381系の見学を終えて、私は今、新宮駅前の踏切に立っています。
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西側を見れば、新宮駅。ホームに繋がっているのは左の線路のみで、右は留置線へと繋がっています。
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2本の線路は、信号を跨いだ東側で合流。この先200メートルほどの場所で、大阪から続く架線はぷつりと切れます。
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次なる列車の時間が近づいてきました。
次は「くろしお28号」新大阪行きです。番号が大きいですが、半分が白浜発着のため、新宮発としては5本目になります。
さて、踏切へと戻って、「くろしお28号」となる編成に会いに行きましょう。
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クロ380を先頭に、ゆっくりと引き出されてきます。そう、あの381系が、「くろしお28号」となるのです。
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最後尾が通り過ぎ……
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ポイントを乗り越えたところで停車。
ここで方向転換をして新宮駅に入ります。
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ダッシュで新宮駅に戻り、ホームで待ち構えることに成功!
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パノラマ型グリーン車を最後尾に、編成が入線しました。
ここで、反対側のホームから編成を見てみましょう。
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しんがりのクロ380-3。サロ381からの改造で、他の車両より横長の窓が特徴です。
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「くろしお」の381系にはモハユニットが2組います。
新宮側はモハ380-28+モハ381-28。
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大阪側はモハ380-50+モハ381-50。
「くろしお」には381系が3回に分けて投入されていますが、今回の編成は全て2回目の1978年5月組です。
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先頭はクハ381-504。クハ381-100番台からの改造車です。
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クハ381-504を先頭に。
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485系200番台以来国鉄特急形電車に受け継がれる先頭部。クハ381には貫通型の0番台と非貫通の100番台があり、「くろしお」には100番台が投入されています。
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「スーパーくろしお」時代に増結が中間から先頭(クハ381の前に直接連結)になったため、連結器が密着型に変更されています。
さて、この381系という電車ですが、ところどころ変わっています。
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まず、一目でわかる屋上のすっきり感。本来屋上に置かれるクーラーなどは全て床下にしまわれているため、トレーラー(T車)であっても床下がぎっしり埋まっています。
天井が低いのもわかります。
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高さが低いため、パンタグラフもかなり大形です。
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車内もやや窮屈。途中に座席が2席しかない列もあります。
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その原因は、車両中央を貫くダクトケーブル。空調機器が床下に移されたため、ここで
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2列1組が原則の窓割りも全くあっていません。
様々な所に設計の無理が見られる381系。
その正体は、日本初の『自然振り子式電車』なのです。
振り子式電車とは、カーブで車両を傾けることで、より高速でカーブを走行できるようにした車両です。
カーブを曲がるとき、車体には遠心力が働きます。この遠心力は速度とともに増加し、一定以上になると外に吹っ飛び脱線してしまいます。このため、カーブには制限速度がつけられます。しかし、振り子式電車は、重心をカーブ内側に向けることで遠心力を打ち消し、さらに早いスピードの走行を実現できるのです。
もちろん代償はあります。徹底的に低重心を意識した381系は、機器を全て床下に置くことになりました。不要な空気の流れを消すために機密性も上げられました。また、架線にも通常と違う力がかかるため、地上設備にもそれなりの対策が必要です。
381系は現在、日本における最古の振り子式電車となっています。そして、「くろしお」からは、2015年10月を持って姿を消すことに……
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そんなわけで、381系に乗って、南国の香り漂う新宮から、出発進行!
[紀勢本線・阪和線 78M 特急 くろしお28号 新宮14:27→新大阪18:50]
《新宮 14:27発》
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進行方向海側に腰掛けます。
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実は指定席を確保してあったのですが、自由席の2号車(モハ380-28)に座りました。
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というのも、取れた座席が丁度ダクト列の一列後ろで、前に座席がなかったからです。前に天板がないのはつらいです。
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海はばっちり見えますが、あいにく外は雨です。
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紀勢本線でも古い区間であることから線形も悪く、列車はがたごとと進みます。
381系の振り子も、白浜~新宮ではストップしています。先に書いた通り、架線が振り子用の対策をしていないからです。振り子を停止すると車体のゆれも強制的に停止させられるため、不自然に左右に引きずられる感覚がします。端的に言えば、非振り子区間の乗り心地は悪いです。
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《紀伊勝浦 14:43着》
紀伊勝浦で小休止。
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ホームは大きくカーブしています。
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間もなく、クロ380を先頭にした「くろしお9号」が到着。本来ならば『オーシャンアロー』283系が先頭のはずですが、この日は運用が乱れ、車両変更がおきていました。なにせ、前回の通り『オーシャンアロー』の予備編成まで動かしてますし。
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最後尾がホームに入り終わったところで、「くろしお28号」も発車します。
《紀伊勝浦 14:47発》
発車後に、各車両の様子も見に行きました。
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グリーン車は誰もいません。
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自由席ですら三々五々という有様。
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4号車に設置されたパンダシート。ヘッドレストがパンダを模した可愛い座席です。
「くろしお」へ新形車両・287系を導入した際一度消滅しましたが、1年後に復活。末期まで残りました。
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建設年が下るとともに、線路も山に近づいていきます。
写真は1面1線の太地。
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列車は漁港と漁港の間を抜けていきます。
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国道と併走。このあたりが本州最南端。列車はこのあと大きく右にカーブします。
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紀伊半島の海岸線は岩礁が多数を占めます。
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周参見を出ると海とはお別れ。内陸を走ります。
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《白浜 16:16着》
白浜に到着。温泉地を抱え、紀勢本線の需要はここで差がつきます。
「くろしお」もここから1時間に1本と本数は倍になります。非電化だった頃の急行「きのくに」「しらはま」時代から、白浜発着は設定されてきました。
「くろしお」という名前にしても、南海鉄道(現在の南海電気鉄道)の難波から和歌山港を経由して白浜まで乗り入れていた準急「黒潮」が大元です。設定はなんと戦前の1934年。当時はまだ阪和線が開業していませんでした。南海線内では、電車の後ろに客車をつなげて走っていたそうです。
この伝統は戦争をはさんで長く続き、1985年に白浜発着の「きのくに」が「くろしお」に格上げされたことで消滅しました。
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線路は白浜温泉のある半島部を迂回し、森の中を進みます。
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右手に105系が見えると、車両基地を持つ紀伊田辺に到着です。
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《紀伊田辺 16:33着》
南北に細長い和歌山県のほぼ中心に位置する紀伊田辺。紀勢本線はここから複線となります。
そして、381系の本領発揮です。
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《紀伊田辺 16:35発》
カーブで写真を撮ると、振り子の様子が一目で分かります。左に写る架線柱からも、カメラの向きが水平であることが分かると思います。
381系の傾斜角は5度です。
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南部からは海が差し迫る区間。モーターはMT54(485系や115系のモーター)をより高速性能にしたMT58にされています。車体が軽いアルミ合金製であることから、あっという間に100km/hへ到達。
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海側にカーブする区間では、まるで海に落ちるかのような感覚に襲われます。
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右へ左へとカーブしながら、速度を落とすことなく紀伊路を走り抜ける381系。
381系最大の欠点として、振り子制御が重力任せのため、傾斜の制御を行えないという欠点があります。この点は、左右交互にカーブする場合、重心位置が元に戻らないまま次のカーブに入ってしまうため『右にカーブしているのに左に傾斜している(あるいは逆)』という通常ではありえない状態が生まれます。また、低速でのポイント通過も同様に不自然なゆれがおきます。
このため、381系の運転当初は酔う人が多く、エチケット袋が常備されるほどでした。
とはいえ、私の乗った感想ではあまり変な挙動は感じませんでした。むしろ、非振り子区間の方が(体感的に)気持ち悪かったほどです。
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和歌山県北部は大阪のベッドタウンとして開発が進んでいます。このため、一部の「くろしお」(主に白浜発着)は湯浅、藤浪、箕島にも停車します。急行停車駅の補完とホームライナー的要素を満たしているわけです。
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冷水浦を抜け、列車は海南市へ。
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海南駅は、2面4線をもつ、和歌山県内では数少ない高架駅です。
《和歌山 17:46着》
そうして、和歌山県最後の停車駅、和歌山に到着しました。
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自由席にはどっと人が乗り込みます。あれほどがらがらだった車内は、満員となりました。「くろしお」自由席の利用者のうち、半分は和歌山で降りると言われるほどです。
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阪和線に入っても、「くろしお」はスピードを上げ続けます。というより、頭〇字D並みのトップスピードをみせます。なにせ、阪和線のベースは、戦前にして120km/hオーバー、天王寺~東和歌山(現在の和歌山)45分という記録を作った、スピード狂の会社でしたから。
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工事中の高速をくぐり、和泉山地を抜けます。
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日根野を出ると天王寺までほぼ直線。和歌山~天王寺ノンストップの「くろしお28号」は、これを43分で駆け抜けます。
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天王寺から大阪環状線、そして梅田貨物線へと入り、終着の新大阪へ。
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《新大阪 18:50着》
新宮から4時間23分。「くろしお28号」の長い旅路は、ようやく終わりを見せました。
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381系の仕事は折り返し「くろしお25号」となってまだ続きます。終点・新宮には、23時34分の到着予定です。
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381系を見送ったところで、次回に続きます。
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西側を見れば、新宮駅。ホームに繋がっているのは左の線路のみで、右は留置線へと繋がっています。
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2本の線路は、信号を跨いだ東側で合流。この先200メートルほどの場所で、大阪から続く架線はぷつりと切れます。
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次なる列車の時間が近づいてきました。
次は「くろしお28号」新大阪行きです。番号が大きいですが、半分が白浜発着のため、新宮発としては5本目になります。
さて、踏切へと戻って、「くろしお28号」となる編成に会いに行きましょう。
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クロ380を先頭に、ゆっくりと引き出されてきます。そう、あの381系が、「くろしお28号」となるのです。
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最後尾が通り過ぎ……
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ポイントを乗り越えたところで停車。
ここで方向転換をして新宮駅に入ります。
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ダッシュで新宮駅に戻り、ホームで待ち構えることに成功!
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パノラマ型グリーン車を最後尾に、編成が入線しました。
ここで、反対側のホームから編成を見てみましょう。
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しんがりのクロ380-3。サロ381からの改造で、他の車両より横長の窓が特徴です。
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「くろしお」の381系にはモハユニットが2組います。
新宮側はモハ380-28+モハ381-28。
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大阪側はモハ380-50+モハ381-50。
「くろしお」には381系が3回に分けて投入されていますが、今回の編成は全て2回目の1978年5月組です。
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先頭はクハ381-504。クハ381-100番台からの改造車です。
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クハ381-504を先頭に。
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485系200番台以来国鉄特急形電車に受け継がれる先頭部。クハ381には貫通型の0番台と非貫通の100番台があり、「くろしお」には100番台が投入されています。
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「スーパーくろしお」時代に増結が中間から先頭(クハ381の前に直接連結)になったため、連結器が密着型に変更されています。
さて、この381系という電車ですが、ところどころ変わっています。
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まず、一目でわかる屋上のすっきり感。本来屋上に置かれるクーラーなどは全て床下にしまわれているため、トレーラー(T車)であっても床下がぎっしり埋まっています。
天井が低いのもわかります。
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高さが低いため、パンタグラフもかなり大形です。
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車内もやや窮屈。途中に座席が2席しかない列もあります。
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その原因は、車両中央を貫くダクトケーブル。空調機器が床下に移されたため、ここで
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2列1組が原則の窓割りも全くあっていません。
様々な所に設計の無理が見られる381系。
その正体は、日本初の『自然振り子式電車』なのです。
振り子式電車とは、カーブで車両を傾けることで、より高速でカーブを走行できるようにした車両です。
カーブを曲がるとき、車体には遠心力が働きます。この遠心力は速度とともに増加し、一定以上になると外に吹っ飛び脱線してしまいます。このため、カーブには制限速度がつけられます。しかし、振り子式電車は、重心をカーブ内側に向けることで遠心力を打ち消し、さらに早いスピードの走行を実現できるのです。
もちろん代償はあります。徹底的に低重心を意識した381系は、機器を全て床下に置くことになりました。不要な空気の流れを消すために機密性も上げられました。また、架線にも通常と違う力がかかるため、地上設備にもそれなりの対策が必要です。
381系は現在、日本における最古の振り子式電車となっています。そして、「くろしお」からは、2015年10月を持って姿を消すことに……
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そんなわけで、381系に乗って、南国の香り漂う新宮から、出発進行!
[紀勢本線・阪和線 78M 特急 くろしお28号 新宮14:27→新大阪18:50]
《新宮 14:27発》
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進行方向海側に腰掛けます。
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実は指定席を確保してあったのですが、自由席の2号車(モハ380-28)に座りました。
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というのも、取れた座席が丁度ダクト列の一列後ろで、前に座席がなかったからです。前に天板がないのはつらいです。
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海はばっちり見えますが、あいにく外は雨です。
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紀勢本線でも古い区間であることから線形も悪く、列車はがたごとと進みます。
381系の振り子も、白浜~新宮ではストップしています。先に書いた通り、架線が振り子用の対策をしていないからです。振り子を停止すると車体のゆれも強制的に停止させられるため、不自然に左右に引きずられる感覚がします。端的に言えば、非振り子区間の乗り心地は悪いです。
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《紀伊勝浦 14:43着》
紀伊勝浦で小休止。
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ホームは大きくカーブしています。
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間もなく、クロ380を先頭にした「くろしお9号」が到着。本来ならば『オーシャンアロー』283系が先頭のはずですが、この日は運用が乱れ、車両変更がおきていました。なにせ、前回の通り『オーシャンアロー』の予備編成まで動かしてますし。
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最後尾がホームに入り終わったところで、「くろしお28号」も発車します。
《紀伊勝浦 14:47発》
発車後に、各車両の様子も見に行きました。
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グリーン車は誰もいません。
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自由席ですら三々五々という有様。
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4号車に設置されたパンダシート。ヘッドレストがパンダを模した可愛い座席です。
「くろしお」へ新形車両・287系を導入した際一度消滅しましたが、1年後に復活。末期まで残りました。
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建設年が下るとともに、線路も山に近づいていきます。
写真は1面1線の太地。
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列車は漁港と漁港の間を抜けていきます。
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国道と併走。このあたりが本州最南端。列車はこのあと大きく右にカーブします。
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紀伊半島の海岸線は岩礁が多数を占めます。
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周参見を出ると海とはお別れ。内陸を走ります。
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《白浜 16:16着》
白浜に到着。温泉地を抱え、紀勢本線の需要はここで差がつきます。
「くろしお」もここから1時間に1本と本数は倍になります。非電化だった頃の急行「きのくに」「しらはま」時代から、白浜発着は設定されてきました。
「くろしお」という名前にしても、南海鉄道(現在の南海電気鉄道)の難波から和歌山港を経由して白浜まで乗り入れていた準急「黒潮」が大元です。設定はなんと戦前の1934年。当時はまだ阪和線が開業していませんでした。南海線内では、電車の後ろに客車をつなげて走っていたそうです。
この伝統は戦争をはさんで長く続き、1985年に白浜発着の「きのくに」が「くろしお」に格上げされたことで消滅しました。
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線路は白浜温泉のある半島部を迂回し、森の中を進みます。
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右手に105系が見えると、車両基地を持つ紀伊田辺に到着です。
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《紀伊田辺 16:33着》
南北に細長い和歌山県のほぼ中心に位置する紀伊田辺。紀勢本線はここから複線となります。
そして、381系の本領発揮です。
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《紀伊田辺 16:35発》
カーブで写真を撮ると、振り子の様子が一目で分かります。左に写る架線柱からも、カメラの向きが水平であることが分かると思います。
381系の傾斜角は5度です。
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南部からは海が差し迫る区間。モーターはMT54(485系や115系のモーター)をより高速性能にしたMT58にされています。車体が軽いアルミ合金製であることから、あっという間に100km/hへ到達。
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海側にカーブする区間では、まるで海に落ちるかのような感覚に襲われます。
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右へ左へとカーブしながら、速度を落とすことなく紀伊路を走り抜ける381系。
381系最大の欠点として、振り子制御が重力任せのため、傾斜の制御を行えないという欠点があります。この点は、左右交互にカーブする場合、重心位置が元に戻らないまま次のカーブに入ってしまうため『右にカーブしているのに左に傾斜している(あるいは逆)』という通常ではありえない状態が生まれます。また、低速でのポイント通過も同様に不自然なゆれがおきます。
このため、381系の運転当初は酔う人が多く、エチケット袋が常備されるほどでした。
とはいえ、私の乗った感想ではあまり変な挙動は感じませんでした。むしろ、非振り子区間の方が(体感的に)気持ち悪かったほどです。
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和歌山県北部は大阪のベッドタウンとして開発が進んでいます。このため、一部の「くろしお」(主に白浜発着)は湯浅、藤浪、箕島にも停車します。急行停車駅の補完とホームライナー的要素を満たしているわけです。
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冷水浦を抜け、列車は海南市へ。
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海南駅は、2面4線をもつ、和歌山県内では数少ない高架駅です。
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《和歌山 17:46着》
そうして、和歌山県最後の停車駅、和歌山に到着しました。
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自由席にはどっと人が乗り込みます。あれほどがらがらだった車内は、満員となりました。「くろしお」自由席の利用者のうち、半分は和歌山で降りると言われるほどです。
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阪和線に入っても、「くろしお」はスピードを上げ続けます。というより、頭〇字D並みのトップスピードをみせます。なにせ、阪和線のベースは、戦前にして120km/hオーバー、天王寺~東和歌山(現在の和歌山)45分という記録を作った、スピード狂の会社でしたから。
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工事中の高速をくぐり、和泉山地を抜けます。
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日根野を出ると天王寺までほぼ直線。和歌山~天王寺ノンストップの「くろしお28号」は、これを43分で駆け抜けます。
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天王寺から大阪環状線、そして梅田貨物線へと入り、終着の新大阪へ。
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《新大阪 18:50着》
新宮から4時間23分。「くろしお28号」の長い旅路は、ようやく終わりを見せました。
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381系の仕事は折り返し「くろしお25号」となってまだ続きます。終点・新宮には、23時34分の到着予定です。
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381系を見送ったところで、次回に続きます。
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