文庫本を買ったので、『プリンセス・トヨトミ』を読み返している。
舞台となった空堀商店街の風景が、何故か以前読んだ時よりもするすると頭に入って来る。
と言うより、風景を思い浮かべる事が出来る。
なぜだろうと考えて、思いいたった。
先日、空堀商店街を松屋町筋側からアプローチしたばかりだからだ。
それまで、何度か空堀商店街をうろついた事はあったけれど、いずれも谷町筋側から歩き始めたのだった。
万城目学が描写しているように、空堀商店街は「坂を抱いた」商店街だ。
大阪市街は大阪城を東に戴いて、碁盤の目に広がる。
碁盤の目都市と言えば京都が代表だけど、大阪も碁盤だ。
南北を走る大通りを「筋」と言い、空堀商店街は松屋町筋から谷町筋までの横の線を結ぶ。
この間にちょうど坂がある。
空堀商店街は、松屋町筋から見れば「上り坂を抱いた」商店街であり、谷町筋から見れば「下り坂を抱いた」商店街である。
『プリンセス・トヨトミ』の登場シーンでは「上り坂を抱いた」商店街として描写されている。
私は空堀商店街を「下り坂を抱いた商店街」として認識していた。
この差異は、結構、小説を読む上で曲者だった。
特に、茶子が蜂須賀に飛び蹴りを入れるシーン。
茶子が坂の上から、蜂須賀に飛びかかるのだ。
ドラマチックなシーンである筈なのに、うまく絵が浮かんで来なかった。
逆に、谷町筋側から商店街に入って財団法人OJOを訪ねる、鳥居と旭の行動はすんなりと絵になって理解できた。
今は、茶子が坂道を蹴って飛ぶシーンが、はっきりと絵になって思い浮かべる事が出来る。
うーん、『プリンセス・トヨトミ』読んでると空堀を探検に行きたくなる。
ジミヘンのぶらり下町食べ歩き1 (空堀商店街)