ああ、やってしまった…… 部長としての影も薄いし意識も薄い。これも薄~く書きすぎたせいなんだろうか……
コーイチは慌てふためいている吉田部長を見ながら思った。
「あ、あの、……社、社長! いや、今日はジャンボリさん! 知らぬ事とは言え…… なんとも、その……」
吉田部長は社長のそばによろよろと駆け寄り、スーツのポケットからおたおたとハンカチを取り出し、止まらぬ汗をせかせかと拭いながら、しどろもどろで話し始めた。
「Don’t Be Afraid! 気にしない気にしない」
社長は右人差し指をピンと立て、左右に振りながら言った。
「Youの昇進はボクだけじゃなくて、役員全員がビビッと来て決まったんだよ。だから気にしない気にしない」
「はぁ…… ビビッと、ですか……」
吉田部長の顔に安堵の色が浮かんだ。ハンカチをしまい、また少しふんぞり気味になる。
「では今後は部長としてお勤めできるわけで?」
「そう言うことだね」
「そうですかあ!」
吉田部長はことさら大きな声で良い、周りの連中を見回した。どうだ、これで名実ともに部長様だぞ! しかも、社長と役員のお墨付きだぞ! コーイチはそんな心の声を聞いたような気がした。もっとも、コーイチでなくても聞こえただろうが。
「社長、いや、今日はジャンボリさん。この吉田吉吉、今まで以上に粉骨砕身、会社の発展のために努めさせていただきます!」
「はいはい、頼んだよ、吉田第二営業部長!」
社長のこの言葉に吉田部長は片方の眉をぴくんと動かした。少し上ずった声を出す。
「第二って…… 営業部を遠藤部長の班とわたくしの班とに分けると言うことで? そして互いを切磋琢磨させようと言うわけで?」
コーイチのスーツの袖が軽く引っ張っぱられた。コーイチが振り向くと、林谷が必死に笑いをこらえ、肩を揺らしていた。
「いやいや、あの優秀なエンドッチ率いる営業部は分けないよ」
コーイチの背中が軽くつつかれた。コーイチが振り向くと、清水がいつもの笑顔を作っていた。しかし、今日は目が少しだけ笑っているようだ。
「では、第二営業部長とは、遠藤部長の補佐とか協力とか……」
コーイチの肩が軽く叩かれた。コーイチが振り向くと、印旛沼がにやにや笑いながら、ぱっと指先からハートのエースのカードを出した。
「いやいや、もうすでにその辺のメンバーは揃っているはずだよ」
「では、では、わたくしは何をすればよろしいんで?」
少し離れた所に立っている北口と西川が、にらめっこをしているかのように顔を見合わせている。岡島は天井から吉田部長に視点を移した。
「うーん…… それはさっきも話してたんだけどねぇ……」社長はボーイスカウトの帽子を取り、豊かな白髪の後頭部をぽりぽりと掻き、それから、腰に手を当て、かっかっかっ! と哄笑した。「まぁ、吉田君、Youが自分で考えちゃってよ!」
「は、はぁ……」
吉田部長は何とも情けない顔で答えた。
と同時に、守衛と岡島を除いた全員が、こらえ切れずに大爆笑をした。
つづく
コーイチは慌てふためいている吉田部長を見ながら思った。
「あ、あの、……社、社長! いや、今日はジャンボリさん! 知らぬ事とは言え…… なんとも、その……」
吉田部長は社長のそばによろよろと駆け寄り、スーツのポケットからおたおたとハンカチを取り出し、止まらぬ汗をせかせかと拭いながら、しどろもどろで話し始めた。
「Don’t Be Afraid! 気にしない気にしない」
社長は右人差し指をピンと立て、左右に振りながら言った。
「Youの昇進はボクだけじゃなくて、役員全員がビビッと来て決まったんだよ。だから気にしない気にしない」
「はぁ…… ビビッと、ですか……」
吉田部長の顔に安堵の色が浮かんだ。ハンカチをしまい、また少しふんぞり気味になる。
「では今後は部長としてお勤めできるわけで?」
「そう言うことだね」
「そうですかあ!」
吉田部長はことさら大きな声で良い、周りの連中を見回した。どうだ、これで名実ともに部長様だぞ! しかも、社長と役員のお墨付きだぞ! コーイチはそんな心の声を聞いたような気がした。もっとも、コーイチでなくても聞こえただろうが。
「社長、いや、今日はジャンボリさん。この吉田吉吉、今まで以上に粉骨砕身、会社の発展のために努めさせていただきます!」
「はいはい、頼んだよ、吉田第二営業部長!」
社長のこの言葉に吉田部長は片方の眉をぴくんと動かした。少し上ずった声を出す。
「第二って…… 営業部を遠藤部長の班とわたくしの班とに分けると言うことで? そして互いを切磋琢磨させようと言うわけで?」
コーイチのスーツの袖が軽く引っ張っぱられた。コーイチが振り向くと、林谷が必死に笑いをこらえ、肩を揺らしていた。
「いやいや、あの優秀なエンドッチ率いる営業部は分けないよ」
コーイチの背中が軽くつつかれた。コーイチが振り向くと、清水がいつもの笑顔を作っていた。しかし、今日は目が少しだけ笑っているようだ。
「では、第二営業部長とは、遠藤部長の補佐とか協力とか……」
コーイチの肩が軽く叩かれた。コーイチが振り向くと、印旛沼がにやにや笑いながら、ぱっと指先からハートのエースのカードを出した。
「いやいや、もうすでにその辺のメンバーは揃っているはずだよ」
「では、では、わたくしは何をすればよろしいんで?」
少し離れた所に立っている北口と西川が、にらめっこをしているかのように顔を見合わせている。岡島は天井から吉田部長に視点を移した。
「うーん…… それはさっきも話してたんだけどねぇ……」社長はボーイスカウトの帽子を取り、豊かな白髪の後頭部をぽりぽりと掻き、それから、腰に手を当て、かっかっかっ! と哄笑した。「まぁ、吉田君、Youが自分で考えちゃってよ!」
「は、はぁ……」
吉田部長は何とも情けない顔で答えた。
と同時に、守衛と岡島を除いた全員が、こらえ切れずに大爆笑をした。
つづく
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