「あはは! あんたたちが束になっても怖くないわ!」
さゆりはみつ、冨美代、虎之助、豆蔵、楓を順に見ながら笑う。
「それに、ばあさんたちを加えても同じよ」
さゆりは珠子、静、富も順に見る。
「ただ……」さゆりはさとみに視線を向けた。小馬鹿にしたような視線が邪悪なものに変わった。「あんただけはどうも苦手だわ。何だろう? 何か他の連中と違っているのよねぇ……」
「それって、わたしが生身だからじゃないの?」
さとみも負けじと、さゆりを睨み返す。
「う~ん…… それだけじゃ無さそうだけどなぁ……」さゆりは言うと、右の手の平をさとみに向けた。衝撃波を打ち出す時の姿勢だ。「……まあ、試してみるか」
離れた所に居た片岡でさえ、あれだけの被害をこうむったのだ。目の前にいるさとみに衝撃波が打ち込まれたら、さとみはどうなってしまうのか。
「馬鹿な事するのはやめなさいよう!」さとみはさゆりに言う。「当たったら危ないじゃない!」
「でもさ、あんたなら、当たらないんじゃないかって思うのよねぇ」さゆりは楽しそうに笑む。「もし、当たらないとか、逸れちゃったとかしたら、完全にわたしの負け。素直にあの世へ逝くわ」
「そんな事信じられるわけないじゃない!」
「あのじいさんは最初から嫌いだったけどさ……」さゆりは倒れている片岡を見る。「わたしはあんたが好きなんだよね。だからさ、賭けてみようってわけ。勝負は、わたしの方が歩が悪いと思うけど? どう?」
さとみは黙り込んだ。おでこをぺちぺちとし始めた。楓が大きな声で何か言っている。しかし、さとみには聞こえない。
「さとみちゃん!」百合恵が声を張る。さとみは百合恵に振り返った。「楓が、『さゆりは嘘つきだ。絶対信じちゃダメだ。あの笑顔で他のヤツらを騙すんだ』って言っているわ!」
「えっ!」さとみは楓を見る。楓はうなずいている。さとみはぷっと頬を膨らませてさゆりに振り返る。「ほら、やっぱりあなたって嘘つきじゃない!」
「あ~あ、ばれちゃったわ……」さゆりは相変わらず楽しそうだ。笑顔のままで楓を見る。「楓って、おしゃべりねぇ…… 企てがばれちゃったじゃないのよう」
さゆりは言い終わると、素早く右の手の平をさとみに向け、衝撃波を放った。さとみは避ける事が出来なかった。さとみは近距離でさゆりの衝撃波をまともに受けてしまった。さとみは後ろに弾き飛ばされた。さとみは悲鳴も上げずに、屋上の床に大の字になった。
「あははは!ちょっと、打ち出すのが強かったかなぁ?」
さとみは動かない。百合恵がさとみに駈け寄ろうとした。
「待って……」
さとみの声だ。
さとみは上半身をむくりと起き上らせた。皆、驚いた顔をしている。
「え?」さゆりが一番驚いている。「どうして……?」
「さあ、分からないけど……」さとみは立ち上がる。「吹っ飛ばされてびっくりしたけど、何ともないわね」
「さとみちゃん、大丈夫なの?」
「はい、大丈夫ですね」さとみは声をかけてきた百合恵に笑顔で答える。「どこも痛くないんです。不思議です……」
「ははは、手加減しちゃったのかもねぇ」さゆりが笑う。「ほら、わたし、さとみの事気に入っちゃったからさ、知らず知らずに手を抜いたのかも」
「そうなの?」さとみはさゆりを見て、小首を傾げる。「全力じゃなかったんだ……」
「当り前じゃない!」
「じゃあさ……」さとみはさゆりに正面を向ける。「今度は全力で打ってみなさいよ」
「ちょっと、さとみちゃん!」
百合恵が慌てる。みつたちも同様だ。皆、頭を左右に振っている。
「ふん! そんな事言ってさ、後で痛い痛いって泣くんだよ!」さゆりが怒ったように言う。「良いのかい?」
「わたしが平気だったら、あの世へ逝ってもらうわよ」
「ああ、分かったわよ」さゆりは笑む。邪悪な雰囲気がこもっているが美しい。「これで最後だからねぇ……」
「そうね、さゆり、あなたにとってのね」
突然、さゆりの表情が変わった。邪悪さがはっきりと出た怒りの表情になった。
「ふざけてんじゃねぇよ!」
さゆりは叫ぶと、両手の平をさとみに向け、両方から衝撃波を放った。怒りの頂点での放射は、ユリアを消し飛ばしたのと同じ青白い光となってさとみを包み込み、さとみの姿は見えなくなった。強烈な光に皆の目がくらむ。皆、その場から動けなかった。
「あははははは! 生身だって、これには耐えられないんじゃない? 耐えたってさ、もう死んだも同じになっちゃうわ!」
さゆりの哄笑が響く。
つづく
さゆりはみつ、冨美代、虎之助、豆蔵、楓を順に見ながら笑う。
「それに、ばあさんたちを加えても同じよ」
さゆりは珠子、静、富も順に見る。
「ただ……」さゆりはさとみに視線を向けた。小馬鹿にしたような視線が邪悪なものに変わった。「あんただけはどうも苦手だわ。何だろう? 何か他の連中と違っているのよねぇ……」
「それって、わたしが生身だからじゃないの?」
さとみも負けじと、さゆりを睨み返す。
「う~ん…… それだけじゃ無さそうだけどなぁ……」さゆりは言うと、右の手の平をさとみに向けた。衝撃波を打ち出す時の姿勢だ。「……まあ、試してみるか」
離れた所に居た片岡でさえ、あれだけの被害をこうむったのだ。目の前にいるさとみに衝撃波が打ち込まれたら、さとみはどうなってしまうのか。
「馬鹿な事するのはやめなさいよう!」さとみはさゆりに言う。「当たったら危ないじゃない!」
「でもさ、あんたなら、当たらないんじゃないかって思うのよねぇ」さゆりは楽しそうに笑む。「もし、当たらないとか、逸れちゃったとかしたら、完全にわたしの負け。素直にあの世へ逝くわ」
「そんな事信じられるわけないじゃない!」
「あのじいさんは最初から嫌いだったけどさ……」さゆりは倒れている片岡を見る。「わたしはあんたが好きなんだよね。だからさ、賭けてみようってわけ。勝負は、わたしの方が歩が悪いと思うけど? どう?」
さとみは黙り込んだ。おでこをぺちぺちとし始めた。楓が大きな声で何か言っている。しかし、さとみには聞こえない。
「さとみちゃん!」百合恵が声を張る。さとみは百合恵に振り返った。「楓が、『さゆりは嘘つきだ。絶対信じちゃダメだ。あの笑顔で他のヤツらを騙すんだ』って言っているわ!」
「えっ!」さとみは楓を見る。楓はうなずいている。さとみはぷっと頬を膨らませてさゆりに振り返る。「ほら、やっぱりあなたって嘘つきじゃない!」
「あ~あ、ばれちゃったわ……」さゆりは相変わらず楽しそうだ。笑顔のままで楓を見る。「楓って、おしゃべりねぇ…… 企てがばれちゃったじゃないのよう」
さゆりは言い終わると、素早く右の手の平をさとみに向け、衝撃波を放った。さとみは避ける事が出来なかった。さとみは近距離でさゆりの衝撃波をまともに受けてしまった。さとみは後ろに弾き飛ばされた。さとみは悲鳴も上げずに、屋上の床に大の字になった。
「あははは!ちょっと、打ち出すのが強かったかなぁ?」
さとみは動かない。百合恵がさとみに駈け寄ろうとした。
「待って……」
さとみの声だ。
さとみは上半身をむくりと起き上らせた。皆、驚いた顔をしている。
「え?」さゆりが一番驚いている。「どうして……?」
「さあ、分からないけど……」さとみは立ち上がる。「吹っ飛ばされてびっくりしたけど、何ともないわね」
「さとみちゃん、大丈夫なの?」
「はい、大丈夫ですね」さとみは声をかけてきた百合恵に笑顔で答える。「どこも痛くないんです。不思議です……」
「ははは、手加減しちゃったのかもねぇ」さゆりが笑う。「ほら、わたし、さとみの事気に入っちゃったからさ、知らず知らずに手を抜いたのかも」
「そうなの?」さとみはさゆりを見て、小首を傾げる。「全力じゃなかったんだ……」
「当り前じゃない!」
「じゃあさ……」さとみはさゆりに正面を向ける。「今度は全力で打ってみなさいよ」
「ちょっと、さとみちゃん!」
百合恵が慌てる。みつたちも同様だ。皆、頭を左右に振っている。
「ふん! そんな事言ってさ、後で痛い痛いって泣くんだよ!」さゆりが怒ったように言う。「良いのかい?」
「わたしが平気だったら、あの世へ逝ってもらうわよ」
「ああ、分かったわよ」さゆりは笑む。邪悪な雰囲気がこもっているが美しい。「これで最後だからねぇ……」
「そうね、さゆり、あなたにとってのね」
突然、さゆりの表情が変わった。邪悪さがはっきりと出た怒りの表情になった。
「ふざけてんじゃねぇよ!」
さゆりは叫ぶと、両手の平をさとみに向け、両方から衝撃波を放った。怒りの頂点での放射は、ユリアを消し飛ばしたのと同じ青白い光となってさとみを包み込み、さとみの姿は見えなくなった。強烈な光に皆の目がくらむ。皆、その場から動けなかった。
「あははははは! 生身だって、これには耐えられないんじゃない? 耐えたってさ、もう死んだも同じになっちゃうわ!」
さゆりの哄笑が響く。
つづく
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