と思ったのは、2020年9月25日の朝方だった。目が覚めてパソコンの前に座り、マウスを握ったのだか、何となくいつもと感覚が違う。カーソルの位置が定まらないのだ。
「寝ぼけているのかな」
と思い、席を立ち顔を洗いに行った。洗面所の前に立つ。
「えっ?」
うまく蛇口が回せない。いや、回せるのは回せるのだが、右手が痺れている。
足は?何とか歩けるが、股関節のところにちょっと違和感がある。
「もしかしたら」
と思い、再びパソコンのマウスを握る。そして、今までの症状を打ち込んで検索してみた。結果は「脳梗塞」だった。
ところが、結果を見ているうちに、だんだん痺れが取れてきた。
「考えすぎ?」
それから数時間、完全に痺れはなくなっていた。
その日は休みで、当初何も予定はなかったのだが、その朝、あるサイトで、食パンの専門店が近郊に出来たという情報を得た。
ということで、「そこに行ってみよう」ということになり、嫁さんといっしょに買いに行くことにした。
準備をすませ、昼前に家を出た。
駐車場で車のドアを開けた時だった。また痺れがぶり返した。運転は出来たので、とりあえず現地まで行った。
さて、現地に着いたはいいが、駐車場が空いてない。散々探したあげく、ようやく空いている場所を見つけた。
相変わらず痺れは取れない。そこで嫁さんにパンを買いに行かせ、ぼくは車の中で寝ていることにした。
30分ほど経ったが、なかなか嫁さんは帰って来ない。
何やってるんだろうと起き上がった時だった。車を駐めている後の建物の看板が目に入った。そこは脳神経外科だった。
「もしかしたら呼ばれているのかも」
と思い、嫁さんが帰ってきてから、その病院で診てもらうことにした。
いろいろ症状を聞き、頭の検査をしたあと、医者が言った。
「脳梗塞ですね。〇〇病院に紹介状を書きますので、今からすぐに行って入院してください」
「えっ、入院しなけれはならんのですか?」
「はい」
「何日くらいですか?」
「それはわかりません」
おいおい、仕事もあるのに、どうしたらいいんだ。そもそも入院などしたことないので、何を用意していいのかわからない。
「心の準備ができてないんで、来週からとかダメですか?」
「後遺症で不自由な生活をしていいんなら、かまいませんよ。とにかく、この病気は早く治療した方がいいんです」
「・・・」
「では、入院ということでいいですね?」
「はい」と、嫁さんが返事した。
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