「さあ、着きました」ナナが言った。「降りて下さい」
ナナは先に出て行った。逸子は隣のケーイチを見た。ケーイチは青い顔でぐったりとしている。……お兄様はもう少し落ち着いてからの方がよさそうね。そっとしておきましょう。逸子はそう判断し、一人で光の外へ出た。
「うわ~っ!」
逸子は思わず声を出してしまった。
デパートなどの地下にある大きな駐車場のような場所に出たからだった。と言っても車が停まっているわけではない。明るい照明ががらんとした様子を見せていた。逸子の声がうわんうわんと響いていた。
「あ、逸子さん」ナナが笑みを浮かべている。「驚いたでしょう?」
「ええ、驚いたわ。……ここって何?」
「ここはタイムマシンのポートなんです。わたしたちタイムパトロールが任務を受けると、ここから出発してここへ帰還するんです。一人一人にポートがるので、混乱はしません」
「なるほどね。じゃあ、ここはナナさんのポートってわけね?」
「そうです」
「と言う事は、……本当に未来に、ナナさんの時代に来たってわけね」
「そうです。そして、これから本格的な戦いが始まります」ナナは真顔になって逸子を見た。「タイムパトロール内の掃除をしなければなりません」
「そうね。あのアツコって娘の支持者ってのを見つけ出さなきゃね」逸子の全身からうっすらと赤いオーラが立ち昇った。「そして、コーイチさんを取り戻すのよ」
「ふぇ~っ……」妙な声を上げながら。ケーイチがよたよたと出て来た。「やっと気分が落ち着いたよ……」
まだ青い顔をしているケーイチは、そのまま床に座り込んでしまった。そうしながらきょろきょろと周りを見回している。
「お兄様、大丈夫ですか?」逸子は心配そうな表情でケーイチの右隣にしゃがみ込んだ。「ここは、ナナさんの時代です」
「そうなんだ……」ケーイチはうなずく。「それで、どうしてここへ来たんだい?」
「そうか、お兄様には話していませんでしたね」逸子が言う。「お兄様の作戦が失敗したんです。敵は事前にわたしたちの動きを知っていたんです。そして、その情報を流したのが、タイムパトロール本部の誰からしいんです。それを暴くために来たんです」
「なるほど…… 逸子さんは強いから頼りになるだろうけど、どうしてオレも?」
「コーイチさんじゃなくて本当はお兄様だって事が敵に知れたら危険じゃないですか! 安全のためにも一緒に居た方が良いんです」逸子が諭すように言う。「それに、お兄様は何と言ってもタイムマシンの生みの親でしょう? きっと役に立ってくれますわ」
「なるほどねえ……」ケーイチは言う。「でもねえ、すでにタイムマシンは日常化している時代だろう? もっと研究が進んでいてオレなんか出る幕はないんじゃないかなあ?」
「そんな事ありません」ナナがケーイチの左隣にしゃがみ込む。「曽祖父の頃から研究はそれほど進んでいないんです。ケーイチさんが修正が必要だとおっしゃった数字が正されたくらいでしょうね」
「日常化しちゃって、それ以上あれこれとしなくなっちゃったのね」逸子はため息をつきた。「わたしたちの時代でもありそうな話だわ。本質は変わらないようね……」
「おや、ナナじゃないか?」
声がかけられた。声をかけて来たのは、すらっと背の高い、なかなかの好青年だった。ナナと同じような白いコンバットスーツを着ている。
「あっ、タケル……」ナナが立ち上がった。「これから、出動?」
「いや、戻って来たところさ」タケルは爽やかに笑む。「……で、この二人は?」
「例の『ブラックタイマー』の連中を捕えるのに協力をお願いした人たちよ。ほら、あの有名な『コーイチ氏連れ去り事件』……」
「え? じゃあ、この人たちって、過去の人たちかい?」
「ええ、そうよ」
「マズくないか? 規律違反になるかもしれないぞ……」
「大丈夫よ。わたしの素性は知られているでしょう?」
「ああ、トキタニ博士の曾孫だ…… でも、どうだろう、あの長官だからなぁ……」
「まあ、当たって砕けろだわ」
「幸運を祈るよ」
タケルは心配そうな顔をしながら行ってしまった。
つづく
ナナは先に出て行った。逸子は隣のケーイチを見た。ケーイチは青い顔でぐったりとしている。……お兄様はもう少し落ち着いてからの方がよさそうね。そっとしておきましょう。逸子はそう判断し、一人で光の外へ出た。
「うわ~っ!」
逸子は思わず声を出してしまった。
デパートなどの地下にある大きな駐車場のような場所に出たからだった。と言っても車が停まっているわけではない。明るい照明ががらんとした様子を見せていた。逸子の声がうわんうわんと響いていた。
「あ、逸子さん」ナナが笑みを浮かべている。「驚いたでしょう?」
「ええ、驚いたわ。……ここって何?」
「ここはタイムマシンのポートなんです。わたしたちタイムパトロールが任務を受けると、ここから出発してここへ帰還するんです。一人一人にポートがるので、混乱はしません」
「なるほどね。じゃあ、ここはナナさんのポートってわけね?」
「そうです」
「と言う事は、……本当に未来に、ナナさんの時代に来たってわけね」
「そうです。そして、これから本格的な戦いが始まります」ナナは真顔になって逸子を見た。「タイムパトロール内の掃除をしなければなりません」
「そうね。あのアツコって娘の支持者ってのを見つけ出さなきゃね」逸子の全身からうっすらと赤いオーラが立ち昇った。「そして、コーイチさんを取り戻すのよ」
「ふぇ~っ……」妙な声を上げながら。ケーイチがよたよたと出て来た。「やっと気分が落ち着いたよ……」
まだ青い顔をしているケーイチは、そのまま床に座り込んでしまった。そうしながらきょろきょろと周りを見回している。
「お兄様、大丈夫ですか?」逸子は心配そうな表情でケーイチの右隣にしゃがみ込んだ。「ここは、ナナさんの時代です」
「そうなんだ……」ケーイチはうなずく。「それで、どうしてここへ来たんだい?」
「そうか、お兄様には話していませんでしたね」逸子が言う。「お兄様の作戦が失敗したんです。敵は事前にわたしたちの動きを知っていたんです。そして、その情報を流したのが、タイムパトロール本部の誰からしいんです。それを暴くために来たんです」
「なるほど…… 逸子さんは強いから頼りになるだろうけど、どうしてオレも?」
「コーイチさんじゃなくて本当はお兄様だって事が敵に知れたら危険じゃないですか! 安全のためにも一緒に居た方が良いんです」逸子が諭すように言う。「それに、お兄様は何と言ってもタイムマシンの生みの親でしょう? きっと役に立ってくれますわ」
「なるほどねえ……」ケーイチは言う。「でもねえ、すでにタイムマシンは日常化している時代だろう? もっと研究が進んでいてオレなんか出る幕はないんじゃないかなあ?」
「そんな事ありません」ナナがケーイチの左隣にしゃがみ込む。「曽祖父の頃から研究はそれほど進んでいないんです。ケーイチさんが修正が必要だとおっしゃった数字が正されたくらいでしょうね」
「日常化しちゃって、それ以上あれこれとしなくなっちゃったのね」逸子はため息をつきた。「わたしたちの時代でもありそうな話だわ。本質は変わらないようね……」
「おや、ナナじゃないか?」
声がかけられた。声をかけて来たのは、すらっと背の高い、なかなかの好青年だった。ナナと同じような白いコンバットスーツを着ている。
「あっ、タケル……」ナナが立ち上がった。「これから、出動?」
「いや、戻って来たところさ」タケルは爽やかに笑む。「……で、この二人は?」
「例の『ブラックタイマー』の連中を捕えるのに協力をお願いした人たちよ。ほら、あの有名な『コーイチ氏連れ去り事件』……」
「え? じゃあ、この人たちって、過去の人たちかい?」
「ええ、そうよ」
「マズくないか? 規律違反になるかもしれないぞ……」
「大丈夫よ。わたしの素性は知られているでしょう?」
「ああ、トキタニ博士の曾孫だ…… でも、どうだろう、あの長官だからなぁ……」
「まあ、当たって砕けろだわ」
「幸運を祈るよ」
タケルは心配そうな顔をしながら行ってしまった。
つづく
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