【ネタバレ】
◎「MOTHER マザー」
「こんな母親でも 僕にとって世界(すべて)」
「すべてを狂わせる≪この女≫ 聖母(マリア)か。怪物(モンスター)か。」
「母と息子。ひとつの殺人事件。実話をベースに描く感動の衝撃作。」
2020年7月3日(金)公開、大森立嗣監督、河村光庸エグゼクティブプロデューサー、佐藤順子プロデューサー、大森立嗣&港岳彦脚本、126分。
総合評価は上中下で、上の下。嫌悪感で気分が少し悪くなりましたが、見ごたえはありました。程度の差は大きいですがこういう人はいますし、こういう人に対して自分が上から目線になっていないとは言い切れないこともあって。
出演:長澤まさみ(三隅秋子役)、奥平大兼(息子の三隅周平(少年期))、郡司翔(息子の三隅周平(幼少期))、浅田芭路(娘の三隅冬華)、阿部サダヲ(秋子の内縁の夫の川田遼)、夏帆(児童相談所職員の高橋亜矢)、皆川猿時(秋子を好きな市役所職員の宇治田守)、仲野太賀(逃げてきた秋子が身を寄せたラブホテル従業員の赤川圭一)、土村芳(妹の三隅楓)、木野花(母の三隅秋子)など。
○ 秋子と遼がクズ人間なわけですが、言動がそうなっている事情には踏み込まないのは、想像してくれということなのでしょう。もちろん、制作者が想像できなかったから描かなかったということではないという前提です。
しかし、どうしてそういう言動をするのか、どうしてそういう言動をするようになったのか、というのは(多くの人には)想像し難いくらいのクズなので、そこは踏み込むべきだったのではと思います。
何かのエピソードを削れば、上映時間も延びることはないでしょう。
ただ、結局は想像になってしまうことから、フィクション性が強まってしまうので、それを避けたかったのかもしれません。
こういうような事実があったということを第一に描きたかったのでしょうかね。それが第一の目的ならこういう描き方もありです(パンフレットで監督は「この映画を観る人には、映画に答えを求めるのではなく、映画と向き合ってもらえたらと思います。」と言っているので、敢えてこうしたものと思います。)
そういう意味で、なかなか評価が難しい映画です。
また、衝撃作ですし、見ることをお勧めしますが、感動はしませんでした。
あと、少なくとも深夜アニメでは共依存は一般教養になっていることなのですが、共依存がどんな感じのものか分からないと本作は分からないと思いますが、共依存が分からない人はより衝撃をうけるでしょう。
○ 2人目の子供を妊娠した時に、俺の子だという証拠はないだろ、おろせ、と遼に言われてもおろさなかった秋子。息子の周平のことも娘の冬華のことも、自分のもの、という意味のことを言ったり扱ったりしているのは、自分が自分の思い通りにならなかったからかも知れません。
「あれはあたしが産んだ子なの。あたしの分身。舐めるようにしてずっと育ててきたの」なんてセリフもありました。
・秋子の妹の楓は優秀で、いつも両親に可愛がられて、大学にも行かせてもらえたのに、自分は両親に可愛がってもらえなかった、大学にも行かせてもらえなかった旨を秋子が言うシーンがあります。
それに対して楓は、お姉ちゃんは勉強をしなかっただけだと言いますが、その通りなのでしょう。
何もかも自業自得なのですが、何もかも他人のせいにする秋子。
努力もしなければ結果も出していない秋子なわけですが、秋子はそれを棚に上げて、働かずに、お金を借りると称して返さないし、周平には働かせたり泥棒をさせ、そのお金を遊行費に使ったり。自業自得なのに他人のせいにしているというわけです。
美人で状況に応じて人当りを良くするので、多くの男性がくどかれてしまい、お金をあげてしまい、そんなことも更生しようという意欲が出なかった一因でしょう。それも、秋子の自業自得です。
・祖父母(秋子の両親)を殺してお金を取ってこいと命令し、周平が実行し、逮捕されても母の指示はなかったと周平は言い、一方、秋子は、指示していないし証拠はないだろうと言うような人間ですから、秋子には同情の余地もないくらいに自業自得としか思いませんが、周平には同情もします。
同情したところで何にもなりませんが。
○ 小学校も出ていないから難しい言葉を使わないでくれという意味の事を周平が弁護士に言いますが、それでも専門用語が出てしまう弁護士というシーン。
専門用語は理解している人には便利で分かりやすいですが、そうでない人には意味が分かりにくいですし、専門用語を説明することや知らない人に理解させることが難しいということも表しています。
周平と秋子は共依存だと弁護士に言われても、周平は共依存が何かが分からなかったでしょう。
観客からすれば、2人は共依存だと早い段階で分かるのですが(それが分からない人が見ても、本作はチンプンカンプンだと思います。)、周平がもっと若いうちに意味が分かったとしてもどうすることもできなかったでしょうね。
○ 2020年7月3日、10日の新聞広告。
【shin】