2024/05/05 sun
2017年7月末で閉店した洋食屋のグリルTOGO
俺はここの味噌焼きチキンが本当に大好きでね
18歳の頃から通っていたから、30年くらい行っていたんだなあ
TOGO風ハンバーグという不思議な味のソースもあってね
ここのマスター本当に人柄が良くて
俺が新宿クレッシェンドを全国出版したあと、TOGOへ寄ったら
「最近どうしているの?」
「小説で賞取って本を出版したんですよ」
「え? じゃあ本屋で売ってるの?」
「ええ、多分そこの川越駅西口のガストの前の本屋でもあると思いますよ」
マスターはバイトの子に「ねえ、彼の本今買ってきてよ」と言い出し
俺の前に本を出して「ねえ、サインちょうだいよ!」って
そんな粋なマスターでしたね
値段もリーズナブル
多くの人が好んでこのお店を来店しました
実はこれだけ時間経ったからこそ言えるんですけど……
俺の処女作新宿クレッシェンドに出てくる喫茶店のアラチョンって、イメージはここ、TOGOを真似て描写し、マスターの人柄も勝手に使わせてもらいましたw
この事はTOGOのマスターにも言っていないので知らないだろうw
帰り道に行きつけの喫茶店、アラチョンの看板が視界に入る。
無性に腹が減っていた。大好物のハンバーグを思い出すと我慢できなくなった。アラチョンに自然と足が向かう。
店の中へ入ると、閉店一時間前のせいか、四人の客が一組しかいない。そのグループ客も、食後の一服を終え、席を立とうとしていた。
「おっ、いらっしゃい」
マスターが声を掛けてきた。何だかんだいって、このマスターとは結構長い付き合いになる。
「ありがとうございました。ちょっと待っててくれよ」
他の客の会計を済ませ、その客がいなくなると、店内には俺一人だけになった。マスターは食器を手早く片付け、俺のところへニコニコしながら歩いてくる。
「何だよ、座って待ってればいいのに…。相変わらず固い奴だなー。ほら、座って。今日はカウンターの方でいいでしょ?他に客いないしさー」
マスターはカウンターの椅子を引いてくれる。素直に腰を下ろすことにした。それにしても何故、この人はこんなに明るいんだろう。そういう表情を普通に出せるのが、見ていてとても羨ましかった。
「注文はハンバーグでしょ?」
「やっぱり分かりますか……」
「何年、隼人ちゃん、うちに食べに来てると思ってんの。隼人ちゃんもう七年くらい来てくれてるのにハンバーグ以外のもの、頼んだことないじゃん」
「そう言われれば、確かにそうですよね……」
「最初の頃は変わった奴だなーって印象しか持てなかったよ。ただね、ここまで一つのものを頼まれるとさー、料理人冥利に尽きるなってね。いやー、本当、宣言出来るよ」
「何をですか?」
「だって俺のハンバーグをさ、そこまで気に入ってくれる客はいないもん。他の料理だって自信はあるけど、ハンバーグ作る時は、気持ちの込め方がやっぱ違っちゃうよなー。特に隼人ちゃんのやつ作る時は、気合入れまくりー」
マスターの気遣いに自然と笑顔がこぼれる。
「おっと…、ごめんごめん…。腹減ってんだろう?すぐ作るから待ってくれよ」
奥の厨房にマスターの姿が消え、しばらくすると、肉を焼く音といい香りが漂ってくる。
気持ちがリラックス出来ている。あの、人懐っこいマスターのおかげだ。