【ネタバレ】
◎「そばかす」
「今までを全部抱きしめて。進め、自分。」
2022年12月16日(金)公開、監督は玉田真也、脚本と原作はアサダアツシ、104分。
(not) HEROINE movies(ノット ヒロイン ムービーズ)の3作目。
総合評価は、上中下で中くらい。
三浦透子(30歳の蘇畑佳純(そばたかすみ)の役)、前田敦子(佳純の同級生で元AV女優で父が静岡県議に立候補している世永真帆)、伊藤万理華(佳純の妹の篠原睦美)、伊島空(母が連れてきたお見合い相手で友達付き合いをすることになる小暮翔(佳純の行きつけのラーメン屋の店員でもあった。))、前原滉(佳純の同級生でゲイの八代剛志)、北村匠海(佳純の転職先の保育士の天藤光)、田島令子(佳純の祖母の蘇畑宮子)、坂井真紀(佳純の母の蘇畑菜摘)、三宅弘城(鬱病で休職中、佳純の父の蘇畑純一)など。
○佳純の日常が描かれているところ(舞台は静岡県。)、つまり、男性を交えた飲み会や男友達と遊びに行ったり、男友達と思っていたら付き合ってと告白されて断ったり、といった日常が少し退屈かも。
佳純が置かれた状況を説明するために必要な事ですが、多めに描かれている感がするのは、同性愛以上にあまり知られていないと思われる、恋愛感情がないという「アロマンティック」、性的なことに関心がないという「アセクシュアル(無性愛)」を説明するためでもあるのでしょう(「ない」だけでなく「少ない」も含める場合もあるようです。)。
それらについてほとんど知らない人が見れば理解の助けとなるので、丁寧な描き方という判断になるのかも知れません。
○佳純は恋愛感情等がないから男女問わず気さくに飲み会とかに誘われやすいのか、女性として魅力的(男性から見た場合の。)という設定なのか、単に付き合いがいいのか。飲み会では会話に入ることに消極的ですし、好きな異性のタイプはといった話になって素っ気ない回答や場に合わせた回答をしたり、モノローグではそういうのが嫌だと言ったりしているので(だったら男性との飲み会を断れよ、とも思います。)、佳純と飲むと楽しいから誘われるというわけではないでしょう。
それにしても、男性との友達付き合いがほぼないというわけではなくそれなりに多そうなのに、かつ30歳なのに、異性愛の男性の恋愛感情に疎すぎるといったことや諸々で、佳純は自分を見つめることが不足しています。
アロマンティックやアセクシュアルをバリバリに主張するのは(本作はそうではない。)、まだあまり知られていないことですから却って日本では受け入れてもらいにくくなりますからどうかと思います。しかし、佳純がちょっと幼稚なので、アロマンティックやアセクシュアルは異性愛同様に先天的であって後天的ではないということが十分に伝わらない気がします。
○夕食時、妹の睦美から、レズビアンだから結婚に消極的だと分かったと言われて、恋愛感情等がない旨を言い返す佳純。
翌朝、妹夫婦は帰っていましたが、家族でご飯を食べながら、父が仕事を辞めて好きな事をする旨を言ったことで笑い合うところ(母は苦笑に近い。)。祖母と父はこれまでの佳純に納得がいったということでしょうし、それでいいということでしょう。
そこがあっさりとしていて、やけに理解のある家族だなと思いました。ここで一悶着あったら少なくともあと30分は必要でしょうし、アロマンティックやアセクシュアルについて前向きに捉えた映画なのでそうなったのでしょう。
それらのことはここ数年で知りました。私は異性愛者ですが、同性愛者のことよりアロマンティックやアセクシュアルの方が理解しにくいなと思いましたし、逆もそうだという一般論が成り立ちそうな気はしますが、そこまでは不明です(異性愛者と同性愛者は愛する対象が「異なる」だけで、本質的にはさほど差はありません。)。
なお、佳純にとっては異性愛者の男性のことは理解しにくいようです(尤も、理解する気もなさそうです。)。そのため、男性と気さくに友達づきあいをして誤解を与えてしまう面もあるのでしょう。それでも、いい歳なのだからもう少し自分を見つめろよ、とは思います。
○公式HPから。
『「恋愛をしたことがない、そういう感情もない。だけど楽しく生きていける―」それが私だと思っていた。
私・蘇畑佳純(そばた・かすみ)、30歳。
チェリストになる夢を諦めて実家にもどってはや数年。
コールセンターで働きながら単調な毎日を過ごしている。
妹は結婚して妊娠中。救急救命士の父は鬱気味で休職中。
バツ3の祖母は思ったことをなんでも口にして妹と口喧嘩が絶えない。
そして母は、私に恋人がいないことを嘆き、勝手にお見合いをセッティングする。
私は恋愛したいと言う気持ちが湧かない。
だからって寂しくないし、ひとりでも十分幸せだ。
でも、周りはそれを信じてくれない。
恋する気持ちは知らないけど、ひとりぼっちじゃない。
大変なこともあるけれど、きっと、ずっと、大丈夫。
進め、自分。』
○新宿武蔵野館にて。
【shin】