そんなことがあり、ジャガイモ自体が嫌いになった。それまでカレーは中に入っている野菜も残さずに全部平らげていたのに、それ以来ジャガイモだけは残すようになった。ジャガイモ嫌いはその後ずっと続いた。
ところが、ある時からその嗜好が変わる。それは、東京に出てからのことだった。
友人たちと居酒屋に行った時、誰かがジャガバターを注文した。
最初は『ゲッ、ジャガイモか』と思って無視していたが、友人があまりにおいしそうに食べているのを見て、
「それおいしいんか?」と聞いてみた。
「最高だぜ。ちょっと食べてみなよ」と友人は言った。
「ジャガイモ好きじゃない」と、いったんは断った。
「こんなにおいしいのに。騙されたと思って食べてみろよ」と言う。
そこでぼくは、そのジャガバターに箸を付け、恐る恐る口に運んだ。
一口目、あの給食を思い出して、鼻で息をすることをしなかった。が、食べた後にバターのいい香りが鼻を包む。
二口目、今度は鼻で息をした。サツマイモを食べているようだったが、甘みがないぶんバターの味が引き立ち、それがジャガイモの味と調和している。
「おいしい」
「だろ」
「ジャガバター、こんなにおいしかったんか」
「ジャガバターだけじゃない。ここは肉じゃがもおいしいよ」
「へえ、じゃあおれ、肉じゃが頼もう」
と、ぼくは肉じゃがを注文した。これがまた絶品だった。
思うに、ぼくは元々ジャガイモが嫌いではなかったのだ。たまたま味付けの悪い給食に出会っただけで、それが嫌いだったというだけの話だったわけだ。その証拠に、それ以来ぼくはジャガイモの虜になったのだ。
飲みに行くと必ずジャガバターや肉じゃがを注文するし、マクドナルドやモスバーガーに行くと必ずフライドポテトを注文する。毎日の晩飯の中にも、必ずジャガイモを入れている。
今となっては、ジャガイモのない生活は考えられない。
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