しかし、もっと悲しく悔しいのは、近畿理財局で「改竄」に加担させられたノンキャりの官吏達だろう。反抗した人もあったとか。自殺に追い込まれた人もいた。麻生大臣もそれらを認めた。しかし、どうしてそう言うことをしたのか、「それが分かれば苦労はしない」と記者団の質問に答えたが、麻生氏も真実は分っているのに、噓を言っている。霞が関の官僚からは「重い処分だ」「財務省の体質だ」などの声が上がった。「停職3カ月は周りで聞いたこともないぐらいの重い処分。仮に現職だったら、もう公務員ではいられないレベルだ」。内閣府のある幹部は、佐川前理財局長の処分に驚きを隠せない。経済産業省幹部も「セクハラで(減給20%、6カ月という)処分を受けた前事務次官と比べると、めちゃくちゃ厳しい処分だ」とコメントしている。処分の軽重は、懲戒免職が最高だが、停職はそれに継ぐ。減給だと3番目だ。
政界上層部が不正を重ねると、社会も腐敗する。日本を代表するような有名企業の検査データの改竄が相次いだ。神戸製高ナは「虚偽表示容疑」で家宅捜査が入った。これに対して、立憲民主党の枝野幸男代表は、5日の党会合で、神戸製刻鰍ノよる品質検査データ改ざん問題で東京地検特捜部が強制捜査に着手したことに触れ、財務省の決裁文書改竄問題に関して一人も起訴しなかった検察当局を批判した。枝野氏は「誰も起訴されないと言うとんでもない話だ。あれだけ大規模な改竄があり、社会的に大きな影響を与えておいて(起訴せず)、一方で民間企業のデータ改竄について、強制捜査に入った」と指摘。「意図的、組織的な改竄で国会の審議権を侵害してきた。そのけじめもつけられないのは民主主義の危機だ」とも語っている。
競争の厳しい「自動車産業」では、日産もスバルも「技能実習不正」や、「検査不正」が摘発され、責任者の交代が報じられている。こうした風潮を、相変わらぬ「官尊民卑」だと批判する評論家もいる。しかし、民間でも「日大アメフト部事件」で明らかになったように、指導し・命じた側が責任追及を逃れ、実行者に責任を転嫁する悪弊がないとは言えない。大戦が終わって、戦犯摘発が進んだ際、B,C級戦犯として、GHQにより横浜やマニラなど世界49カ所の軍事法廷で裁かれた。被告人は、約5700人で約1000人が死刑判決を受けたとされる。指揮官の命令に逆らえず、捕虜を刺殺したりしたのだ。当時の上官の命令は、天皇の命令だと思えと言うのだった。朝日の「天声人語」では、こう書いている。
「ベートーベンの交響曲第9番は暮れの風物詩であり、多くの日本人が愛するクラシック音楽だ。それが日本で初めて演奏されたのが、100年前の今日である。第1次大戦時に、徳島県の収容所にいたドイツ兵捕虜たちが奏で、歌った。「演奏は大成功でした……なんとも言えない安らぎ、慰めが流れ出て来るのです」。捕虜の一人が家族への手紙に書いている。その場所、板東俘虜収容所には、中国・青島での戦いで捕らわれた約1千人が送られていた。長引く収容生活の慰安にと楽団が組まれたらしい。驚くのは、文化活動の広い裾野があったことだ。捕虜によるドイツ史などの講演会があり、ドイツ語の新聞や本も発行されていた。彼らの自主性を重んじる収容所長の考えが反映したと言われるが、それだけではない。
「日本が文明国だと示すため、国際法を守らねばと当時の軍は考えていました。捕虜を罪人のように扱ってはいけないと」。収容所の歴史を伝える鳴門市ドイツ館の前館長、川上三郎さんは言う。捕虜の人間性を尊重する精神が、かつて日本軍にもあった。太平洋戦争では「生きて虜囚の辱めを受けず」の教えが日本軍兵士を縛りつけた。自軍の兵の命を粗末にすることと、捕虜の命を軽んじることは繋がっている。無残な玉砕があり、捕虜への虐待がなされた。 100年前に第九を齎した精神がもしも、その後の日本に根付いていたら……。多くの命が失われずにすんだのではと、思えてならない。(2018年06月01日 朝刊)
今、日本は梅雨時になり、空を灰色の雲が覆っている。この梅雨は、一月もすれば、去っていく。政界を始め、日本を覆う社会の梅雨空は、何時になったら晴れるのだろうか。
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