ジャズという音楽は楽譜に書かれた事が全てではなく、特にコンボ演奏においては、原曲のメロディーを崩して(フェイクして)、更にその曲のコード進行を用いて全く別のライン(要するにアドリブ)を演奏する訳ですから、ジャズコンボにおいては、楽譜はただ単なる素材でしかない、とも言えます。しかし、ジャズでも編成が大きくなって、きっちりアレンジを施してアンサンブルでの聞かせどころが増えて来ると、楽譜にも細かくアーティキュレーション指示を書く必要があります。ビッグバンドでは、アドリブよりもアンサンブルの比重の方が大きいのが一般的なので、演奏のニュアンスの付け方は異なりますが、クラシック音楽と同じように、楽譜に書かれた演奏指示を忠実に守る必要があります。このようなラージジャズアンサンブルの場合、演奏者がいわゆる「ジャズ語(ジャズのニュアスやアーティキュレーション、リズムのノリ方等)」を理解している奏者であれば、事細かく演奏指示を書く必要はないのですが(むしろ書かない方が楽譜の見た目がスッキリして読みやすい)、「ジャズ語」を知らない奏者に対しては、「ジャズ語」を理解しやすいように事細かく演奏指示を書いてあげる必要があります。しかしながら、楽譜で指示できる演奏指示記号にも限界があり、なかなか「ジャズ語」として聞こえてこないことの方が多いのも事実。
楽譜はとても便利なものですが、伝統芸能の世界では師匠から弟子へ芸を伝授していくのと同じように、音楽も本来は直接人から人へ伝えていくべきものなのかもしれません。
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