや、言うことなど聞くわけがありませんな。ならば、三人とも石像になってもらって、一緒に飾って差し上げましょう」
「わたしにそんな事できると思っているの?」花子が怒鳴った。「わたしはこの世界の主なのよ!」
「今の私なら出来ますよ」大王は胸を張る。「なぜなら、今は私がこの世界の頂点に立っているからです。実際、こうしてあなたを捕まえているでしょう?」
「お馬鹿さんね! わたしは姿形を変えることができるのよ! 小さくなれば抜け出すことなんか、わけないじゃない!」
「ほう…… では、やってみてくださいな」
花子の全身が明るく輝き、光の球になった。それが徐々に小さくなる。しかし、ある程度小さくなると元に戻ってしまう。何度か繰り返した後、光が消え、疲れ切った花子が大の字になって寝転がっていた。はあはあと荒い呼吸をしている。
「花子さん!」洋子が心配して声をかける。「大丈夫ですか?」
「……くやしい…… ダメ、出来ないわ……」花子は吐き捨てるように言う。「勝ち目無し…… かな……」
「お馬鹿さんはどちらだったでしょうなぁ」大王は含み笑いをする。「再三申しましたように、皆さんの手の内はわかっているのですよ。それに対抗策を張っていないとお思いなのですか? 何をやっても無駄なのですよ。……さあ、三人とも、あきらめてもらいましょうか……」
三人娘は互いを見合った。その表情には絶望感にあふれている。
「仕方ないわね……」
「花子さん! そんなこと言わないで下さいよ!」
「でも、どうしようもないじゃない……」
「逸子さんまで……」
「洋子ちゃんの闘気も効かなかったでしょ……」
「そうですけど…… 逸子さんも試してください!」
「洋子ちゃんがダメならわたしも同じよ……」
「そんなぁ……」
「……でもね、コーイチさんと共に石像になって並ぶんなら、良いんじゃない?」
「花子ちゃん、それ良い考えね…… わたしが右側ね」
「じゃあ、わたしは左側って事で……」
「それなら、わたしはどこに並べば良いんですか!」
「コーイチさんの前じゃ、ダメ?」
大王は三人娘の悲しげなやり取りをにたにたしながら見ていた。
「……ん……んが……んがが……」
変な声がする。三人娘と大王は声のする方を見た。
声はコーイチの石像から発せられているようだ。
しばらくすると、石像が前後に揺れ始めた。石像が大きく前方に傾き、倒れた。倒れながら明るく輝いた。輝きが消えると同時に、どさりと何かが床に当たった音がした。
「いたたたた……」
鼻を押さえながら、よろよろとコーイチが起き上がった。
「コーイチさん! きゃーっ!」
三人娘は同時に歓声を上げた。
「え? ああ……」コーイチはよっこらしょと立ち上がった。「いやあ、石になっときはどうなるかと思ったよ……」
「え? でも、どうして戻ったんですか?」洋子が不思議そうに言い、花子に向き直った。「花子さんが、何かやったんですか?」
「いいえ……」花子も驚いている。「自分すら何ともできないのに、そんな事できるわけないわ」
「じゃあ、じゃあ……」逸子があわてたように言う。「コーイチさんが、自分の力で石造から元に戻ったって事?」
「やかましい!」大王が三人娘に向かって怒鳴った。「……ふん、ちょっと手を抜いて、業が浅かったのかもしれんな……」
大王は両手を上げた。手が光り始めた。先ほどより白い光が大きい。
「ほっほっほ」大王は鼻を押さえているコーイチを見ながら笑う。「今度は全力ですからね。……おっと、全力過ぎて石になったとたん、砕けてしまうかもしれませんなぁ……」
大王は勢い良く両手を振り下ろした。
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